たまゆら夢見し。

気ままに思ったこと。少しだけ言葉に。

我が背子 大津皇子 25

2019-01-17 10:05:49 | 日記
大伯の回復を見届け大津は伊勢を後にした。

寂しかったがお互い前回のような絶望感はなく寧ろ心は未来へと向いていた。

大津は大伯の言う「奇跡」の理由を知りたかったが、姉上のお言葉に心を任せよう、委ねようとすることで安穏を選ぶことにした。

飛鳥浄御原に着き父天武に報告をした。
「よう朕の役割を果たしてくれた。礼を申すぞ。」と天武は言った。

伊勢で大伯の乳母から「皇太子さまは若い時の天皇さまによく似ておいでだこと。気品に満ち、凛々しく眩く、そばにいた大田皇女さまも大伯さまの生き写しくらいに美しく一番仲睦まじいおふたりでした。
もちろん皇后さまもお妃としてそばにおられました。しかし、天武さまが一番大切になさっていたのは大田皇女さまで片時も離さず、大田皇女さまがお隠れになった時天武さまは狂わんばかりで…大田皇女の亡骸をしばらく誰にも近づけさせませんでした。お姿は憔悴し虚ろで廃人になってしまうかと皆で心配いたしたほどです。その時皇后さまが天武さまを一心にお助けになられました。皇后さまは努力で天武さまの片腕となられたと聞きました。」と教えてくれたのを思い出していた。

皇后も「安堵しました。ゆっくり休んでまた朝堂に参られよ。」と言った。
優しい表情であった。父、天武に愛されるより片腕と信用され皇后の地位を得られたのだな…そんな愛し方もあるのだな…何故皇后は大田皇女の皇子の我よりも我が息子の草壁を皇太子にしなかったのであろう。

いくら草壁でも我より…皇太子にと望まぬものなのか。

「皇太子、どうなされた。」と皇后は心配そうに聞いた。
「お気遣いありがとうございます。大丈夫でございます。」

舎では山辺皇女が嬉しさを隠せず待っていた。

大津は山辺皇女を妃として抱いた。