小林宏FA阪神移籍で気になる人的補償対象

　ロッテをFA宣言した小林宏の阪神移籍が内定しました。今のところ公示が出たかどうかは確認できていませんが、まさかここからどんでん返しはあり得ないでしょう。
　正直なところ、昨年の段階で阪神が名乗りを上げた時はバカじゃなかろかと思ったのですが、事ここに至って冷静に考えてみると、その後のプロセスとしては特におかしなところはないんですよね。
　FA宣言してMLBを目指してみたものの、望むような条件でのオファーがなかったため、国内とはいえ早くから獲得の意思を示していた唯一の球団に移籍、というのに、責められるべき点があるとは思えません。
　「マイナーでも渡米すべきだった」という意見もあるでしょうし、私も全くそう思わないではありませんが、マイナー契約を受け入れるかどうかは本人次第で、周りがとやかく言う話でもありません。
　というわけで、本来の希望ではないとはいえ、ある意味では落ち着くところに落ち着いた小林宏。
　ご存知「アニキ」「ジョニキ」（城島）に続いて、某掲示板スレッドではさっそく「ロリキ」または「ロリニキ」と呼ばれているようです（そのうちどっちかに統一されるでしょう）。
　ただ、ここへ来て気になる話が入ってきました。

■　阪神、小林宏の人的補償…藤井彰らも対象（サンスポ・2011年1月24日）

　見出しだけでは分かりにくいかも知れませんが、FAで阪神に移籍したはずの藤井も、プロテクトしなければ人的保障で獲られる可能性もある、ということです。
　同様に、トレードで獲得した新井良太、加藤康介も、人的保障の選択対象から外したければ、プロテクトしなければならないとのことです。
　なぜそうなったのか？ポイントはフリーエージェント規約にあります。
　野球協約第196条（フリーエージェント）では、「この組織にフリーエージェント制度を設け、その詳細は『フリーエージェント規約』として別に定める。」としています（野球協約・PDF形式・2011年1月25日閲覧）。
　なので、FA制度の詳細については協約とは別のフリーエージェント規約を見る必要があります。で、規約から人的保障に関する条文を探すと、第１０条（球団の補償）４(1)アにこう定めてあります。
「旧球団が，選手による補償を求める場合は，獲得球団が保有する支配下選手のうち，外国人選手及び獲得球団が任意に定めた２８名を除いた選手名簿から旧球団が当該ＦＡ宣言選手１名につき各１名を選び，獲得することができる。」（以下略）（フリーエージェント規約・PDF形式・2011年1月25日閲覧）
　このうち、「獲得球団が任意に定めた２８名を除いた」というのがプロテクトの根拠になります。この定めに従い、補償の発生するFA選手を獲得した球団は、プロテクトする28人を決めることになります。
　ところが、この条文には、いつの時点での支配下選手かが明記されていません。オフのこの時期は選手の移動が激しいわけで、どの時点かによって選手名簿に載せる選手は少なからず変わります。
　もっとも、条文の内容を考えれば、「支配下選手」というのが、当該のFA選手を獲得した時点で支配下登録していた選手を指す、と考えるのがもっとも自然だろうとは思います。
　というわけで、阪神側の問い合わせに対し、小林宏の移籍時点で阪神に在籍していた藤井・新井良・加藤の3選手も人的補償として選ばれる対象になる、という結論になったのでしょう。
　確かに、社会通念上はこれで良かろうとは思います。ただ、先ほど「獲得した時点」と書きましたが、これが選手契約締結時点か、公示が出て移籍手続きが完了した時点なのか、というのは微妙です。
　それだけに、今後は規約自体に、プロテクトを要する28名はいつの時点の支配下選手から選ぶべきなのか、明記する方が良いように思われます。
　もっとも、マリーンズの支配下選手枠が残り2つしか空いていないのを考えれば、こと今回に関する限り、マリーンズが人的補償を選択しない可能性も十分考えられますが……