私のウィーンの森紀行・・・Ⅳ
ベートーベンのデスマスク
仕方ないので、次回いつかはこの馬車にのる事にして、今回は引き返した・・・その途中に今度は、本物のベートーヴェンの住んでいた家があって、確かここは、ベートーヴェンの名曲“月光”が作曲された場所、そんなあやふやに知識だけはあったので絶対に見学はしたかった。なんと早い閉館で4時までだという・・・時間ぎりぎりで入場したが、ここは日本と違うところで、入ったらあとはゆっくりできるというものではない、入館したのが、3時50分頃、10分すぎて4時になると、係りで受付をした男性が来て、早くしろ、といわんばかりの態度をする。ここは4時までなんだ・・・と。自分達はもう帰るから早くしてほしいと・・・本当に何度もかなりせかされた、せめてベートーヴェンハウスの外観写真くらい撮りたかったのだが、急がされたのであまりいい写真はとれなかった(内部は絶対写真禁止)
全くこの辺のこだわりが日本とはちがう、日本ならば、少しでもお客さんをいれようとするが、こちらは、まず自分達の生活をかえるなって感じで、自分の予定を大切にする。だから、お客のために4時ぎりぎりに入場させるのは、それだけでもいやだったわけだ。閉店の時間は絶対かえない。
仕方がない、もうちょっと見学したかったが、今度はもう少し早く来るしかない。国がそういう姿勢だから本当にこの辺は逆らえない。
ベートーベンハウスの前で・・・後の人が管理人・・・
それから、歩いていると、何軒か、オーストリアに来たらぜひ行こうと決めていた、ホイリゲ(日本でいう居酒屋みたいなお店で、軒先に杉の玉のかたまりをぶら下げていたのですぐわかった)がでてきた。思い切ってはいって見る事に・・・ホイリゲって確か、ウィーンの森のワイン農家と直結していて、できたてのワインを飲ませてくれるところ・・・という知識はあった。
ホイリゲの入り口で・・・
なんかよそ者がきたって感じで、皆の視線を浴びたが、すぐ勝手にどうぞ・・・って感じで無視された。セルフで適当におつまみを買い、適当に美味しいワインを頼む。一つはソーダ割りにしてみた。できたてとれたてのワインかどうかはわからないが(まだ春先だったので)かなり美味しく感じた・・・ここでもまだ私は緊張していたので、この時のワインの味はじっくりと味わえる余裕はなかった・・・
でも多分雰囲気のせいかもしれないが、夏はお庭の葡萄の木の下に、沢山の観光客が集まって、ワイワイガヤガヤ皆でワインを楽しむのだろう・・・そんなイメージがわいてくるいい感じのお店であった。
季節物の赤ワイン・・・
何組かの、地元の人間らしき人達がいたが、結構皆、この時期だからか騒ぐこともなくトランプをしたりして、ゆっくり時を楽しんでいた。大の大人が居酒屋でトランプをしながらずっといる・・・そんなことも日本では考えられないが、こちらでは当たり前のように皆が時をゆっくり楽しんでいる感じがした。
今は春だからか、本当に静かなホイリゲであったが、夏の夜などは、ヴィイオリンなどの生演奏を楽しませてくれるホイリゲもあるという。その雰囲気も一度味わいたいが、この春のほんのりした季節でゆっくり静かな雰囲気を味わうのもなかなかいいものだと思った。
あれこれ注文している私・・・
とにかく、何もかも初めてで頼るのは地図だけ・・・ガイドもいないし、ガイドブックを買ってオーストリアのことを研究したわけでもない。
どうにかなるなんていつも思っていたが、この時は本当に自分がしっかりしていなくてはだめだと感じた。しかし、人間切羽詰まるとどうにかクリアできるものだ。ナビがいて、頼れる人間がそばにいると、世界的なサンレモラリーにも大きな顔して出場出来るもののだが、誰も頼るものもなくなると、海外でのたかが市内の運転でさえも、冷や汗タラタラだ。強いものについていると、自分も強い気になるが、いざ一人になると人間は弱い。これではいけないと本当に反省した。自分が強くなっていかないとだめなのだ。自分で道を切り開いて行かないと・・・強いものについているから自分も強いと錯覚するならば、それは完全な間違いだ。自分だけでできた時にはじめて強いと言えるのだ。今回のことは大した例ではないがいい教訓になった。フランスもイタリアも海外のラリーでさえも頼れる人間がいれば、自分もその気になり強い気がしてしまう。しかし、何も知らない娘とか妻との間では、自分がやらなければならない。本当に自分がやらなければいけないのだ。
ホイリゲの中庭で・・・
人生も同じだ。強いものにくっついて自分が強いと錯覚するようではまだまだ自分は偽者である。その強いものがいなくなったらもう自分もガタガタと崩れるのみである。 私はこれから残された人生においても、もっと本当に自分がしっかりしなくてはいけないと実感し、自分の足で地を踏んで一歩一歩歩いて人生かみしめて歩いていこうと本当に実感した。
帰りはこの町の景色にもやっと慣れ、昨日とはうってかわって迷うことなく、どうにか無事帰路についた。なにもかも知らないことばかりだったが、それでも今、思い出すと楽しいものだ。旅の恥は掻き捨てなんていうが、本当にそれはいい諺である。まさにその通りだから・・・
私の中で、この歳だが、経験値が少し上がった初のウィーン紀行であった気がする。これもきっと天から与えられたいい経験かな・・・全く感謝のみである。
エロイカ通り
この後、OMV社と取引をもってウィーン市に私は何度も車で来る事になるが、その時こそ、慣れている風を少しは味わえた。でも本当に慣れてしまうと、ふりなどはできず、ありのままに言ったり語ったりするものだ。できもしないくせに見栄ばかりはっていた自分がばからしくなる。
本当にこの時のウィーンの森紀行の経験が私にとって、どんなにプラスになったか・・・改めて感謝いたします・・・
あの”田園”に通じる入り口・・・