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「高級外車でタワマンに送り…」起業志望者を地獄に落とすマルチ勧誘の手口

2021-04-28 15:30:00 | 日記

下記の記事はプレジデントオンラインからの借用(コピー)です

成功のため朝昼晩晩晩のSUHWに励む
悪徳なマルチ商法はどのような勧誘をしているのか。ライターの雨宮純氏は「彼らは“事業計画書”と称して勧誘の具体的な目標を立てており、1日5人以上勧誘することもある。勧誘手法は常にアップデートされており、効果的な誘い文句を構成員同士で共有している」という――。
「事業計画」はただの勧誘目標
「紹介者と一緒に作成した『事業計画』は、想像していたものとは全く違っていました。」
「事業計画」と聞いて一般的に思い浮かぶのはこれから手掛けるビジネスの内容や売り上げ見込み、マーケティング方法といったものだろう。ところが本連載で取り上げてきた悪徳商法集団、「環境」に所属していたCさん(旧帝大出身、システムエンジニア)が作成を指示された「事業計画」は、単なる勧誘目標だった。
彼らはこのような言い換えや承認手法を駆使して会員を勧誘に向かわせ、考え抜かれた勧誘方法で外部者を取り込んでいく。本稿では元会員への取材を通してその実態に迫る。
30人・20人・10人の目標を立てることに
「環境」では勧誘行為を「現場」、勧誘目標を「事業計画」と呼んでいる。夜に3件の勧誘をこなせば「昨夜は3件現場をやった」となる。「環境」に入るとすぐに「事業計画」を紹介者と作るように言われ、勧誘目標を立てさせられるようだ。
典型的な目標は「1カ月に30人の新しい友人を作り、20人と1対1で会い、10人を師匠に紹介する。そして○カ月後に○人を入会させる」というもの。このような言い換えを行うことで、構成員は何か重要なことを行っているかのような感覚になるという。
またCさんは、「環境」では勧誘行為を起業した時の仲間集めであるとセミナーで教え込まれていて、マルチ商法に類似したビジネスの勧誘を行っている意識はなかったという。
筆者が元会員から入手したセミナーの台本には、起業準備の最重要事項としてチームビルディング、つまり勧誘が挙げられている。
セミナーの台本。具体的な勧誘方法や、上納金15万円の調達方法などが書かれている
幹部たちは新入会員に対し「『環境』も当初の50人から始まり現在は1万人になっている。これはどの企業よりも速く、われわれはその仕組みが詰まったプラチナチケットを手にしている。この価値が分かる人に『環境』を広めて仲間を増やそう」と、自分たちが特別な集団であることや勧誘行為が「有意義な知恵を広める」行為であると強調してモチベーション付けを図っていた。
ちなみに、「環境」ではこの「1万人」という数がよく使われるが、筆者が取材した際に聞かれた実数は最盛期で6000~7000人程度であった。おそらく会員に特別感を与えるために、数字を“盛って”いたのだろう。
ハードな活動は「スーパーウルトラハードワーク」、略して「SUHW」
「環境」では「現場」「事業計画」といった言い換えのほか、独特の用語を内部で共有することでやる気を出させていたという。
「勧誘のための合コン手法を学ぶ『合コンは人生だと思え講座』というセミナーがありました。これは合コンに対して、人生と同じくらい真面目に取り組むことを促すもので、「○○は人生」という言い回しは『環境』でよく使われていました。
これに周囲もうなずいているのを見ると、何となく大事なことに思えてきてしまうんです。改めて聞くとよく意味が分かりませんが……。また、『朝昼晩晩晩』という言葉もありました。これは『1日空いている場合、朝1件、昼1件、夜3件予定を入れてチームメンバーを増やした』という『環境』創始者の成功体験から生まれた言葉のようです」とCさんは語る。
この創始者の武勇伝にならって、多くの会員が「朝昼晩晩晩」にならって平日夜3件の勧誘にいそしんでいたようだ。このようなハードな活動は「スーパーウルトラハードワーク」、略して「SUHW」と呼ばれ、成功に近づく努力として扱われているという。
