Sandy Cowgirl

植田昌宏。在阪奄美人。座右の銘は、「死ぬまで生きる。」

インストール

2017-07-30 16:27:04 | 書評


最低だ。 最低だ。 最低だ。 最低だ。
親も先生もクラスメートも、社会も、みんな、それと、僕も。
努力したら報われるだとか、そんなのウソだろ。
努力したのに失敗した人が何も語らないだけだ。
強い奴が勝つんじゃなくて、勝った奴が強いんだ、って誰だかが言っていた。
親心だから言っている、だとか、そんなの言いたいだけだろ。
世界は、本当に正しい世界は、誰より一番僕が知っている、はず。

その男は、10代の頃、そんなことを考えてた、ということを、思い出した夢をみて、焦って目を覚まし、
いつものように電車にのって、会社へ向かった、結局、そんないつもの日常に過ぎなかった。








綿矢りさ さんの インストール をご紹介します。
いわずとしれた、綿矢りさ さんのデビュー作で、17歳のときに書かれた小説です。
一言で表すと、軽いエロ話だ。
もしかしたら、女子高生がエロいことに首をつっこむ女子高生を主人公にした話を書けば、それだけで成功する、
と、計算していたのかもしれません。
たしかに、女子高生、というだけで、それはブランドなわけで、利用しない手はない、のでしょうが、
綿矢りさ さんっぽさ、言ってみれば、イタい女子の話っていうのが、この時点で確立されていたのだと思います。

承認欲求が盛って盛ってしょうがない女子高生なのに、
実際には、彼氏もいないし処女だし、受験勉強も中途半端で、家族も全然構ってくれない。
世間では女子高生ってだけでちやほやされるのに、
実際にはゴミ捨て場でゴロゴロして、風でスカートがめくれてそのたびにパンツがみえても、誰も構ってくれない。
人一倍プライドだけ高く、他と同じ土俵では戦えないから、私は斜め上の行動をして、私って凄くない?
と、勝手に自己満足しようとする。

最後は・・・まぁ、綿矢りさ さんらしい、オチ。
おあとがよろしいようで、ってな感じです。

10代の特有の憂鬱というものをうまく表しているように思います。
劣等感と、歪んだ優越感、そして、挫折、顔真っ赤な屈辱。
他人をみてイタいとか勝手に思ってバカにしているその張本人が一番、イタいっていう。


というわけで、調子に乗って、あとで痛い目にあう、という漫画チックな王道のかるーい作品です。
ぜひ、読んでみてくださいね。

ラッシュライフ

2017-07-17 19:00:02 | 書評


A男は、十三駅で神戸線に乗って梅田へ向かおうとしていた。しかし、すんでのところで乗り遅れてしまい、忌々しく感じながら、京都線のホームで梅田行きの電車を待つことになる。
B女は、十三駅を出発した梅田行きの神戸線急行電車に乗っていた。電車が中津駅に近づこうとするころ、近くにいた女性が突然、車内で倒れた。一刻を争う事態のように思った彼女は、緊急ボタンを押し、電車は、中津駅で緊急停止をした。倒れた女性は、中津駅で担架で運ばれていった。命に別状はないらしい。
C男は、梅田駅の神戸線のホームにいた。大事な面接を前に、履歴書を見直していると、突如、それが風で飛ばされた。慌てて追ったC男は、ホームから転落し、運が悪いことに、ネクタイが線路に挟まって、立ち上がれない。ホームには、間もなく、十三駅から梅田駅へ電車が入線する、というアナウンスが流れている。このままでは轢かれると思っていたところ、電車は中津駅で急病人発生のため、緊急停車しているという、連絡が聞こえた。
D女は、B女と梅田駅で待ち合わせをしていたが、少し、遅れる、というLINEを受け取った。仕方なく、待ち合わせしていた紀伊国屋の店頭から、中に入り、新刊を適当にながめていると、外が騒がしくなった。店頭でナイフをもった猿があばれている、という。少し酔っぱらっているようだ。
A男が乗った京都線梅田行きの電車は、途中、先に出たはずの神戸線を中津駅で追い抜いて、終点に到着した。その間、時間があったので、読みかけの「ナイフを持った酔っぱらいの猿の捕まえ方」を読み終えることができた。彼は、そこで、続編がでていたことを思い出し、紀伊国屋に向かった。


伊坂幸太郎さんの ラッシュライフ を紹介します。
一枚の壮大な騙し絵に登場する、5人の主人公達が、バラバラに行動しながらも、少しずつ重なり、それぞれの人生を過ごす話です。
1 傲慢な画商と若手の女性画家の話
2 泥棒と友人の話
3 新興宗教の信者と先輩と教祖様の話
4 女性カウンセラーとサッカー選手の話
5 リストラサラリーマンと老犬の話
です。

まぁ、ホントにテンデバラバラなのですが、何がどう絡むのか、読んでいても、想像つかないので面白いです。

映画でいえば、パルプフィクションとか、ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズのような話です。

あとは、他の伊坂作品に登場する話や人物が、こっそり登場していたりするのも面白みの1つです。
なお、この作品は、東京芸術大学の映像研究科生たちにより、映像化されているそうです。

ぜひ、読んでみてください。

2017-07-01 16:30:07 | 書評


その男は、眠るときにいつも考える。
いや、誰でも考えているだろう、そして、考えがとぎれたときも知らず,眠りにつくのだろう。
彼はいつも、ライフルを構えている、眠る前の、彼の頭の中の話だ。
狙いをつける。
相手は、よくわからない、ただ無防備だ、そこは戦場のような気もするし、そうでないような気もする。
スコープは使わない。
日光を反射して相手に気づかれてはならないから。
体の中心を狙う方が確実だが、一発でしとめるなら、こめかみを狙うほかない。
理由は?
ない。
ただ、撃つ。
その男は、引き金を引く。
やったか?当たったのか?
そうして、その男はいつのまに眠りにつく。



中村 文則 さんの 銃 を紹介します。

言わずとしれた芥川賞作家で、なおかつ、国際的にも評価の高い作家さんです。
一人称なのに、ドライな作風というのは、得てして翻訳向きです、
彼の作品が海外に紹介されるのは自然だと思います。

本作ですが、彼のデビュー作です。
もちろん、文学作品ですので、こういう行動が推奨されるとかそういう話ではありません。
ただ、それのもつ、美しさっていうものをはっきり書いているのはおもしろいと思います。

ギターもそうだと思うけど

でも、もっと、銃は

美しい。

美しいギターをもてば、最高のアンプにつなげて、思う存分の大音量でならしたい。
じゃ、日本刀は? 銃は?

人間の体に密着して、いかにして行動に移しやすいか、
洗練されたフォルムの美しさたるや、他に類をみない、

あ、ギターの話ですよ。

でも、日本刀や銃はどうなんか。


すこし、残酷な感じの小説です。
とりわけ、女性への対処が、なんとも酷い。

でも、考えてみてると面白い、



あなたは、あの状況で、引き金をひきますか?