ありとキリギリス

ありとキリギリスの両面性を持った内面を見つめて交流できれば

「九雀物語」9話

2014-05-17 23:25:19 | 日記
 創作童話「九雀物語」第9話

一瞬大きな光が周りを包み、年老いた雀の姿がなくなりそこから何か立ち上がりました。
それは、今まで見たことの無い、美しい気品のある輝きをした大き羽根をもった鳥でした。
鷲や鷹よりも大きいいけれど、その眼差しは優しく、小雀たちを見つめていました。

「カイ」や「トキ」 「キキ」そして「ダン」と一緒の6羽の小雀は目の前に起こったことがわからず立ちすくんでいました。

その美しい大きな鳥は、さっきまでいじめられていた年老いた雀が変身したのですから、小雀たちの驚きは、言いようの無いものでした。

その時、その大きな美しい鳥が声を発しました。きれいな声は遠くまで響くような
澄んだ声です。



小雀たちに向って
 「おどろいただろう!」
 「私は、お前たちが見ていた通り、老いた雀が仮の姿で、これが本当の姿なのだ」

 「だが、この姿は誰もが見られるものではなく(こころの眼)でしか見れないのだ」
 「人間も、(こころ)の中で、私を見ることが出来て、神様の使いとして「鳳凰」と呼んでいる」

 「お前たちは、生まれた雀の世界を嫌がり、大事な親たちの心配を忘れて好きな生き方をしようとしているが、それが本当に良いことなのかな」

目の前におこった不思議な出来事に恐ろしさと同時に、自分たちの行動を知って
いることに驚き、他の小雀が固まってしまっているなかで、
少し賢明さをもった「トキ」が少し落ち着きを取り戻して話します。

 トキ「あなたは、本当にさっきの老いた雀なのですか?」

鳳凰が応えます
「そうだ! 自分のことだけを考えているうちは、先程の雀でしか見れない
が、他のことを思いやれる(こころ)になれば、こんな美しい姿を見ることが出来るのだ」
トキ「なぜ、私たちは、今の本当の姿を見ることが出来ているんですか?」

鳳凰が応えます
  「心の眼は人間でしか見ることはできない。
   お前たち、鳥や獣は、そんな(こころ)を持ってはいないが、少しでも他のことを思いやれることが出来れば、その瞬間が人間と同じような(こころ)をもったことになるんだ」
鳳凰がさらに語ります。
  「生まれたからには、必ず終わりがあるのだ。
   雀の世界に生まれて、与えられた命を全うすることが大切だよ」

トキが問います
  「でも、俺たちはなんで雀なんですか?
   初めから(孔雀)のように美しい鳥ではないんですか?」
トキは他の小雀にもの同調を得ようと振り向きます。

そんなやり取りを恐る恐る見ていた「カイ」や「キキ」たちも「トキ」に向ってうなづきます。

静かに優しい眼差しの「鳳凰」は九羽の小雀たちに微笑むように語り掛けます。

  「そうか!お前たちは(雀)であることが不足なんだな!」
  「では、弱った姿の私を護ろうとしてくれたお返しに、特別の姿と能力をあげよう! どうしてほしい?」
トキがカイたちに問います。
カイ「じゃあ!(孔雀)になりたいよ」
キキ「私も(孔雀)がいいな! みんなどうだい?」

他の小雀たちの、こわばっていた顔が和らいで同調の返事をします。

         第9話終了


「九雀物語」8話

2014-05-17 23:22:38 | 日記
    創作童話「九雀物語」九羽の小雀の冒険物語・第8話

女の小雀「キキ」が「トキ」に飛びかかろうとしている小雀たちの前に割って入りました。
相手の小雀たちも、女の小雀とわかっていたので一瞬意味がわからないように間が空きましたが、
小雀のリーダーが、気をとりなおして
 「訳もわからず邪魔をするんじゃない!」
と大きな声で威嚇し、他の小雀と一緒に攻撃しようと構えました。

「トキ」と「カイ」もまさか「キキ」がそんな行動をとると思っていなかったので戸惑いながらも、「キキ」を護ろうと身構えたとき、
「キキ」が フー!大きく息を吸った瞬間、自分たち雀たちが出す声ではない、遠くに響き渡るような鳴き声を発しました。攻撃しようとしていた小雀たちは、自分たちの怖さにおびえて鳴き声を出したのかと思ってかまわず攻撃を始めました。

その時でした、上空からすごい勢いで大きな黒いものが飛んできて、攻撃しようとしている小雀たちの前に立ちはだかりました。


驚いて、小雀たちは後ずさりして大きな黒い姿をしているものを見て更に恐ろしくなりました。
目の前の黒い大きなものは、今まで見たことのない大きさのカラスで、自分たちを鋭い眼光で睨みつけているのです。そして大きなカラスは、女の小雀に向かって
 「キキ!どうしたんだ」
「キキ」は、目の前に現れた大きなカラスに向かって、今さっきまでのことを話しました。
大きなカラスは「ライ」でした。
様子を見ていた小雀たちは後退りして攻撃の気持ちを無くしてしまったようです。