創始者の行動を手本とする習慣は多岐におよび、そのほかにも創始者や幹部が使っている顔文字1つに至るまですべて真似することが徹底されている。
「この言葉の通り、勧誘に加えて深夜にまで及ぶミーティングを行い午前2時~3時に就寝する生活を送っていたのですが、無理がたたったのか、血便が出ることもありました。
いま思うと異常ですが、師匠もかつて血便を出してまで勧誘していたことがあるらしく、環境全体のセミナーでそのことを自慢していました。ちなみに、寝るのが遅すぎて日中は居眠りを頻発してしまい、職場で問題になることも少なくありませんでした。これは他の元会員からもよく聞く話です」
ピンハネを目的とした合コンやBBQを開催
「朝昼晩晩晩」にはどこか、旧日本軍の「月月火水木金金」を想起させる響きがある。このような一見奇妙に思える用語群も、集団内でしか通じない言葉を使うことで帰属意識を高め、「特別なことをやっている」と思わせる効果があると考えられる。さらに、合コンや飲み会といった勧誘イベントには他にも目的があった。収益の確保である。
「飲食店のコースを予約しておき、実費よりも多く回収して収入の足しにする行為が『経営の練習』として推奨されていました。実際は3000円のコースを4000円と言って集金すれば、10人で10000円の収益になります。このため『環境』の飲み会でレシート確認を申し出ると嫌がられます。
男性9名、女性5名が野外で飲み会をしている様子。こういったイベントを大量に開催することで、勧誘とピンハネの機会を増やしていたようだ。提供者の希望で画像は加工を施した
人によっては必ず毎週飲み会を入れる代わりに飲食店に特別コースを作ってもらい、幹事は2名まで無料にするなどの交渉をしていました。この行動力は凄いと思いましたね。ほかにも、100人規模のバーベキューで10万円以上儲けたこともありましたよ。ただこれでも収入は足りず、結局ダブルワークはしていました」
男性の場合は早朝や夜勤の仕事に関する情報が内部で共有されており、効率のいい職場を紹介してもらうようだ。また、女性の場合は夜の仕事で同様のことが行われており、同じガールズバーやキャバクラに環境構成員が何人も所属していたという。
「普通の友達」になってから勧誘を始めるパターンも
毎月15万円の上納金を幹部に支払っている会員は、生活が苦しくなれば自然に収益も兼ねた勧誘に励むようになる。それを「経営の練習」と呼べばなおさら真面目に取り組むだろう。このように「環境」では、その端々で妙に考え込まれた仕掛けが見られる。勧誘手法がその代表である。
「勧誘手法は細かく教え込まれていました。例えば先に話した『合コンは人生だと思え講座』では、合コンは5対5が推奨されていて、幹事は全体を見渡せるように対角線に座ること、男女は途中からクロスして座らせ会話を弾ませることなどが教えられていました。
こうして場を盛り上げた場合も、たくさん話せた人とあまり話せなかった人が出てくるので、前者には『楽しかったのでもっと話しましょう』、後者なら『あまり話せなかったのでまた会いましょう』と次の勧誘に繋げるんです。
15名ほど集まったフットサルイベントの写真。男女比はほぼ1対1。スポーツが好きな友人に対しては、こういったイベントに連れ出すことで勧誘につなげていたという。こちらも提供者の希望で画像には加工を施してある
また、合コンや飲み会では『参加者の友人』、つまり構成員から見た『友人の友人』を呼んでもらうことが重視され、私の場合も学生時代の友人から誘われた合コンで彼らと接触しました。これを『環境』では『内製ないせい』と呼んでいました。
私も彼らと知り合った当初は起業にはまったく興味がなかったので、2年間ほど普通の友達付き合いをしていました。その間に環境の会員は私の地元の友人とまで親しくなっていたようです。その後、転職を考えていると話したある日、師匠を紹介されたんです。このように1年、2年と全く直接的な勧誘をしないこともあります」
知り合って2年間も全く勧誘をしてこない友人。そんな人物が、まさか悪徳商法団体の構成員だとは思わないのではないだろうか。そんなただの友人が、職場への不満や転職を口に出した途端に牙を剥くのである。
