ALLION【326】
「アリオン...ひとりで背負うものじゃないだろ?夫婦なら尚。何も
かも話し合う分け合う。辛いこと嬉しいこと。アリオンの行動が
愛は解る。俺もユリウスもダンタリオンも。だから、皆で止めた
クリスティーナはアリオンのその事情を知ってる」
「え」
「でも、頭では理解出来ても哀しくて辛くて...気が済まないだろう
から気が済むまで好きなようにさせることにした。俺だってこの
手紙は知らなかったしクリスティーナが戻るまでアリオンには」
「 ...いや」
アリオンはギーガとサファイアが嬉しくて言葉に詰まって思うように声が出せない。
「アリオン...俺もユリウスも憶測だけでしかない」
「話すよ、いや...聴いて欲しい...ダンタリオンはいつ?」
「ゼレンカが公演旅行に訪れた日。それまで知らなかった」
「 ...ああ...それで僕から離れて楽器に」
「それはまた違う。なあ?ゼレンカは『シシィ』社長と自分と
母親を助けたクリスティーナが同一人物だと知ってただろ?」
「そんな話はしなかった」
「そうか...ダンタリオンはゼレンカを看てたから.自分とアリオンが
一緒にいるところを見られたらやばいと思って引っ込んだ。でも
何故ゼレンカのアリオン急接近?と訝しく」
「 ...そうか」
「それはアリオンを突かなかったダンタリオンが悪い
勿論ダンタリオンは俺たちから手酷い私刑を受けた」
「!」
「『クワロフス』の掟。彼の怠慢なければ
事態はこんなに...拡大なんてしていない」
「 ...そんな、僕のせいでまたダンタリオンに、」
「アリオンはそう言えない。ダンタリオンに相談していれば..BGは
そのためにもある。秘密共有もBG。だが.それを言ってなかった
俺も悪かった...尤もアリオンが秘密とかするなんて想定外で」
「 ...サファイア...うん」
「と言うことでこうなった過去はそれで
いい。ただ、きっちり知りたいんだよ」
...話す。
いつだったかゼレンカとナラのレッスンを観に行った。挨拶程度...僕はゼレンカと距離を持っていたからすっかり他人だった。
その後、社内の廊下で彼女に偶然会った。僕の結婚を社内の噂で耳にしたと言って結婚の経緯を訊かれて、ゼレンカに関係ない自分の大切な世界に土足で踏み込まれる気がして怒鳴りそうになった。
僕は...恐らく凄く酷い嫌悪の顔をした。場を去ろうとした。
ゼレンカは僕を引き留め、拉致されていた3ヶ月間辛かったと話し始めて...振り切れなかった。
振り切ってクリスティーナに話すべきだった...。
「いいって、それで?」
立ち話してられなくなって空レッスン室に...ふたりだ。
自分と母親を拉致、まだ父親を拉致している『シシィ』社長と幹部連中を刑事告発しようと思っていると言い...社長にそんな幹部連中はいらないはず、だけど、立場上、そんな幹部連中を抜き取れないだから自分が公に摘発すれば社長は喜んで会社はよくなると...。
善か悪かの短絡判断を企業がすると思えないしクリスティーナ
は仕事の話はしないが、クリスティーナは考えがあると思った。
ただ彼女がそんなことしないように僕が止められないかと思った。
そのときは、僕にはよくわからないな。と言って帰ろうとした。
早く帰ってその話をしたかった。直ぐ電話したかった。しかし、
ゼレンカに釘を打たれて動けなくなった。
「釘?」
いや...今だからそう...そのときは途端に取り込まれた。
僕が昔と違ってヴァイオリン以外の話をしない、結婚もそれ以外も彼女の望む昔の僕ではなかったから、僕が話を聴いただけで帰ろうとしたから怒ったと思う。
ゼレンカは突然、拉致されてた3ヵ月、酷い目に遭って寂しかった
貴方は何をしていた?幸せに毎日楽しく過ごして?等言い出して。
「ああ.......女難。お前の性格じゃ即刻拉致られるわな」
その話の途中でキスされて驚いて振り払ったが、貴方が私にキスして欲しがったからと言われて...既成事実になったことに混乱した。
しかし、クリスティーナにその全てを言うつもりだった。
わかってくれると信じた、クリスティーナは僕の味方だ。
「助けて欲しかったんだもんナ、ゼレンカから」
「サファイア........うん」
「それでその後はそれを餌に引っ張られた」
餌...そうだ.......ああ、餌か...うん。
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