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骨がもろくなって骨折しやすくなる骨粗しょう症。閉経期以降の女性に多い病気だが、男性も決して油断はできない。生活習慣病が原因で発症する場合もあるからだ。男女を問わず、早めの予防を心がけよう。
骨粗しょう症は骨の量が減少したり、質が劣化したりすることで、骨の強度が低下して骨折しやすくなる病気。北里大学北里研究所病院(東京・港)整形外科部長の金子博徳氏によれば「骨の強度には骨量と骨質が7対3の割合で影響する」という。
骨は新陳代謝を繰り返している。破骨(はこつ)細胞が古い骨を壊す「骨吸収」と、骨芽(こつが)細胞が新しい骨を作る「骨形成」のバランスがとれていると、丈夫な骨が保たれる。しかし、加齢や生活習慣などでそのバランスが崩れると、骨が過剰に溶けて量が減るなどして、もろくなってしまう。
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日本の骨粗しょう症の推定患者数は約1280万人。女性が約8割を占める。女性が多いのは閉経により、骨を壊す破骨細胞の働きを抑える女性ホルモンのエストロゲンの分泌が急激に低下することが大きな要因となっている。
帝京大学ちば総合医療センター(千葉県市原市)内分泌代謝内科の井上大輔教授は「男性患者は約300万人で、少ないように思われるが、その約半数は何らかの病気に起因する続発性骨粗しょう症であることに注意したい」と指摘する。
高血圧や糖尿病、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性腎臓病などの生活習慣病がある人は、骨量の指標となる骨密度がある程度維持できていても、骨質の劣化の影響で骨折するリスクが高まる。
骨粗しょう症で骨がもろくなると、転倒などをきっかけに骨が折れやすくなる。背中や脚・腕の付け根、手首が特に骨折しやすい部位だ。中でも背骨は、自分の体重で徐々に押しつぶされていき、骨折に気づかないこともある。「背中や腰の痛み、2~3センチメートルの身長低下といった兆候があれば、『いつのまにか骨折』となっている可能性があるので、整形外科を受診して相談を」(金子部長)
女性は40歳、男性は60歳以上になったら、自治体の骨粗しょう症検診や人間ドックなどで定期的に骨密度検査を受けることが望ましい。「生活習慣病がある人は、骨粗しょう症の早期発見のために、一度は骨の精密検査を受けておくとよい」(井上教授)
検査で骨粗しょう症と診断されたり、そのリスクがあると判断されたりした場合は、骨の状態に合わせた薬物治療が必要になる。そうなる前に予防対策を心がけたい。
予防対策の基本は日光浴、運動、食事が3本柱になる。日光浴は骨に必要なカルシウムの吸収を助けるビタミンDの体内合成を活性化する。骨に重力をかける運動を習慣化することも大切だ。
新型コロナウイルスの感染拡大で外出を自粛する生活が続いているが、日中に運動を兼ねて20分程度の散歩をする、ベランダや庭で日光を浴びるなど、できる範囲で工夫したい。金子部長は筋肉も強化できるスクワット運動を勧める。「足腰に不安があれば、テーブルに手をついて、イスから立ち上がる動作を繰り返してもいい」
食事はカルシウムだけでなく、カルシウムの吸収や骨への沈着を高めるビタミンDやビタミンK、筋肉や骨の材料になるたんぱく質などもバランス良くとる。「魚や肉、乳製品、大豆製品、野菜をまんべんなく食べることを意識してほしい」(金子部長)
井上教授はコロナ禍で糖尿病が悪化する中高年が増えていることを懸念する。「生活習慣病を悪化させないことが、丈夫な骨を維持することにもつながる」と呼びかける。
(ライター 田村知子)
かかと落としで骨粗しょう症防ぐ カルシウムも補給を
骨がもろくなり、骨折しやすくなる骨粗しょう症。閉経期以降の女性がかかりやすく、日本の患者数は男女合わせて約1280万人とも見込まれる。早期に自分の骨の状態を知り、適切な予防・治療を心がけよう。
骨は硬いので、ずっと変化しないという印象を持っている人が多いだろう。実際は、破骨細胞と骨芽細胞という2つの細胞が、絶えず古い骨を壊して(骨吸収)新しい骨を作る(骨形成)という新陳代謝を繰り返している。
加齢や生活習慣などによって、骨吸収と骨形成のバランスが崩れる。骨吸収が骨形成を上回ると骨粗しょう症になる。骨がスカスカになり、骨量が減って折れやすくなる。
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発症すると手首や背中、腰、腕や脚の付け根などで骨折のリスクが高まる。中でも脚の付け根を骨折すると、寝たきりになる可能性があり、認知症を招くことも。長生き時代に最後まで自立し、元気に過ごすためには、早期の骨粗しょう症対策が不可欠だ。
伊奈病院(埼玉県伊奈町)整形外科部長の石橋英明氏によると、発症するかどうかは「0~20歳の成長期にどれだけ骨が増えたかと、50代以降にどれだけ骨を減らさないかで決まる」。
骨量のピークは20歳ころ。20~40歳ころまで骨量はほぼ変わらないが、その後は男女とも徐々に減っていく。特に「女性は閉経を迎えて、骨を強くする働きがある女性ホルモン『エストロゲン』の分泌が低下する50歳前後から、急激に骨量が減るケースが多い」(石橋氏)。対策を講じないと、60代以降の女性は骨粗しょう症になりやすくなる。
「まずは検診で骨密度を測定し、自分の骨の状態を知って」と石橋氏は話す。40~70歳の女性を対象に、40歳、45歳、50歳…と5年おきに骨粗しょう症検診を実施する自治体が増えている。骨密度が正常値でない場合は、医療機関で精密検査を受ける。
骨粗しょう症の予防は、運動や食事など生活習慣の改善が基本になる。山王メディカルセンター(東京・港)女性医療センター長の太田博明氏がすすめる運動は「かかと落とし」。両足をそろえてまっすぐ立ち、かかとを上げる。つま先立ちの姿勢から、かかとをストンと落とす。2秒に1回のペースで50回繰り返す。
姿勢が不安定になる場合は、いすの背などにつかまるとよい。大切なのは、ストンと一気に着地するときの骨への衝撃だ。「体重の3倍の負荷が骨芽細胞を活性化し、骨を丈夫にする」(太田氏)
食事では骨の主成分であるカルシウムとタンパク質を積極的にとろう。牛乳やチーズ、ヨーグルトなどの乳製品はカルシウムが豊富で吸収率が高く、タンパク質も含む、骨強化のための必須食品だ。
「カルシウムの吸収を助けるビタミンDも、骨粗しょう症予防には欠かせない」(太田氏)。サケやウナギ、イワシの丸干し、干しエビなどに多く含まれるので、意識してとるとよい。ビタミンDは日に当たると体内で合成されるので、適度な日光浴も有効だ。
骨粗しょう症または予備群と診断されたら、薬物療法を始める。太田氏は「骨量を増やして骨を若返らせ、骨折をしっかり防ぐには、薬による治療が不可欠」と話す。骨粗しょう症の薬は近年、飛躍的に進化しているという。骨に必要な栄養素を補う薬、骨を壊す破骨細胞の働きを弱める薬、新しい骨を作る骨芽細胞の働きを高める薬などが続々と開発されている。
骨粗しょう症は実は、高齢女性だけの病気ではない。太田氏は「糖尿病などの生活習慣病の影響で骨質が劣化し、骨粗しょう症となる中高年男性が増えている」と指摘する。老若男女問わず、日ごろから骨の強化を心がけよう。
(ライター 松田亜希子)
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