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サテュロスの祭典

神話から着想を得た創作小説を掲載します。

兎神伝〜紅兎二部〜(22)

2022-02-02 00:22:00 | 兎神伝〜紅兎〜追想編
兎神伝

紅兎〜追想編〜

(22)恋敵(4)

「慕う気持ち…抱かれたい気持ちは、大事にね…
朱理先生、前に、俺に言ったことを、そのまんま、言われてらあ。」
少し離れた布団の中…
狸寝入りの太郎は、クスクス笑った。
『本当は、抱きたかったのでごじゃろう。』
『へん!俺を、町の変態親父達と一緒にするんじゃねえや!』
愛が皮剥を受けてから、二年近く過ぎた頃…
その日も、太郎は悪ガキ達率いて護衛を務め、愛を社(やしろ)に送り届けると…
『よう、兄弟!風呂沸いてるぞ!』
竜也が気さくに声をかけてきた。
『ねえ、久し振りに一緒に入って行こうよ。』
雪絵も、太郎の腕を組んで言った。
『あ…でも、あの…俺達、これから…』
慌てる太郎に…
『なーに、今更照れてんのよ。あんたの身体(からだ)は、穂柱に生え始めた毛の数まで知ってる中じゃないのさ。さあ、さっさと脱いだ脱いだ。』
雪絵が、半ば強引に太郎の着物を脱がせにかかった。
『兄貴、せっかくだから、ご相伴にあずかりやしょうぜ。』
『そーだよ、兄貴。おいらも入りてえや。』
『今日が初めてってわけでもねえんだしさ。』
子分の悪ガキ達も、口々に言う。
確かに…
兎神子(とみこ)達と風呂に入るのは、初めてではなかった。
愛が皮剥される前、皆で真っ黒になって遊んだ後、よく参籠所の風呂に入って、更にひと暴れしたものである。
その日も、あの頃と同じつもりになると、太郎は言われるままに、皆と着物を脱ぎ捨てて参籠所の風呂に入った。
最初、特に変わった事は何もなかった。
兎神子(とみこ)達と悪ガキ達は、いつも通り、湯船の中で泳ぎまわったり、お湯を掛け合ったり、外の延長で暴れ回っていた。
『よう!少しは、毛深くなったか?』
横から、太郎の股座を覗く政樹が言えば…
『兄弟!また、デカくなったじゃないか。これなら、もう十分、女抱けるだろう。』
竜也も、横から太郎の股座を覗きながら言った。
それも、かつて皆で遊び、皆で風呂に入った時と、何ら変わらなかった。
しかし…
その時、政樹と竜也が頷きあったのを合図に、一人、また一人と、示し合わせたように、参籠所を去って行った。
そして…
気づけば、さっきまで、秀行と亜美に丹念に身体(からだ)を洗って貰ったり、参道と御祭神の状態を診てもらっていた愛が一人だけ残されていた。
『あれ?みんな、何処に行っちまったのかな?』
太郎が首を傾げて言うと…
『太郎君、身体(からだ)、洗ってあげようか?』
愛が、側に寄ってきて言った。
『あ…うん、ありがとう…』
太郎は、狐につままれたような顔をして、言われるままに、愛に身体(からだ)を洗って貰った。
これも、別に今に始まった事ではない。前から、こうして、悪ガキ仲間の女の子達や兎神子(とみこ)達とよく洗いっこしていた。
『ポヤ?太郎君、また、お毛毛が生えたポニョ~。』
『あら、本当。太郎君も、段々と大人になってきたのねー。』
太郎の穂柱の周りに、最初に毛が生え始めたのを見つけたのも、茜と雪絵であった。
『さあ!今日も、何本生えたか、数えるポニョ~。』
『一本、二本、三本…』
『お…おい、おい、やめてくれよ!なあ、おい!おいってばー!』
周囲で仲間達がゲラゲラ笑う中、暴れる太郎を押さえつけ、新たに生えた毛の数を、毎日数え上げたのも、茜と雪絵であった。
ここでは、男の子も女の子も関係ない。
