「浜梨さまにおかれましては大変聡明なお方だと国民は存じておりますが、国民は皇后、弟宮妃の檜扇菖蒲さまの謙虚なお姿に感服しております。今からの皇太子殿下との婚約内定会見で浜梨さまにおかれましても皇后陛下、檜扇菖蒲妃殿下のなさりようをご参照くださいますように。」と宮内庁職員ごときが言ってきたわ。
「はぁ。」怒り浸透になっている私を察してか皇太子殿下が「浜梨さんには浜梨さんの良さを国民に知ってもらう方が僕は良いと思う。浜梨さん、貴方らしくで良いから。」と宮内庁職員ごときをたしなめてくれたわ。
怒りは治まらない。
宮内庁職員ごときに「どこからの指示なの」と聞いてやったわ。
「いえ、浜梨さまのご実家はハイソサエティで羨む方も多うございまして」
「国民に受けるために3LDKの狭い職員官舎に住むべきだったというの。やってられないわ。私の実家と檜扇菖蒲さんの家を一緒にしないで。勝手に羨めば。私の育った家庭はあなたが言うようにハイソなのだから仕方ないじゃない。しかも、あなたの立場でその言葉外務省事務次官のお父様に言えるの。今から殿下との婚約内定会見だというのに、ハレの日だと言うのに。宮内庁職員はこれだから使えないのよ。」
「そうだよ、浜梨さんが不快に思うことをいま言うなんてどうかしているよ。謝るべきだ。」と皇太子殿下は宮内庁職員に謝罪を要求してくださったわ。
「私は殿下をお慕いご尊敬申し上げているわ。その気持ちが伝わることの方が大切じゃないの」
「申し訳ございません。浜梨さまに良かれと思い申し上げましたまでで」
「もういいわ。あなた必要ないから。殿下、参りましょう」
「大丈夫、浜梨さん」
「ええ。少し緊張はしておりますが殿下がいてくださるし。檜扇菖蒲さんのように振る舞えというのなら振る舞いますが」と焦燥感も露わな宮内庁職員に畳み掛けてやるように言ってやったわ。
「必要ないよ、ありのままの浜梨さんが良いから。それに君は檜扇菖蒲妃より美しいし聡明なのだから」
皇太子殿下は自信たっぷりだわ。それに相反するように宮内庁職員は顔色を失っていたわ。
ふうん、でも檜扇菖蒲さんて言わないのね、檜扇菖蒲妃と言うのね。それは気をつけなくてはね。
ふ、皇妃になるのよ。弟宮よりルックスはどうかより皇太子の方が偉いの。
未来の天皇陛下なのよ。その皇妃となる私が一宮家の檜扇菖蒲と比べられなきゃならないのよ。馬鹿じゃない。
他にいた宮内庁職員が皇太子殿下の合図と共に記者会見場への扉を開けたわ。
物凄いシャッターの音、光。
ふ、この私に見惚れているわ。なんて素敵なの。