ALLION【187】
「僕は目覚めて...君のあの態度、痕も何も愛してると言われた言葉
も何もかもが消えてショックだったけど。やはり泥酔せいだった
と思って少し頭に来た。それであんな約束を無理矢理...会ってる
間に思い出してくれると思ったし、この先、君以外考えられない
という自信を持った」
「あ... 」
「君の言うとおりだ。パズルは嵌った?」
「 ...アリオン」
エヴァはアリオンに抱きついた。
そしてエヴァの手がアリオンの胸に腹部に触っていくのをアリオンが止めた。
「わざわざ触る必要はない」
「張り倒したらいい?うふふ」
「今は状況が違う。僕は君の浮気は許したけど、晴れてない」
「え」
「それを言われたとき、このせいだと思った」
「アリオン、違う、」
「うん、わかってる。そうじゃないのに思ってしまう。だから見た
ことを忘れているのならそのままの方がいい。この話をしたのは
君のパズルのため。僕が話したかったわけじゃない。憶えてない
ことはなかったことでいい」
「 ...好きっ!」
春近い晴天の翌朝。
森の小鳥の囀りの中、アリオンはエヴァの車にサファイアの運転で出掛けるため、サファイアと一緒にトランクに荷物を入れていた。
そこに、エヴァが、待って―っ!と家から出てきた。
「よかった、まだ居た!」
飛び込むように抱きついて来たエヴァをアリオンが抱き止めた。
「やっと歩けるようになったのに走ったら危ない」
「何だよ、さっき濃厚に!別れたくせに」
サファイアが横から毒の独言。
「アリオン、ユリウスに会うことになったらこれを渡して?」
エヴァは手紙を渡して―驚きと訝しさでアリオンは戸惑った。
そこにサファイアが来て手紙を奪って中を見た。
「そんな顔をするんなら見ればいい
隠し事しないって約束しただろ?」
アリオンはサファイアに、見せて?と言って笑った。
[春の血祭までにマリアの『ライオネル』で会いましょう!]
読んだ途端サファイアが地面に崩れて爆笑した。
「あ...サファイア...クリスティーナ、これは?」
エヴァは、うふふ。と可愛らしく笑う。
「あはは...それ見たときのユリウス、俺も見たい『マキシム』
に誘われたアリオンがそれユリウスに渡すなんて洒落てる」
「どういう意味だ?」
「ユリウスの反応みたらわかる。クリスティーナの宣戦布告」
「宣戦布告?」
アリオンは嬉しい顔をしてエヴァに向いた。
「アリオンがユリウスに会うなら私はユリウスに会わなくて
済む。それで十分よ。読んだらにこにこ笑って退散するわ」
アリオンはエヴァを強く抱き締めてキスをした。
「『マキシム』どうでもいいから頑張って?いってらっしゃい」
「ああ、ありがとう。いってきます」
サファイアが後部座席のドアを開けて真面目顔してお辞儀。
それにアリオンは笑って―乗り込んでもう一度エヴァに笑った。
エヴァは幸せいっぱいの笑顔で小さく手を振った。
やがて、小さくなって行くアリオンの乗った車を見送って家の中に戻ろうとして振り返ったとき、そこにカールがいた。
丁度、大学に行こうとして出て来たところだった。
「あっ、おはようございます。奥様。足は大丈夫ですか?」
カールは青年らしい溌剌とした動きでクリスティーナの手を取って支えようとした。
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