太郎率いる悪ガキ達の男の子も女の子も、黒兎も白兎も、みんな一緒に素っ裸になって、洗い合い、ふざけ合い、遊び回ったのである。
それを、恥ずかしいと思う者は一人もなかった。
ただ…
今日は、愛と二人きりと言う状況に、太郎は落ち着かないものを感じていた。
『ねえ、太郎君も洗って。』
『あ…うん、良いよ…』
太郎は、言われるままに、愛の背中を洗ってやった。
真っ白い肌であった。
柔らかな肌であった。
綺麗な身体(からだ)だと思った。
それだけに、こんな綺麗なものが、行く先々で玩具されてきた事を思うと、涙が溢れそうになった。
すると…
『太郎君、前も洗ってくれる?』
『えっ?』
驚く間も無く、愛は、太郎の方を向いた。
太郎は、思わず生唾を飲み込んだ。
こんなのも、別に今日が初めてと言うわけではなかった。
『ほーら、なーに照れてんのさ。さっきは、愛ちゃんにちゃんと洗って貰ったんでしょう。今度は、太郎君がちゃーんと洗ってあげなさい。』
『そうポニョ、そうポニョ。大好きな愛ちゃんの大事なところ、綺麗、綺麗に洗うポニョ~。』
『そうそう…
優~しく、優~しく、舐めるように洗ってあげるのよ。』
『何なら、本当に舐めてあげても、良いポニョ~。大好きな愛ちゃんの、大事なところ、ペロペロ舐めても、良いポニョ~。』
これまた、容赦ない雪絵と茜に冷やかされ、周りを囲んでゲラゲラ笑う仲間達の前で、後ろも前も、散々洗い合った仲であった。
それに…
この二年近くに至っては、風呂に入るまでもなく、嫌と言うほど見せつけられてきた、愛の身体(からだ)である。
それでも、こうして、面と向かって見せられると…
何て綺麗なんだろう…
出会った頃、真っ平だった胸が、また少し膨らみを帯びて、丸み始めている。
もうすぐ、可愛い逆さ碗の形になるだろう。
少年と大差なかった身体(からだ)全体の線も、ほっそりとした曲線を帯びて、少しずつ少女から女の形を取り出している。
股間には、まだ、若草萌えるどころか、発芽の兆しもない。
その代わり、神門(みと)のワレメの縦線が長くなり、仄かだった薄紅色が色濃さを増していた。
太郎は、愛の身体(からだ)に目を向けたり背けたりを、忙しく繰り返しながら、どうにも落ち着かないものを感じた。
『ねえ、こっち見て。』
太郎がまた、愛の身体から背けた目を天井に向けると、愛はクスクス笑いながら言った。
『ほら、ちゃんとこっち見てくれないと、洗えないよ。』
太郎は、愛にもう一度言われると、憑かれたようにまっすぐ目を向けた。
一瞬、愛の股間に向け、何か弾かれるようなものを感じて背けた視線は、愛の胸に向けられると、逆に金縛りにあったように釘付けにされた。
触りたい…
太郎は、次第に穂柱の先端がむずむずと疼き出すのと同時に、強い衝動に駆られた。
そして、思わず伸ばしてかける手を、慌てて引っ込めた。
同じ事は、前にもあった。
愛が皮剥を受けて一年が過ぎ…
あの日も、悪ガキ達と領内(かなめのうち)の好き者達から護衛して、学舎(まなびのいえ)から連れ帰って来た時。
一緒に風呂に入って身体(からだ)を洗ってやろうとした時であった。
気づけば、愛の胸が少し膨らみ始めていた。
まだ、乳房と呼べるようなものではなく、三角形の小山のような形を帯びていた。
太郎は、それまで自分と対して変わらなかった、愛の胸の形が変化してるのを知ると、自身の身体(からだ)の変調にも気づいた。
穂柱の先端が、急にむずむずと疼き出して、落ち着かない気持ちになったのだ。
同時に、訳もわからず触りたくなった衝動を抑えきれず、思わず膨らみ出した愛の胸に手を伸ばした。
