ゆう’sful LIFE

感染予防と看護について考えたことや勉強したことを綴っています。

pedVAEの定義

2020年01月05日 | 論文
小児と新生児のVAPサーベイランスが、pedVAEに変更されるので
関連文献を読んでいます。

2016年のワーキンググループの報告書から

Ventilator-Associated Events in Neonates and Children--A New Paradigm.
Cocoros NM, Kleinman K, Priebe GP, Gray JE, Logan LK, Larsen G, Sammons J, Toltzis P, Miroshnik I, Horan K, Burton M, Sims S, Harper M, Coffin S, Sandora TJ, Hocevar SN, Checchia PA, Klompas M, Lee GM; Pediatric Ventilator-Associated Conditions Study Team.
Crit Care Med. 2016 Jan;44(1):14-22. doi: 10.1097/CCM.0000000000001372.

上記論文へのコメント論文
Ventilator-Associated Events in Neonates and Children: A Single Definition for a Heterogeneous Population.
Mhanna MJ.
Crit Care Med. 2016 Jan;44(1):233-4. doi: 10.1097/CCM.0000000000001443. No abstract available.

WGの追加論文
A Pediatric Approach to Ventilator-Associated Events Surveillance.
Cocoros NM, Priebe GP, Logan LK, Coffin S, Larsen G, Toltzis P, Sandora TJ, Harper M, Sammons JS, Gray JE, Goldmann D, Horan K, Burton M, Checchia PA, Lakoma M, Sims S, Klompas M, Lee GM.
Infect Control Hosp Epidemiol. 2017 Mar;38(3):327-333. doi: 10.1017/ice.2016.277. Epub 2016 Dec 5.

こういうことをシステマチックにする仕組みを日本でも作らなければならないと思います。

ところで、筆頭著者がとても可愛い人でした。
インターネットってすごい。
https://www.populationmedicine.org/ncocoros

Urinary Management with an External Female Collection Device

2019年05月06日 | 論文
失禁ケアとして男性にはコンドームカテーテルがありますが、女性にはこれというものがありません。
以前から女性用の体外式採尿デバイスはないものかと思っていましたが
少し前から国内でも使用できるようになりました。
purewickという製品です。

これは3例の症例報告(すごく簡単な…)。

このデバイス、1本1,000円くらいして、交換は原則1日1-2本ということで
病院で提供すると持ち出しになってしまうようです。
ストーマ装具のように患者さんに購入してもらうこともできるかもしれませんが
今のところ、病院での導入はまだ難しいかもしれません。

適応がある患者さんにとっては、様々なリスクが下がるし
人出不足の状況下でおむつ交換の頻度が下がることは、メリットがあると思います。
経済効果が出せればよいのですが、まだ量的研究をするほどには、実績がないようです。

体外式女性用尿採集装置による排尿管理
Beeson T1, Davis C.
J Wound Ostomy Continence Nurs. 2018;45(2):187-189.
doi: 10.1097/WON.0000000000000417.

【要旨】
背景:女性の尿道カテーテルの使用とカテーテル関連尿路感染症を減らす戦略は、よい体外式デバイスがないので難しい。
女性の尿失禁は、皮膚にとっては、痛み、かゆみ、灼熱感、感染症、または褥瘡を起こしやすくする。

ケーススタディ:この論文では、3人の女性患者に体外式の採尿デバイスを使った経過について報告する。
これらの女性はすべて、尿道カテーテル抜去後に尿失禁を起こし、体外式デバイスで管理した。

結論:体外式の女性用採尿デバイスの使用は、尿失禁の管理と同様に、尿道カテーテルに代わる方法である。


Risk Factors for MRSA Colonization in the Neonatal ICU: A Systematic Review and Meta-analysis

2019年02月19日 | 論文
一昨年の論文ですが…
NICUにおけるMRSA保菌のリスク因子:システマティックレビューとメタアナリシス
Am J Infect Control. 2017; 45(12): 1405–1406.
doi:10.1016/j.ajic.2017.10.002.

【Abstract】
レベルIIIまたはIVの新生児集中治療室(NICU)におけるMRSA定着の危険因子を報告した11の論文の系統的レビュー、10の論文でメタアナリシスを行った。
結果は、MRSA定着において最も報告頻度の高い危険因子は妊娠期間が32週未満と、超低出生体重(<1,500g)であった。
性別、人種、出生時の状態、分娩の種類は、保菌と有意な関連はなかった。

The topic of this Journal Club is a commentary on the article “Risk factors for MRSA colonization in the neonatal ICU: A systematic review and meta-analysis” by Matthew Washam, M.D., M.P.H.; Jon Woltmann, M.D.; Beth Haberman, M.D.; David Haslam, M.D.; and Mary Allen Staat, M.D., M.P.H., from the Cincinnati Children’s Hospital. Eleven studies that reported risk factors for MRSA colonization using non-colonized controls in subspecialty level III or IV neonatal intensive care units (NICUs) were included in the systematic review and 10 articles underwent meta-analysis. The findings of the study indicate that the most commonly reported risk factors for methicillin-resistant staphylococcus aureus (MRSA) colonization in this sample was gestational age <32 weeks and very-low birth weight (<1500 grams). Infant gender, race, inborn status, and delivery type were not significantly associated with colonization.

