■ 今日のおすすめ
『就業規則で会社は変わる!』(藤本 勉 著 労働調査会)
■ 就業規則に関心がありますか(はじめに)
私は、ある企業の経営者に就任するまでは、所属する会社の就業規則には全く関心がありませんでした。皆様はどうでしょうか。
定款により設立登記をし、会社設立の手続きはスタートします。従業員との間のルールである就業規則は、定款の次に作るべき重要な書類です。会社設立の手続きの中で、就業規則は従業員代表の意見書を付けて労働基準監督署長に届出が必要です(従業員10人以上。事業所単位でカウント。)。
そのような重要な書類である就業規則が、重要なステークホルダーである従業員とのリレーションシップを確立するために「経営管理」の観点から活用されているでしょうか。
民法に雇用契約(623条~631条)の規定があるにもかかわらず、憲法の規定により(第13条〈法の下の平等〉、第27条〈勤労の権利及び義務、勤労条件の基準〉など)、労働法(労働基準法、労働安全法、労働福祉法など)が制定され、労働基本権が保障されました。それを企業単位でルール化・文章化したものが就業規則です。就業規則に沿った運用こそ、まさに「コンプライアンス」の基本です。
就業規則のそのような意義を認識し、就業規則に注目し、「経営管理」に、「コンプライアンス経営」に生かされていますか。
紹介本「就業規則で会社は変わる!」は、そこに注目した、経営にとって有意義な著書です。その内容の一部を次の項でご紹介します。
■ 就業規則の運用次第で会社は変わる
【経営理念が就業規則の重みを変える】
著者は、厚生労働省などのモデル就業規則の「目的(第1条・・・労働基準法第89条に基づき・・・)」の前に、「我社は○○を目指し、このような会社にしたい」という「経営理念」を最初に入れたら、堅苦しい就業規則から、社員とベクトルを合わせようとするとする、社員と共に「共創価値(CSV〈Creating Shared Value〉、やる気)」を作っていこうという前向きの就業規則に変わるのではと提唱します。勿論法手続き的に何の問題もありません。
経営者が就業規則と真剣に向き合うことは、就業規則が、型苦しい恐そうなものから、その会社の無形知的資産を築き上げ、社員が「この会社にいてよかった」と思えるインフラストラクチャーへと変わっていくスタートではないでしょうか。
【リスクを回避する就業規則】
就業規則が飾り物になっている企業がいかに多いことでしょう。
安全衛生管理者はその企業にふさわしい安全衛生計画を安全衛生委員会のメンバーと共に作り、そのPDCAを実践し、安全衛生環境を創り上げていますか。
ハラスメント対策のために、相談窓口の設置や、相談した人へ累加のハラスメントが起きないよう、経営トップがフォローしていますか。
就業規則を怖いものにせず、社員の安心・安全を守るものにしようとする経営トップの思いが、関わりが、リスクを回避し、更には社員のやる気を起こすのです。
【やる気を出すための就業規則】
就業規則は労働基準ルールを会社が守る、つまり「コンプライアンス」のスタートです。これが守られなければ、いわゆるブラック企業として社会的信用を無くし、社会から消滅(倒産)していきます。就業規則を「コンプライアンス」と言う受動的な側面として受け止めることが必要な時もあります。
しかし、就業規則をもっと能動的に活用することもできます。その為にはハーズバーグの言う「衛生要因(職場環境、人間関係、福利厚生、賃金)」が整っていることが前提です。その上で、「アワード制度」を設けるのです。どのようなアワード制度が良いのか企業により、社員の期待により変わってきますので、詳述しません。紹介本などを参考にされては如何かと思います。
一言申し添えたいことは、就業規則を固定的なものではなく、1年に1回以上改善し、その中で失敗したことは改め新しい良いアイデアを加えていくことで、スパイラル的、シナジー的なものにしていくことが大切ではないでしょうか。
もう一つ大切なことは、経営者一人ではなく、「就業規則活用チーム」「モラルサーベイ」など極力社員とのコミュニュケーションをとれる機会の中での運用が大切ではないでしょうか。
【企業風土を変える就業規則】
企業風土は良い循環もすれば、悪い循環もします。悪い循環が続けば企業は消滅に向かいます。良い循環をすれば、企業は業績が上がり持続的成長をし、社会的評価、ステークホルダーの評価も上がります。
著者は、良い循環にしていくための就業規則の活用について、前述したこと以外にも様々な角度から提案をしています。是非紹介本をご一読ください。
■ 経営者自ら就業規則に向き合おう(むすび)
「就業規則で会社が変わる!」それは私の体験からも同感です。「就業規則で会社が変わる!」を実現するには、経営者がその気になること、経営者をその気にさせること、それがまずスタートです。
大切なことは、経営者が、「社員が『この会社にいてよかった』」と思う会社にしようと、能動的、自発的に決意することです。その思いで就業規則と向き合い、新たなマネジメントを始めた時には、必ず何か良い変化が起こってきます。是非トライしてください。
【酒井 闊プロフィール】
10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。
企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます