たまゆら夢見し。

気ままに思ったこと。少しだけ言葉に。

我が背子 大津皇子3

2018-11-20 22:30:52 | 日記
平成最後の今年の秋。

出張の関係でタクシーで岸和田方面に行く予定があった。

空は澄み渡り日差しが下手をすると痛いとさえ感じた。

今日は10月2日。

あの理不尽な処刑があった日だ。

1340年近く前の悲劇。

八尾インターを過ぎた辺りから左手に二上山が見える。

「奥野さん、二上山が見えますね。 ほら。雌岳が雄岳に寄り添うように見えるんです。あの雄岳に大津皇子は眠っておられるのですね。雌岳は大伯皇女みたい。やっと寄り添えたと安心しているみたいに見えるんです。いろんなことがあってもお互いを信じてやっとたどり着いた場所みたいに見えるんです。

うつそみの人にある我やあすよりはふたかみやまをいろせと我がみむ…引き込まれてしまいますね。何故こんなに引き込まれてしまうのでしょうね。本当に不思議。」思わず上司で優しい歴女に言った。
彼女は東京にある有名な国立大学を卒業している才媛だ。私のコアな話題に付き合ってくれるのは彼女くらいである。

彼女はクスクスと笑い「あなたは本当に大伯皇女の生まれ変わりね。」と言う。
少し拗ねたように「私が大伯皇女であれば大津皇子に聞きます。あなたは誰を愛していたのですか。誰にはめられたのですか。許せないのは誰ですか。あなたはどう生きたかったのですかって。」と私が言うと「大津皇子は生きたいように生きたと思うけれど。石川郎女のことで草壁皇子と張り合っていたのでしょう。草壁皇子との恋には勝った。でも束の間の恋で本当の愛ではなかった。そんなもの皇子には必要なかったと思う。本当に愛していたのは大伯皇女だけ。」と笑いながら才媛は言う。そして「不比等はフィクサーだと思うな。」と言う。

「奥野さん韓流ドラマ見過ぎ。韓流ドラマ見たことないけれど。血生臭い。」と言った時ドライバーのかけているラジオから「新天皇の即位に向けスケジュールを御負担にならぬよう配慮されたものとなりました。」と男のアナウンサーの声が流れた。
御負担か…別に自腹でもないのに…天皇になると言うことは御負担なのかな。なら何故天武も天智も持統もライバルを蹴落として天皇になろうとしたのだろう。庶民にはわからないご苦悩なのだろうか。

天皇になりたくもないのに無理矢理中央に押し出された草壁皇子が負担であると言えば悲劇は避けられたのかな。
奥野さんに聞くのはやめておいた。彼女はもう皇室っていう時代じゃないのよと言いそうな今時のリベラル派だから。