出生体重1,500gってリスクのカットオフ値だと思います。
分娩の種類くらいしか介入可能な因子が含まれていないのが残念。

発熱性好中球減少症患者におけるスクリーニングツールとしてのqSOFAとMASCCのパフォーマンス評価

2018年09月23日 | 論文
呼吸器内科医が常勤になって肺がん治療をガチでやるようになってから、しばしばFNの患者に遭遇するようになったので
こんな論文を読んでみたのでまとめておきます。
MASCCは、臨床で使ってなかったなと思う…。

※ちなみにブログタイトルを100字以内にしないといけないので、タイトル訳ははしょっております。

Predictive performance of the quick Sequential Organ Failure Assessment score as a screening tool for sepsis, mortality, and intensive care unit admission in patients with febrile neutropenia.
Support Care Cancer. 2017;25(5):1557-1562. doi: 10.1007/s00520-016-3567-6.

<背景>
Sepsis-3では、予後不良な患者を特定するための基準として迅速な臓器不全評価(qSOFA)が開発された。qSOFAはICU外の患者に対する予後予測因子としてSIRSより優位であり、complex SOFA scoreと非劣勢であることが証明されている。
しかし今なおその正確性に関しては議論があり、更にqSOFAのパフォーマンスに関しては少数の論文しか存在しない。更に、有意な罹患率と死亡率をもたらす合併症をもつ化学療法による熱性好中球減少症(FN)を伴うがん患者群における研究は行われていない。これらの患者に対しては敗血症に関して早期の正確な評価が必要である。本研究はqSOFAが実際に敗血症、死亡率、ICU入院基準としてのスクリーニングの道具として予測因子になるかを評価したものである。また、第2の目標としてMASCC(FN患者に対するリスク指標スコア)とSIRSと比較したperformanceを比較した。


<方法>
後ろ向きに収集された成人FNデータを使用。
対象:2015年1月から12月まで峨山医療センターを受診した、発熱および化学療法による好中球減少を伴う成人患者(18歳以上)

Main outcome:敗血症の発生。
Secondary outcome:ICU入院と28日死亡

FNの診断は、絶対好中球数が<500 cells/mm3 または <1000 cells/mm3で、2〜3日以内に500 cells/mm3未満に減少し、38.0℃以上の発熱は鼓膜体温計を用いて記録された。
調査期間中にFNのエピソードが2回以上ある患者については、初回のもののみ対象とした。

臨床データ:バイタルサイン、検査データ、画像データ、併存疾患、癌診断および病期、感染部位を含む、統計および臨床データ
培養検査:入院時、尿と感染が疑われる部位、血液培養3セット
抗菌薬:PIPC/TAZまたはセフェピムを含む広範囲の非経口抗菌薬
全ての患者は28日以上追跡した。


<結果>
615人の患者のうち100人が敗血症を発症し、20人が死亡し、38人がICUに入院した。
【内訳】
 33.2%が男性、FNを起こした患者のうち37.7%が乳がんであり、全体の45%がstageⅣのがん患者であった。

多変量解析では、qSOFAは敗血症およびICU入院を予測する独立した因子であった。
しかし、MASCCスコアと比較して、qSOFAのROC曲線下面積は小さかった。(AUCに関してはMASCC>qSOFA>SIRS)
qSOFAは、敗血症、28日の死亡率、およびICU入院を予測する際に低い感度(0.14,0.2および0.23)を示したが、高い特異性(0.98,0.97および0.97)を示した。

<考察>
Sepsis-3では新しくqSOFA scoreが定義されたが、これはベッドサイドでの増悪の可能性を予測する因子として使用されることとなった。我々の検査では、qSOFAはSIRSよりも正確であるものの、FN患者の敗血症のリスク、28日死亡率、ICU入院率に関してはMASCC scoreの方が正確であった。中国での同様の試験では、感染症と診断されたICU入院患者の予後をqSOFA、SOFA,APACHEⅡ,MEDSなどと比較評価したが、ROC curveのAUCは0.666と不良であった。我々の検査でもほぼ同様のAUCであり、多変量解析でもqSOFAはFN患者の予後規定因子にはならなかった。
qSOFA自体は非常に簡便で頻回にチェックできるのが強みである。本研究より新しい敗血症の診断基準としては不適と考えられるが、qSOFA陰性は敗血症の否定にはならないものの死亡率やICU入院の指標となることが分かった。
Limitation:患者はED入院時でのqSOFAを評価している。
      単施設での研究

<結語>
qSOFAはFN患者に対しての敗血症、死亡率、ICU入院のスクリーニングには正確でないことが分かった。高い特異性を示したものの、qSOFAは感度としては不十分でありベッドサイドでの使用には条件がつくことが分かった。またMASCCと比較してその評価正確性は劣り、FN患者に対してqSOFAが代替指標とはなり得ないことが分かった。