掌に、コリコリとした感触が走ると同時に、鷲掴む…
次の刹那…
『痛い!』
愛が思わず声を上げて、顔を背けた。
『えっ!』
太郎は、驚きつつも、鷲掴む手に更に力を入れる。
『痛い!痛い!痛い!』
愛が、更に声を上げると…
『もう!太郎君、だめじゃない!膨らみ始めた女の子の胸はね、痼があって、強く触られると痛いのよ!』
『だーめだポニョ~。好きな女の子の胸は、優しく、優しく触るポニョ~。』
側で見ていた雪絵と茜に叱られ、漸く自分のせいだと我に返り…
『愛ちゃん、ごめん!』
太郎は、慌てて手を引っ込めた。
以来…
二度と触れてはならぬと心に誓い、見ればまた触れたくなると思い、常に目を背ける事を心がけていた、美しく愛らしい膨らみ…
しかし、前よりも更に膨らみを帯びたそれを見ると、穂柱の先端が疼き出し、鼓動が激しく高鳴りだす。
触りたい…
思い切り触って、握りしめて…
膨らみの突起を口に含み…
そして…
太郎は、二度としてはならぬと言う心の誓いと、激しく駆られる衝動が、胸の中で激しくぶつかり合い、伸ばしかけた手をぶるぶると震わせ出した。
すると…
『触って…』
愛は言うなり、太郎の未だ震え続ける手をとり、自身の胸へと導いた。
『愛ちゃん…』
戸惑う太郎に…
『揉んでみて…』
愛はニッコリと笑いかけて言った。
『痛く…ない?』
太郎は、躊躇しつつも、最早歯止めの効かなくなった衝動のままに、愛の胸の上で指先に力を込める。
『うん。』
愛は大きく頷いて見せた。
柔らかい…
太郎は、愛の胸に触れる指先を動かしながら、新鮮な驚きと感動を覚えた。
何て柔らかいんだろう…
あの日、あんなに固かった膨らみが、ふわふわととても柔らかくなり、心地良い感触になっていた。
太郎は、頭の中が次第に暖かく浮かび上がるような感覚に陥りつつ、むずむずするような、穂柱先端の疼きが更に強まり、今にも悶え狂いそうになり始めた。
愛は、そんな太郎に、またニッコリ笑いかけると…
『いつも、守ってくれて、ありがとう。』
太郎の肩に腕を回し、そっと唇を重ねてきた。
そして…
『愛ちゃん、何を…』
太郎は、不意に我に返り、愛と重ねた唇を離した。
愛が、太郎と肩を抱く手の片方を、そっと背中の上をさするように移動させ、やがて股間へと伸ばされたからである。
『太郎君、しよう。』
愛は今にも破裂しそうな、太郎の穂柱を揉み扱きながら、うっとりするような眼差しを向けて言った。
『しようって…』
『私、十二歳になるまでに、どうしても赤ちゃんを産まないといけないの…でないと…』
『愛ちゃん…』
『叶うものなら、好きな人の赤ちゃんを産みたい…どれだけ多くの人に抱かれても、産まれて来る子は、好きな人との間にできた子であって欲しい…兎神子(とみこ)達みんなの夢なの…
だから…』
言いながら、愛はまた、唇を重ねた。
そして、金縛りにあったように身を硬くする太郎の唇から頸筋、更に胸へと唇を動かし、チロチロ舐めながら舌先を這わせていった。
やがて…
その舌先が下腹部を通り過ぎたかと思うと…
それまで揉み扱いていた、太郎の穂柱を咥えて舐め始めた。
『アッ!』
太郎は、思わず声を上げて腰を浮かせた。
愛の小さな舌先が、更にチロチロと、穂柱先端の裏側をくすぐってゆく。
太郎は、臍の下あたりから、何かこみ上げてくるものを感じ始めた。
いつだったか…
眠っている間にも、これと同じ感覚があった。
夢の中で、産まれたままの姿をした愛が、こちらを向いてにこやかに笑いかける夢を見た瞬間であった。
尿意?
しかし、それは、穂柱に力を込めても抑え切る事も我慢する事も出来ず、更に勝手にこみ上げてゆき…
目覚めた時、ヌルヌルしたモノで、褌が濡れている事に気づき狼狽した。
