【甘露雨響宴】 The idle ultimate weapon

かんろあめひびきわたるうたげ 長編涅槃活劇[100禁]

ALLION【325】クリスティーナの遺書

2010-05-15 | 4-1 ALLION




 ALLION【325】 


[行って来ます!戻ってきます!でも1ヵ月経って戻れなかったら
 私はいないの。家はアリオンにあげる。愛する人と結婚して!]

アリオンは、ふと、まさか?と過ぎったが、打ち消した。

これをどう理解していいのか、ただ困窮した。

サファイアは1ヵ月という数字に引っ掛かった。

いつから数えて1ヵ月だ?その日に目覚めるつもり?

「これは...クリスティーナは出て行ったのか?」

アリオンは泣きそうだった。

サファイアは俺にもわからないと言うしかなかった。

「その前に、1ヵ月経ってないし戻るって書いてある
 本人は戻るつもりがある、悲観する前によく読めよ」

「どこに行ったんだ?知ってるんだろう?」

「知ってても刺激出来ないっ!」

「! ...何?...サファイア...どういうことだ」

「 ...触れないよ、クリスティーナには誰も」

「僕なら触れる!どこにいる?迎えに行く!場所を、」

「何だよ、お前のせいだろうっ、お前だと余計」

サファイアは口走ったことにハッとして悔しくなった。

アリオンは口を噤んだようなサファイアを見詰めた。

「 ...僕のせい?」

アリオンは近くにあったソファにへたり込むように座った。

「 ...そんな...僕は...そうじゃないんだ」

頭を抱えて言うアリオンにサファイアは、事実は事実。と静かに言った。

アリオンはそれには反応なく―突然立ち上がった。

「サファイア、教えてくれ!どこまででもザーイン星でも行くっ!
 仕事やめるっヴァイオリンは捨てる!クリスティーナが大事だ」

サファイアは一度アリオンを見て―ため息をついて笑った。

「今じたばたしたってはじまらないよ、座りなよ。話をしよう」

サファイアはアリオンの向かいのソファに座った。

とは言え、そう言い放ったアリオンが嬉しかった。

サファイアのどこか神妙で高圧的声色にアリオンは渋々従った。






サファイアとアリオンは少しずつ会話を始めた。

ギーガもサファイアもクルー全員が知った―アリオンの失態。

アリオンは俯き、両手で顔を覆って沈んでいた。

「ユリウスは...クリスティーナとアリオンの絆を言いたくて強引に
 夜の約束をさせた。そのことはわかっていたよな?...なのにどう
 して最初のゼレンカの誘い...いや、それは後にしよう。ユリウス
 とクリスティーナは偶然だがコリンの救出の件あって和解した」

「え.......和解?」

「クリスティーナがユリウスの下に戻ったじゃない。ただの和解だ
 コリン救出に2年以上かかるところ少し海賊事情絡んだから急遽
 『クワロフス』を使うしかなく要請して救出。そのときふたりは
 和解...それがアリオンをゼレンカから救うことに繋がった」

「 ...サファイア...そういうことなのか」

「や、そうじゃない、結果的に、だ。そのときはクリスティーナは
 何も..知らなかった。BGをダンタリオンからラウルに変えた日が
 クリスティーナがゼレンカのことを知った日だ」

「 .......。」

「そのとき、クリスティーナはユリウスに
 アリオンに謝罪するように と要求した」

「え」

「ディノウヴォウの『マキシム』のことや脅したこと」

「そんなの、」

「ユリウスはクリスティーナとアリオンが揃ったときに
 謝罪に来る。ユリウスもクリスティーナを待っている」

「 ...。」

「ユリウスは、アリオンとゼレンカのことを知って、それを
 知ってここを出て行こうとしたクリスティーナを説得した」

「え... 」

「ユリウスはアリオンの元に必ず戻るよう...約束させた」

「ユリウスが...させた...?」

「そうだ、クリスティーナは戻る。超のつく我儘だけど
 交わした取引は守る。尤も相手が裏切らなかったらだ」

「 ...。」






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