友人に特別感を味あわせる「ベンツ紹介」
考え抜かれた勧誘テクニックや長期間にわたる友達付き合いの他、分かりやすいブランドで特別な気分にさせる手法も使われる。師匠への紹介がそれである。
Cさんが所属していた管轄では、師匠への紹介でよくベンツでのドライブを使っており、これを「ベンツ紹介」と呼んでいたという。「成功している経営者である師匠が、あなたのために特別に時間をくれたから」といって師匠のベンツに乗せ、師匠が成功していることを印象づける。
勧誘する側はあたかも特別なことのように言っているが、実際はベンツ紹介する日が決まっており、弟子たちがGoogleカレンダーに30分刻みで予約を入れていたという。師匠はそれに従って一日中同じエリアを周回するわけだ。いまどきの若い子は車に関心がないことが多いが、それでも高級車に乗っていることが特別なことだと感じていたようだ。
このベンツ紹介でも、妙に細かい工夫をしていたとCさんは言う。
「これから紹介する人物が、他のメンバーと大規模な飲み会で顔を合わせていることは少なくありません。そのため、ベンツ紹介での乗り降りの際にはち合わせしてしまうと、『なぜ、あの飲み会で見た人が同じ人のベンツに乗っているのか?』と妙に思われてしまいます。これは絶対に避けなければいけません。
このため、前の回のメンバーから完了連絡をもらってから現場に向かったり、乗り降りの場所をずらしていました。ほかにも、同じような紹介として、『タワマン紹介』もありました。これは師匠のタワーマンションに勧誘対象者を連れて行くものです。
この時もはち合わせしないよう、完了連絡を徹底するとともに、入る場所と出る場所を変えたり、タワーマンションに行く際のルートと帰る際のルートを変えたりと工夫をしていました。
タワーマンションを出たら、わざわざ道路を渡って別の道順で駅に帰るんです。これを複数の構成員が一日中繰り返します。この他カフェで紹介するチームもあるようですが、はち合わせしないための工夫をするのは同じようです」
アップデートされ続ける勧誘手法
高級車を乗り回し、タワーマンションに住む師匠はさぞかし余裕のある生活をしているのだろうと思った筆者がCさんに質問したところ、意外な答えが返ってきた。
「師匠は『会員に夢を見せなければいけない』と、さらに上の幹部から半ば強制される形でベンツやタワーマンションを購入していたようです。ベンツについては中古で済ませていたり、共同所有していることもあるらしく、実際にはあまり余裕がないのではないでしょうか。また、師匠は日々の弟子からの報告やミーティング、セミナーで忙しく、時間的にも余裕があるようには見えませんでしたね」
勧誘手法については、セミナーで教えられる他、会員同士で考えることもあったという。
「効果的な勧誘手法を考えるミーティングがありました。お互いに、最近うまくいった手法や新しく考えた手法を教え合うものです。私が聞いたものでは、本屋の転職コーナーで声を掛ける、カフェで隣に座る際に『荷物を見てもらっていいですか?』や『ここ、空いてますか?』などと言って会話に持ち込むといった手法がありました。
私はよく転職フェアに足を運んでいましたね。職場に不満がある人が多く、一度に多くの人と顔を合わせられるし、また名札から職種が分かるので便利なんです。営業職は元気があり、チームビルディングにも役立つのではと有望視されていました。
この手法は人気があったのか、同じ会場に顔見知りの環境構成員が何人もいました。このような勧誘手法については、大阪なら東京、東京なら大阪のメンバーから教えてもらうというように地域間での情報交換もありました」
彼らは日々手法を進化させ、セミナーやミーティングを通じて共有している。取材の中では旧帝大出身者や大手企業在籍者などの入会例も聞かれ、知性の高低と入会とはあまり関係がないという印象を受けた。転職フェアのような、ややフォーマルな場にも彼らは潜んでおり、人が集まる場所はどんなところであれ注意してもらいたい。



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