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半年間に及んだコロナ闘病…酸素吸入が生涯必要な体に

2021-04-02 13:30:00 | 日記

下記の記事は日刊ゲンダイデジタルからの借用(コピー)です


新型コロナに感染し、肺機能低下と右足が不自由になる後遺症を抱えている槌田直己さん(仮名=57)。今回は約6カ月にわたった治療とリハビリについて語ってもらう。【編集・構成/日刊ゲンダイ】

 ◇  ◇  ◇   

 正直、治療に関しては、昨年8月に救急車で運ばれた後、しばらく意識がありませんでしたので、覚えている範囲でお伝えします。ただ夢か現実かわからないところもあり誤っているかもしれませんので、予めことわらせていただきます。

 一言で言って、新型コロナ固有の治療とはないと思っています。一般的な肺炎や肺機能低下に対する治療と同じで、使う薬剤に新型コロナに効くと思われる薬を使うといった差があるだけだと推測しています。まだ新型コロナに対する特効薬は開発されていないので、アビガンやらレムデシビルやら既存の効きそうな薬を患者に投与している状況ではないでしょうか。

私が治療で一番感じたのは、新型コロナ治療には「私、失敗しないので」といったスーパードクターは存在せず、若い医師や看護師達の地道な医療行為しかなかったということです。確かに治療方針の組み立てやエクモ(ECMO)装着や取り外しには経験や高度な技術が必要かと思うのですが、麻酔のためかさっぱり記憶がありません。救急のため私自身は説明も聞いていません。治療も外科的処置より内科的処置が中心です。記憶には前にも述べた幻覚によると思われる治療の記憶とおそらく実際の治療の記憶があるのですが、今回は実際のものと思われる記憶を書いていきます。

 記憶に残っている治療はやたら点滴を打たれたことと、肺に溜まった痰を取り除くことです。

■10本の点滴針を刺されてスパゲティ症候群に

 点滴は本当に多く、多い時は10本くらいの針が同時に刺されてました。点滴の針も打つ場所が空いてなくて点滴針を打つのに苦労したことも多かったようです。点滴はトータルで100本くらい打たれた気がします。身体じゅうにチューブやセンサーが取り付けられた重症患者のことを『スパゲティ症候群』と呼ぶのだそうですが、端から見るとかわいそうに見えるかもしれませんが、医師や看護師からすれば、それでも助けたいと思うからやるのです。私もスパゲティ症候群でしたが、かわいそうだなんて思われたくありません。今生きてるんです。自分の足で歩けるようになったんです。スパゲティでも何でも生きられる方がいいでしょ?

■ペットボトル1本分の痰が肺からあふれ出た

 ただ、肺に溜まった痰を取り除くのは苦しい治療でした。肺には人工呼吸器の影響か、口から肺の奥深くまで常時チューブが挿入されています。そのチューブの中に更に細いチューブを通して肺の底まで持って行き、肺の底に溜まった痰を吸い出すのを延々と続けました。機械の力で吸引力はあるのですが、自分の力でも思いっきり息を吐き出して痰を出すのです。これが痛いのやら苦しいのやらで大変でした。

 私はなかなか痰が出なかったようで、チューブも細くて吸引力が弱くなりがちでしたから看護師さんも苦労していました。ある夜中のことだったと思います。肺の底に溜まった痰の表面がカサブタのように固まってしまい痰が全く出てこなくなっていました。肺の底まで注入したチューブを動かしていたらカサブタが割れて一気にペットボトル1本分くらいの痰が出てきました。この時、看護師さんが「槌田さん、大変!ゲロの中でおぼれてるみたい!」といって痰を集める器からゲロのような痰があふれ出たのを覚えています。結局私の肺は多くの部分で本来の機能、空気から酸素を体内に取り込む機能を失ってしまい、一生酸素吸入が必要な体になってしまいました。

治療した病院には4カ月くらいいたのですが、病院内で全く面識のない看護師さんから「槌田さん、元気になりましたね」と声をかけられたことがあります。そばにいた看護師さんに聞くと「槌田さんの治療には多くの人が係わったから、槌田さんを知っている看護師は結構多いんですよ」と言われました。治療中は全く気づきませんでしたけど、多くの方に助けていただいたのだなと実感しました。

 治療が進んでくると集中治療室(ICU)から一般病棟に移ります。一般病棟に移ると治療も続きますがリハビリを重視した生活になります。ICUから一般病棟に移って体力がどう変わっていったかをお話ししたいと思います。

■箸が重くて持てない

「箸より重い物を持たない」という言葉がありますが、ICUで意識が戻った頃は本当に箸が重くて持てないくらい体力がありませんでした。仰向けに寝たまま首をひねることもできない状態です。やがてベッドからは上体を起こせるようなりました。でも長くは起き上がっていられません。上半身を起こした状態では頭がクラクラして30分も我慢できず、すぐ横になりました。また足の力も弱まって立ち上がることも困難です。ですから最初のリハビリは立ち上がる事や上半身を起こして座っていられる状態を目指すところから始まったと思います。

 まず足の筋トレです。今でも右足は高さ10センチの階段も上れませんが、一般病棟にいた頃は高さ5センチまで足を持ち上げることができませんでした。わずか2~3センチの段差も上れなかったのです。このため手すりにつかまりながら中腰になって立ち上がるような足の筋肉を強化する様々な筋トレをずっと行いました。