あの時と似た感覚が蘇ってくる。
そして…
いよいよ、臍のしたからこみ上げて来る熱いモノが、穂柱中程まできた時…
『やめろ!』
太郎は、叫ぶなり愛を突き放した。
同時に、愛の口腔内に放たれる筈だった白穂が、空を目掛けて放たれた。
『太郎君…』
『愛ちゃん、俺…俺…』
『太郎君、私の事、好きじゃないの?嫌いなの?』
愛は、忽ち涙目になって言うと…
『ああ、嫌いだよ!大っ嫌いだよ!そんな…そんな…俺、こんな事されたくて、守ってきたんじゃねえや!町のクソ親父達と同じにされたくて、守ってきたんじゃねえや!愛ちゃんに、ずっと、いつまでも、前のまんまでいて欲しくて守ってきたんだ!
それを…』
『でも、太郎君、私、誰かの赤ちゃん産まなくちゃいけないの!私、産むなら、好きな人の子供を産みたい!優しくしてくれる人の子供を産みたい!』
『その通りだよ、愛ちゃん…
俺だって、愛ちゃんには、愛ちゃんが一番好きだと思う人の子供を産んで欲しい。
でも、それは、俺じゃねえ。親社(おやしろ)様だろう?
俺、知ってるよ。愛ちゃんは、親社(おやしろ)様が好きなんだってな。だったら…』
『太郎君…』
『俺、嫌えだよ…誰かの子を産まなきゃならねえからって…本当に惚れた男以外の子供産もうとする愛ちゃん何て、大嫌ぇだよ!』
太郎は、そう叫ぶなり、顔を突っ伏し、声を上げて泣き出す愛を背中に、参籠所を飛び出して行った。
『どうして、愛ちゃんを抱かなかったでごじゃるか?』
境内の片隅で、一人蹲って泣きじゃくる太郎を見つけると、朱理は慰めるように、肩をさすりながら尋ねた。
『愛ちゃんが好きなんでごじゃろう?愛ちゃんに気持ちを伝えたくて、私のところで修行を積んだのでごじゃろう。』
『フン!あんな奴、あんな奴、もう好きじゃねえや!大嫌いだ!
他に惚れてる男がいるくせに…本当に子供をつくりてえ男がいるくせに…俺なんかと…』
『関係ないでは、ごじゃらんか。愛ちゃんに、他に好きな人がいる事と、太郎君が愛ちゃんを好きなのは別物でごじゃろう。
それに、太郎君の事も本当に好きなのでごじゃるよ。太郎君の子供を産みたい気持ちも、本当でごじゃる。』
『でも、一番産みたいのは、親社(おやしろ)様の子供…何だろう?
だったら…』
『太郎君は、本当に愛ちゃんが好きなんでごじゃるな。本当に好きだから、愛ちゃんには、本当に好きな人の子供を産ませてあげる為に、守ってきたのでごじゃるな。』
朱理は、尚も泣きじゃくる太郎の肩を優しく抱いてやりながら言った。
『でも、私は良いと思うでごじゃるよ。愛ちゃんに、一番好きな人の子供を産ませてあげたい気持ちとは別に、愛ちゃんを好きだと言う気持ち、好きだから抱きたいと言う気持ちも大事にすれば良いではごじゃらんか。
次は、抱いてあげるでごじゃるよ。』
『朱理先生…』
『可哀想に…今頃、愛ちゃん、どれだけ傷ついているでごじゃるかな?泣いているでごじゃるかな?
傷つけた分だけ、優しくしてあげるでごじゃるよ。』
しかし…
結局、最後まで抱く事はなかった。
本当は抱きたかった…
何度も抱こうと思った…
今だって、抱きたいと思っている。
愛が、今腕の中に抱いている子が、自分の子供だったらとも思っている。
しかし、抱かなかった。
『何故、抱かなかったのだろう…何故…何故…』
何度も自問自答を繰り返す後ろで…
「アン!アン!アン!アーーーーン!」
月影に照らす、仄暗い部屋の中…
朱理の甘えるような声が、いつ果てるともなく、こだまし続けた。


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