事情を聴いたカラスの「ライ」は更に大きな翼を広げておびえ出した小雀に向って低く響く声で、
 「俺はカラスのライだ!」「この子がどこに居ても一声鳴けば何処へでも飛んでくるんだ!」
 「お前たちのしていることは小雀だといっても許されないことだ」
 「6羽も一緒にいるんだったら、気持ちを変えたら何でも出来るだろ。 なんだったら、この三羽の連中と一緒にやってみたらどうだ!」
 「今見たように、この女の小雀に特別な方法で俺を呼び出せる力をやってあるから、いつでも困ったら呼んでくれ!」
 「俺も、小さい頃は、いじめられてばかりだったけれど、少しづつ力をつけて仲間を集めて少しは他のものから怖がられるようになったんだ、だけど俺も、俺の仲間も、自分がされたように 弱いものをいじめたりはしないんだ。
  だからお前たちも九羽で頑張ってみるんだな!」

そんな「ライ」の威圧に萎縮していた6羽の小雀も、おそるおそる
ながら、互いの顔をみあわせて「ライ」の言うことにうなずいて
従う様子を見せました。

そんな状態を確かめた「ライ」は
 「俺の仕事は終わったから、待っている仲間のところに戻るぜ」
そう言ったと思ったら「ライ」は大きな羽音を残して一瞬のうちに
遠くへ飛んでいきました。

「トキ」と「カイ」それに「キキ」も今までの緊張を緩めて「ライ」
の提案に同調して6羽の小雀たちに和らいだ顔を見せていました。

6羽のリーダーのような小雀が
 「俺はダンて言うんだ、ほかのやつの名前はゆっくり覚えてくれ」
 「びっくりしたっていうもんじゃないよ! あんな怖いのが護ってくれるなんて!」「じゃあ!これから言われたように9羽でやってみようぜ!」

そんな気持ちを互いに分かり合っていたとき、それまで6羽の小雀
に攻撃されて弱りきって傍にうずくままっていたと思われた老いた
雀がスッと身を起こしたとき、周りが大きな光に包まれ何か輝くよ
うなものが現れました。
                8話終了。


「九雀物語」7話

2014-05-17 23:21:21 | 日記
  「九雀物語」第7話

女の小雀を仲間にした3羽の群れは、少し気持ちが大きくなって、まだ行ったことのない森を目指して飛び立ちました。

少し飛び続けていたとき、「トキ」が他の2羽に呼びかけながら、飛ぶ速度を弱めました。
カイがトキに問いかけます。
 「どうしたんだい?トキ」
トキが応えます。
 「ほら!あの小川のそばを見てみなよ!なにか変だよ!」

言われて「カイ」と「キキ」が、その方向を見てみると、何羽かの雀が騒いでるように見えました。
それは、6羽の小雀が老いた雀を取り囲んで何かしている様子でした。
「カイ」は「トキ」に
 「知らない雀の連中だから、放っておこうよ!」
「トキ」は言います。
 「ちょっと待ってくれ!」

仕方なしに「カイ」と「キキ」は「トキ」の言うように近くの樹の枝に停まって様子を見てみることにしました。

それは、年の老いた雀の持っている果物のようなものを6羽の小雀が取り上げようとして、攻めている様子です。
取られまいと必死になっている老いた雀に、6羽の小雀の集団は、四方から嘴でつついて隙を見つけようとしています。
そして、老いた雀の抵抗が弱ったのか1羽の小雀がその果物のようなもを奪おうとしました。

その時、一緒に様子を見ていた「トキ」がフワット枝から飛び出して、6羽の小雀のいる所に行こうとしました。
あわてて、「カイ」が止めようとしましたが間に合わず、仕方なしに、その後を追うように2羽も続きました。
「トキ」は迷うことなく、6羽の小雀が攻めている老いた雀の傍に舞い降りて、周りの小雀をにらみました。そして「カイ」と「キキ」も並びました。

急に飛び出してきた物に驚いた様子の6羽の小雀でしたが、それが同じような小雀とわかって、そのリーダーのような1羽の小雀が少し前に出て、「トキ」に凄みを利かせて言います。
 「なんだ!お前たち! 邪魔をするんじゃない!」

「トキ」はひるむことなく言い返します。
 「なんで、こんな老いたものをいじめるんだ!それに、食べ物までで盗ろうとしているんじゃないか!」
6羽の小雀のリーダーは応えます
 「知らないだろうが、こいつが持っている果物は10年に一度しか成らない特別の果物なんだ!
  そんな貴重なものを、こんな年寄りに食わせることはないんだよ、だから邪魔をするんじゃない!」

「トキ」はそんな威圧に怖がりもせず更に前に出て応えます。
 「そんな貴重なものでも、お前たちならまた見つけることが出来るじゃないか!
  この年寄りならもうめぐり合えないかもしれないだろう!奪うのはやめとけよ!」

6羽の小雀のリーダーは、そんな意見を聞くそぶりも見せず、更に大きな声で「トキ」に向かって
 「邪魔をするんなら、お前を先に始末してやるぞ! 俺たちはみんな親のない
小雀だけで生きてきた仲間なんだ!」

