【RINGO STARR】
ビートルズが大好きな方にとって、その理由はひとつでは語りつく
せないことでしょう。わたしもそうです。大好きな理由のひとつは、
「なんといってもオリジナルの曲がいいから」(もちろんカヴァーも
よいのですが)。では「曲がいい」とはどういうことを言っているの
でしょうか。それは、いろいろな曲想・アイディアに富んでいること
に尽きるでしょう。こう結んでしまうと、今回のおハナシはお開きに
なってしまいます。そこで視点を変えて「パフォーマンスのよさ」を
取り上げます。彼らのパフォーマンスを支えている要素はいろいろと
ありますが、特に「リンゴ・スターのドラミング」にフォーカスして
みたいと思います。
当初、ビートルズのドラマーは、ピート・ベストでした。その後の
いろいろな経緯は省略しますが、ジョン・ポール・ジョージの3人は
リンゴにグループへの参加を依頼したのです。この点がすごいですね。
依頼した理由は推測の域を超えませんが、3人にとってリンゴは自分
たちにとって必要な存在だったのです。しかし、高校当時にわたしの
友人がリンゴについてこのように言いました。
リンゴのドラムって単調だよね。
何てことを言うのでしょう。そこで友人と喧嘩になりました。
何言ってるんだよ。ビートルズの曲を全部聴いたのかい。リンゴの
ドラムがあるから「ビートルズ」なんだよ。
ずいぶんと背伸びしたことを言ったものです。でもそうなのです。
3人がリンゴに参加を依頼した理由がこのあたりにあるようにも思え
ます。しかし、デビュー当初は苦労しました。そうです。ジョージ・
マーティン氏にその力量を認めてもらえず、‘Love Me Do’‘P.S. I
Love You’の収録では、セッション・ドラマーのアンディ・ホワイト
氏が起用されたのです。
リンゴのドラムミングの特徴として、「正規のタイミング」に対し
少しだけ遅れてキットを叩く傾向にあります。悪く言えば「ルーズな
リズム取り」です。マーティン氏が、なぜリンゴをはずしてまでして
‘Love Me Do’を録り直したのか、真相を確認していませんが、代役
として起用されたホワイト氏のドラミングを聴くと、その理由がある
程度推測できます。その時のマーティン氏は、リンゴのドラミングの
傾向を「問題」と見做し、解決を図ったのです。
リンゴは後にコメントしています。
ボクにはひとつだけ「ルール」があるんだ。それはね、歌い手と
手をつなぐことなんだ。バディ・リッチやジンジャー・ベイカー
そして他の「大物」はとても速くビートするんだけど、ボクには
複雑でせわしなく感じるんだよ。ボクは、安定したドラミングを
するのがスキだからね。
リンゴのドラミングの真の特徴を換言すれば、「タメのよさ」です。
上に述べたような「ルーズなリズム取り」ということではありません。
ベースボールなどで、よく「球持ちのよい投手」と表現されますが、
それに近いものがあります。常に歌い手と手をつなぐことを心がけて
いるため、あの独特なグルーブ感が生まれるのです。それを証明する
曲が‘Please Please Me’であり‘She Loves You ’であり、そして
‘I Want To Hold Your Hand’なのです。
‘Please Please Me’。「リハーサル」という条件を差し引いても
“ANTHOLOGY 1 ”でホワイト氏が演奏している音源と比べ、リンゴの
演奏するリリース盤のほうが「ビートルズ」になっていると思いませ
んか。マーティン氏がこの曲の収録を終えた瞬間に
君たちは今、№1のレコードを作り出したんだ。
とコメントした理由がこの点にも関係していると思われます。
‘She Loves You ’。リンゴのフロア・タムの連打で、曲は始まり
ます。そして、まるで疾風のように駆け抜けるドラミングが展開され
ます。なんという「一体感」でしょう。このドラミングで、「ビート
ルズ」は確立されました。
‘I Want To Hold Your Hand ’。‘She Loves You’と同じように
リンゴは、ヴァースAでシンバルを連打しました。最初にこの曲を耳
にした時、みなさまもびっくりされたのではないでしょうか。しかし
それは「騒々しくない」のです。それでありながら、サウンドをとて
も「ぶ厚く」しています。ヴァースの最後で“I want to hold your
hand”と歌われる箇所では、一転してスネアを叩き、インパクト感を
出しています。それはドラムを目立たせるためのものではなく、歌い
手をサポートするためのものです。驚くべきは、ヴァースB。“And
when I touch you”の箇所では「スネアとクローズド・ハイ・ハット
の組合せ」で聴き手をハッとさせます。緩急の「緩」、動静の「静」
により、曲をドラマチックにしています。そして“I can't hide”の
箇所で「スネア+シンバル+バスドラの組合せ」でパワー全開。一気
にクライマックスに持っていきます。なんという表現力でしょう。
「歌い手と手をつなぐこと」を常に意識しているからこそ、このよ
うな一体感が生み出されるのですね。リンゴ・スターはまさしくプロ
フェッショナルのドラマーであり、彼のドラミングなくしてはビート
ルズを語ることはできないと思います。
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リンゴでしかできない名演はたくさんあります。
またいろいろと語りたいことですね。
本当におっしゃる通りです。
「オンリー・リンゴ」の名演って
あれとこれとそれと・・・って数えられましぇん♪
ジョンとポール(+マーティン氏)で曲を練り上げている間
待っていることが多かったリンゴ。
そして、4人が揃い収録!・・・の段階で
見事なアンサンブルを披露し
グループを「支えながら」牽引しているのだ
と思いました。