 その他のリハビリはベッドサイドで主に足の筋トレやマッサージ、病棟の廊下で歩く練習。最初は5メートル歩けたとか、10メートル歩けたとかから始まり、そのうち50メートル、80メートルと増えていきました。

■「いずれ回復する」という期待を裏切られ…

 一般病棟ではリハビリの目的は足の筋力や歩行の強化だと思っていたのですが、リハビリ病院に転院になり、それが誤りであったと気づくのです。リハビリの一番重要な目的は肺機能の強化だったのです。

リハビリ病院では新型コロナの治療が終了した後、これからの生活に必要な体力とスキルを身につけるのが目的です。私はリハビリ病院への転院の意味を全く理解していませんでした。なぜなら未だ酸素吸入が不可欠で、酸素吸入が必要なくなるように今後も治療が続つづくものと思っていたからです。ICUでも一般病棟でも「一生酸素吸入が必要になる」とは誰にも言われませんでした。

 私はそのうち酸素吸入の必要はなくなると勝手に思い込んでいました。ところがリハビリ病院に転院するとは治療が終わったということ、つまり酸素吸入は一生必要なのです。私の期待を見事に裏切ってくれたのはリハビリ病院で最初に説明をしてくれた医師でした。

 リハビリ病院に転院した際、初日に医師から現状と今後の方針について説明がありました。そこで言われたのは24時間酸素吸入が一生避けられないこと、歩くのも不自由でどこに行くのも車いすになる可能性のあること、この病院では治すことが目的ではなくて、この体でどうやって生きていくかを学習することだということなどでした。目の前真っ暗です。さすがに凹みました。

車いすを使ったらどうかと勧められたが…
 翌日からリハビリが始まったのですがモチベーション下がりまくりです。更に追い打ちをかけたのは、医師が退院後出かける時は電動車いすを使ったらどうかとか言い出したのです。問題外です。既に杖なしで数百メートルは歩けるのです。電動車いすは使いたくありませんでした。リハビリは1コマ40~60分を一日2~3コマ行い基本的に暇です。毎日不抜けて本ばかり読んでました。それも毒にも薬にもならない読みやすい小説。時間の浪費をしてました。

 ただ、人間とは不思議な生き物です。自分の体が一生治らないとわかるとそれに対応して生きていこうと思えるようになるんですね。だんだんふてくされた状態から復活してきました。

 リハビリを指導する理学療法士は前の病院の理学療法士と違い、足の筋力強化のことにはほとんど触れず専ら肺の機能改善に関することを言ってきました。肺の機能そのものは改善できないとしても肺を取り囲む肋骨についた筋肉をほぐせば肺自体が膨らみやすくなって吸い込める空気の量が増える。吸い込める空気の量が増えれば当然摂取できる酸素の量が増えるとの観点から胸のストレッチを十分行うように指導してきたのです。

私も暇な毎日を過ごしていたのでストレッチの量を増やしていきました。これしか良くなる道がないと思ったからです。ストレッチを朝起きた直後、午前中、昼食後、夕食後の一日4回、1回1時間で毎日4時間くらい行うようになりました。その後、筋トレや歩行訓練も増やしてきました。

 こうやってリハビリの量が増えてくると前の病院のリハビリ担当者から引き継がれた体力測定結果が目に見えて改善していきました。当然血液検査などの数値も変わってきます。

■病気が良くなることは一生ない

 私は今「慢性閉塞性肺疾患」という病名で介護保険の適用を受けているのですが、基本的にこの病気は良くなることがありません。リハビリを続けても肺機能の改善は見られなかったのですが、肺活量の増加には貢献しました。昨年の12月22日時点で1340ミリリットルだった肺活量は今年の2月1日には1660ミリリットルと320ミリリットル増えました。

 通常、血液中の酸素量を判断する基準は経皮的動脈血酸素飽和度 (SpO2)を用います。SpO2は指先に光センサーをつけてこの光を分析して数値を出します。指先の血管内の血液を外部から測定するので測定器をつけた指の種類や左右、体調で数値が異なることがあり誤差もあります。動脈血酸素分圧(PaO2)という指標は肺における血液酸素化能力の指標ですが、動脈血を採血し分析するので誤差がなく、障害者認定の際に用いられる指標です。

 私は肺活量が増えた結果12月22日には49.9だったPaO2血液ガス分析の数値が改善されたと思われるのです。PaO2値49.9とは第一級身体障害者の要件を満たす数値です。こういった悪い数値が改善されてきたのです。

 リハビリを続けた4カ月は地味な作業の連続です。リハビリでも色々エピソードがあるのですが、今回は「コロナで重症化したらどうなるの?」という趣旨なので簡単にまとめさせていただきました。医療関係者の皆さん、どうもありがとうございました。

 新型コロナは簡単に感染し、場合によってはとんでもない状況になります。読んで下さった皆さんも、ワクチン接種に懸念もあるでしょうが、発病して私のようにならないためにワクチンは打っていただきたいと思います。私のつたない文章で、少しでもその気になっていただけたら幸いです。

(文・槌田直己)



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