ゆう’sful LIFE

感染予防と看護について考えたことや勉強したことを綴っています。

COVID-19が看護に警鐘を鳴らしているようだ

2020年03月24日 | Weblog
先週末くらいから、近隣医療機関からの患者依頼が一気に増えました。
パターンとしては
・発熱、咳嗽などの症状を呈する患者がクリニックなどを受診
・検査せずにいきなりCT→肺炎像あり(詳しい所見は紹介状には書いていない)
・保健所へ電話し、新型コロナ疑いという
・保健所から診察依頼→いや、そこで診れるでしょというレベルでも断れない、断ると患者がたらいまわし
・来院→まったく自宅療養可能な微熱と軽い咳

1人の患者に対してPPEと時間をかなり消費するので、クリニックには役割を果たしてもらわないと私たちのような医療機関が崩壊するのは時間の問題です。
この状況を改善してもらいたいと思っても、クリニックや個人病院は「疑わしい患者は診ない」という方向に舵をきっており、改善するつもりはなさそうです。

このままでは、ずるずると深みにはまるため
・保健所から紹介→患者から電話で状態を聴取
・軽症で経過をみれそう、同居人にハイリスク者がいない、衛生行動が守れそう、自宅の構造上無症状者と空間的分離ができる、あたりの条件を満たしていれば翌日午前中の受診を予約する
・ただし、夜間悪化の兆候がある時は、速やかに電話をして受診を検討するよう説明する。
・カルテを準備し、夜間の当直へ申し送っておく

という方法で、患者が五月雨式にやってきて、スタッフが出たり入ったりしないようにして
効率的に専用外来を回してみることにしました。
もちろん、重症患者は別ですが、ほとんどの患者さんは自宅療養が可能でした。

電話は顔が見れないので、電話を掛けたら、最初に「体調はいかがですか?大丈夫ですか?」と、まず聞いてあげよう。

この方法を実践するまでには、保健所へ提案し、検査結果待ちの患者を自宅で経過観察するという試みをしてみることが必要でした。
病状説明を医師がした後に、自宅療養について指導=相当個人に合わせて具体的に話す、不安に対してしっかり説明し、不安を解消する。
このプロセスが重要です。
陽性が疑われる検査中の患者の同居人たちが、その後の接触者検査で陰性であったことから
自宅で正しい療養生活と感染予防を実践できていれば、十分この病気と闘うことができると確信したのです。

それは、この感染症との戦いに、まだまだ希望が持てるということでもある。

この感染症は、基本的な看護がいかに実践できるか問われているような病気だと思います。
看護師が果たす役割はとても大きい。
看護協会からの具体的な発信がない(ポスター程度)のは残念です。
今、看護師のフィジカルアセスメント能力が低下しているとか、バイタルサイン測定で呼吸数を測らないとか、色々指摘されていますが
私たち看護師へ警鐘を鳴らしているようにも感じるのです。

この感染症は、人が病気になった時に、回復の過程を推進するために何をすべきか、何を整えたらよいのかが大切。
ナイチンゲールの看護覚書でも読み直してみるとよいと思います。

#新型コロナウイルス感染症





高齢者福祉施設のCOVID-19対策

2020年03月11日 | 感染管理
インフルエンザなどの他の感染症でも明らかなように
高齢者施設にCOVID-19のクラスターが発生すると、重症者や死亡者が増加する可能性が高くなります。
ひとたび入り込むと、その拡散予防は困難を極めるので、大切なことは入り込まないように予防することです。

日本環境感染学会では、下記相談窓口とQ&Aを公開しました。
ご活用いただければ幸いです。

高齢者福祉施設従事者の方へ
・相談窓口の設置
新型コロナウイルス感染症対策についての相談窓口を設けます。
以下のアドレスに「施設名・お名前」を明記の上、お問い合わせください。
E-mail:jsipc-toiawase-ML@umin.ac.jp 
 
・高齢者福祉施設の方のためのQ&A  (2020年3月10日)
http://www.kankyokansen.org/uploads/uploads/files/jsipc/koureisyashisetsu_Q%26A.pdf

#COVID-19

医療者として 人として

2020年03月10日 | Weblog
COVID-19のおかげで多忙極まりないのですが、記録として残しておこうと思い、この記事を更新します。
(内容は匿名性を担保するため、個人や場所が特定されないように一部改変しています)

COVID-19の対策は一言でいうと難しい。
潜伏期間も、環境中での生存期間も長め。
臨床症状は、初期は普通の風邪と変わりないし、ほとんどの人は1週間程度で自然に軽快してしまう。
初期の段階で、sick contactも何もない患者を見極めるのは、今は不可能に近いと思います。

未知の新興感染症だから、最初の対策はどうしても厳しめになってしまうものです。
正体がわからないから。
それを緩めていくタイミングや方法は、これもまた難しいものです。

テレビなどでは連日感染者数の増加や、死亡者の数、誰がどういう行動をしたのかなど、報道していますが
多くの人が元気になっているという事実もきっちり報道してほしい。
どうしたらいいのかも抽象的な報道ばかりで具体的でないものばかり。
保健所などの行政をやり玉に挙げて批判が多いけれど、彼らは不眠不休で対応しているのです。
煽るばかりの報道の在り方には、何を伝えて、何をしたいのか分からず、疑問を感じます。
報道って、伝えることで何かを変えたい(=感染をとめたい)のではないのでしょうか。
少なくとも、現状それを成しているものは、ほとんど見当たりません。

報道をみて、不安になった無症状の人が外来や電話に殺到して、本来業務に支障がでています。
丁寧に対応すれば、安心して帰宅されるけれど、その数も時間も尋常ではありません。

それは、クリニックや中小医療機関からも同じです。
迅速検査では、インフルエンザしかできないということで、CT上で肺炎像があるというだけで患者を送ってきます。
PCR検査はゴールではないし、丁寧な問診や経過フォローが大切なのに、データばかりで患者さんが置き去りになっていることが少なくない。
仲間の病院でもそういったこと増えています。
軽症で、去年だったら自宅療養としていたような患者さんが片っ端から送られて来れば
外来はパンクし、PPEが不足し、おまけに、休校の影響で出勤できない職員もいるので人手不足。
医療崩壊は、目の前に迫っているから、トリアージをしてなんとか振り分けて、不必要なPPEを使わないようにしています。

そのような状況では、受け入れをお断りされることもあるでしょう。
ある所に、肺炎患者の受け入れを断られた医師が怒鳴り込んできたそうです。
「俺がコロナと言ったらコロナなんだ!」
医療者のこういった発言は許せないなと思うし、人としていかがなものかと思います。

不安故のことなのかもしれませんが、どんなことがあっても他人にこういうことを言ってはいけません。
あなたは医師なのですから。
有事の時には、人柄というか、真の姿が垣間見えるものです。
私は、2009年よりも状況はよくないと思っているし、教訓も生きていないなと思っています。