リーダーの声に同調したかのように、他の5羽の小雀も「トキ」に襲いかかろうと身構えてきました。
今にもそんな争いが起ころうとしたとき、それまで「カイ」と一緒に傍にいた「キキ」がスッと、「トキ」の前に出てきました。

        第7話終了
  

「九雀物語」6話

2014-05-17 23:19:21 | 日記
「九雀物語」第6話

大きなカラスのリーダー「ライ」から思いもかけない事を言われた2羽の小雀
「カイ」と「トキ」は少し驚きながら、了解したことを後悔しながらも、しかたなく、女の小雀を自分たちの仲間として連れて行くことになりました。

カラスの集団からはなれて、3羽になった小雀たちはしばらく黙ったまま近くの森まで飛んでいきました。
しばらくして大きなイチョウの樹があったので枝の上で休むことになりました。

すこしぎこちない雰囲気になっていた3羽の空気に「トキ」が言葉を選んで一緒についてきた女の小雀に話しかけました。

「びっくりしたな! 急にカラスのライがお前のことを言い出すから、わけもわからず、うなずいてしまったんだ」

女の小雀がちょっと、むっとしながら答えます。
「なんだよ! いやなら断ればよかったんじゃないの!」
「カラスのライはこんな小さなわたしでも他のカラスと同じように可愛がって大事にしてくれてたんだから」

トキはあわてて言い直します。
 「いいや! びっくりしただけだよ! 俺たちも黙って親のところを出てきて2羽で訳もわからず飛び回ってるだけだから、戸惑ってるんだよ」
 「名前はなんていうんだい!」

女の小雀は半分めんどくさそうに答えます。
「キキだよ!」  

カイとトキは顔を見合わせてうなずいて、お互いを納得させた様子をみせて
キキに話しかけました。

 「キキか! 俺はトキ!、こいつはカイだよ! 別々の仲間と一緒だったんだけど親に黙って、俺たちだけで飛び出したんだ。
  カラスのライに言われて仲間になってもらったけど、俺たちも、これからどうしていいか分からないんだよ」

そんな少し頼りのなさそうな2羽の小雀の話を聞いた(キキ)は見えない片方
の目の奥が笑ったような顔になって話しました。
 「あたしだってカラスのライに大事にしてもらってたし、やっとカラスの仲間にも仲良くしてもらえるようになってきたのに、急にライがあんなことを言い出すとはビックリだよ。
  だけどライは、あたしのことを思っていってくれたと思うよ。」

トキが話します。
 「そうか、ライの仲間の邪魔者になってたのかと思ったけど、キキがそう思っているなら、俺たちと一緒にいることにするかい、少し頼りないけどさ!」

すこしづつ打ち解けた話ができたので、キキの顔も和らぎだしました。

3羽になった、カイ、トキ、キキの小雀仲間はチョット背伸びしたようにまだ
行ったことのない森を目指して飛び出しました。

        第6話終了

「九雀物語」5話

2014-05-17 23:16:33 | 日記
「九雀物語」第5話   

大きな体のカラス「ライ」は子雀のカイやトキのことを懲らしめる様子もなく
今まで通ってきた生きざまを少しづつ話してくれました。
そして、ふと思い出したように、

 「そうだ!俺の仲間のカラスが食べ物を採っている下の所を見てみろ!」
 「俺の仲間の近くに小さな雀がいるだろ」

そう言われたカイとトキが下を見てみると、確かに5、6羽のカラスの近くに
一羽の小さな雀がカラスの仲間のように食べ物を採っているのが見えました。

 「ちょっと待ってろよ」

と言ったカラスのライが食べ物を採っている仲間のカラスのいる方に向かって少し高い声を出すと、カラスたちは一斉に、ライの方に振り向いたのです。
そして、小さな雀だけを自分のいるところに呼びました。

カイとタケは、カラスのライが自分のカラスの仲間のように小さな雀を呼び寄せたので、少し驚いてしまいました。

カラスのライは、雀が傍に来てからカイとトキに向かって

 「お前たち、少し驚いただろ! 実はこいつは女の子雀なんだ」
 「それに、片方の目が見えないんだ」
 「いつだったか、俺が森の近くを飛んでいるとき、雀の連中が、同じ雀を
  いじめているのが見えたので、おかしなことをするなと思って近くで
  見ていたんだ。 いじめているのも、いじめられてるのも子雀だったな」
 「どうやら、こいつの目のことで仲間はずれにしていたんだな」
 「他の鳥のことなんか、どうでもよかったけど、少し腹が立って、いじめている子雀
を、俺が追っ払ってやったんだ」
 「それから、こいつは雀の仲間のところに戻らないで、俺の行くところに付いてくる 
ようになって、俺の仲間もカラスの連中と一緒に扱ってくれるようになったんだ」
「だけど、いつまでも俺たちの仲間ではいられないから、 
どうだ!お前たちが、一緒に連れて行かないか」

思いもかけないことを言われたカイとトキは、驚いて顔を見合わせましたが
カラスのライの威圧におされて、了解のうなずきをしてしまいました。




        第5話終了