たまゆら夢見し。

気ままに思ったこと。少しだけ言葉に。

我が背子大津皇子 山辺皇女12

2019-06-22 23:29:40 | 日記
今宵そちらに参る…と大津さまから言伝を預かった。

何かおありになったのかしら…訳語田の邸宅ではおはなし辛いことかしら。

もしかしたら、石川の郎女大名児のこと…なのかしら。

別に…私に相談などよろしいのに…

私が心を許せるのは大津さまだけ。大津さまが石川の郎女大名児を迎えようが関係ない。

少し強がりかしら。

でもね…大津さまの心は大伯さまのもの。きっと大伯さまの心も大津さまのもの。

同母弟姉など禁忌などでないわ、あのお二人にとっては。

草壁皇子の恋慕など大津さまは意に介しておられぬと思う。

ただ婚姻出来るのは大津さまより異母弟の草壁皇子。

そのことは大津さまもさすがに気がかりかしら。

でも肝心の大伯さまが受け入れるはずもない。

夜になり大津さまがおいでくださった。

二人で夕餉をとり「そなたもささ(酒)を呑まぬか。甘いささならそなたもどうかと思い…」と大津さまに勧められるがまま口にした。

ささに似合わぬ甘さに驚き「大津さまがささをお好きな理由がわかる気がしました。」と言うと大津さまはお笑いになられ「そなたは誠にかわいらしいのぅ。」と仰言った。

嬉しいのとささのせいか顔が紅潮しているのがわかった。

大津さまは「そなたに願いがある。聞いてもらえぬか。」と苦しそうな顔をされた。

「そなたも知っておる石川の郎女大名児のことじゃ。」

いよいよ…でも大津さまなりに悩まれたことなのが痛いほど伝わったわ。