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「末期がんすら告知されずに退院させられた患者さんも少なくない」 コロナでひっ迫する病床状況が招く“信じられない恐怖”

2021-05-02 08:30:00 | 日記

下記の記事は文春オンラインからの借用(コピー)です

 変異ウイルスによって勢いを増した新型コロナウイルス感染拡大の第4波が押し寄せるなか、病床のひっ迫が深刻化している。大阪府や沖縄県では、これまでに新型コロナウイルスの重症者向けの病床使用率が100%に達したと報じられている。こうしたなか、大阪府や奈良県は、改正感染症法に基づき、医療機関に対して病床確保を要請している。
 しかしその一方で、非コロナ患者が不本意に病床を奪われる例も増えていくことになりそうだ。
とにかく急いで退院させたがる医師
「面会謝絶でご家族に会えないせいなのか、認知症の症状が出はじめている。退院させてあげてはどうか?」
 昨年8月、大阪市在住の西口朱美さん(仮名・55歳)が、市内にあるA病院に入院中だった86歳の母親を自宅に連れ帰ったのは、主治医のそんな勧めがあったからだ。
「2019年に起こした脳梗塞で半身麻痺になった母は、約1年半にわたって入院していました。私はほぼ毎日、面会に行っていたのですが、2020年5月からはコロナ対策の一環で面会謝絶になり、3か月ほど会えていない状況でした。母と意思疎通できるうちにしておきたいという思いもあり、退院させることにしたんです」
 その決断を主治医に伝えると、わずか4日後に退院日が設定されたという。
「介護用のベッドの設置など、自宅の準備が整ってから退院させたいと告げたのですが、お医者様は『特別な準備は必要ない。寝床もしばらくは布団でも問題ない』と。とにかく急いで退院させたいようでした」
 しかし、自宅での母の介護は西口さんの想像を絶するものだった。
再入院は「ベッドが満床だから無理」だと言われ……
「退院した日の夜のこと。私は、母の絶叫で目が覚めました。何事かと思って飛び起きると、母が自室から台所まで這い出してきていて、暴れているんです。昼間とは違って、私のことも全く認識していないようでした。こんなに体力があるのかと思うほどの暴れっぷりで、おとなしくなるまで2時間ほどかかりました。その日だけではありません。同じことが毎晩のように続いたんです。まさかここまで認知症が進んでいるとは、お医者様からも全く聞いていませんでした」
 慢性的な睡眠不足に陥った西口さんは、勤務先のはからいによるリモートワークにも支障が出るようになってしまった。限界を感じた西口さんは、退院からわずか3週間でA病院に母親の再入院を申し入れたというが……。
「もうベッドが満床だから無理だと。ほかの病院を紹介してもらうようにもお願いしたのですが、主治医の先生に『コロナの影響もあり、どこもすぐには難しい』と言われてしまいました」(西口さん)
 結局、再入院はあきらめ、西口さんの母親はグループホームに入所することとなった。退院からわずか2か月後のことだった。
「グループホームの費用は、毎月約13万円。入院させていれば6万円程度だったので、経済的負担は倍以上になりました。それよりなにより、たらい回しにするようなことになって母に申し訳ない。お医者様が、母の病状をもう少し丁寧に説明してくれていたら、退院させることはなかったでしょう。後から知ったことですが、去年の8月には大阪府はコロナ感染者のための病床確保が課題となっていて、A病院でも、優先度の低い入院患者に退院を促していたようなんです。コロナ感染者への対応ももちろん重要ですが、だまし討ちのような形で特定の人にだけ負担を強いるようなやり方は、正直、納得がいきません」
在宅医療にまで影響 週10人ペースに膨らんだ新患受け入れ
 さらに死が近い、末期の入院患者も、コロナ病床確保のために続々と病室を追われている。首都圏にある在宅医療専門クリニックの院長(40)が明かす。
「コロナ禍以前には、新患の受け入れは一週間に3、4人程度でしたが、昨年5月ごろから急増し、1週間10人程度の新患が入ってくるようになった。去年の秋ごろから年末にかけ、一時的に新患の受け入れ数が落ち着いている時期もありましたが、今年に入って第3波がピークに差し掛かる頃になると、再び週10人ペースが続くようになりました。そのうち7、8割が、入院先から退院したばかりの末期がん患者で、東京大学医学部附属病院や東京医科大学病院、がん研有明病院など、都内の大病院からの患者さんもいます。通常なら、緩和ケアを受けながら病床で最期を迎える可能性が高かった方々ですが、ご家族に聞くと『面会謝絶でご家族と会えないのではご本人も寂しいはず。家で看てあげたら?』などと言われ、入院先から退院を促された結果、在宅でのケアを選択したというケースが多い」
 同クリニックの新患増加のタイミングは、まさに東京都の病床使用率と合致している。コロナ病床確保を目的に、“追い出された”患者も多く含まれていると見ていいだろう。
一方、受け入れ側である同クリニックに医師やスタッフの増員はなく、「以前は30分ほどだった患者さん一人当たりの一回の診療時間は、末期がんの新患が増えたことで倍以上になっている。昼休憩を削ったり、診療時間を延長したりして対応しているが、もはやギリギリ」(院長)という。
末期がんであることすら告知されずに退院させられた患者
 もちろん、自宅で死を迎えること自体は、悪いことではない。むしろ、1970年代までは、病院死よりも自宅死のほうが多かったのだ。末期がん患者に重要な緩和ケアについても、「日中の診療時に麻薬や鎮痛剤をある程度まとめて処方し、不測の事態には急患として対応することで、在宅でも可能」(院長)という。
 ただ、本人も家族も準備ができていない状態での“追い出し”は、患者やその家族もまた、大きな負担を背負わせることになる。
「コロナ禍に受け入れた末期がんの新患のなかには、余命が短いにもかかわらず、患者さん本人も家族も全く聞かされていないことや、末期がんであることすら告知されずに退院させられた患者さんも少なくない。告知されていたとしても、死の数か月くらい前までは、自分の身の回りのことは自分でできるので、家族も『これならうちで看られる』と思ってしまう。しかし、急激に弱り始めるのが死の1か月ほどまえから。歩けなくなり、ベッドから起き上がれなくなり、せん妄や痛みも著しくなっていく。そうした患者さんに家族として付き添うことは覚悟がいることですが、コロナ禍ではそうなる可能性があることを十分に説明されずに退院してくる場合がほとんどです」(前出・院長)
 なかには想定を超える在宅介護の過酷さに、SOSを発信する家族もいるというが、「退院したが最後、予想以上の負担に耐えかねて、再入院を望んでもほぼ受け入れてもらえない。私が知るだけでも、退院翌日に同じ病院に再入院を申し入れたものの断られたという患者さんが複数います」と院長。さらに「SOSを発信できる人はまだマシ。情に訴えられる形での退院勧告を受け入れたご家族の多くは、家族愛や責任感が強い人たち。在宅での介護に体力的にも精神的にも限界を感じていても、抱え込んでしまうご家族も多い」という。
 医療崩壊を防ぐための病床確保は喫緊の課題だが、そのしわ寄せによる家族崩壊はあってはならない。



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