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認知症の妻に会いたいと言う85歳患者 コロナで面会できないまま死期が…最後の願いをかなえるには

2022-02-14 15:30:00 | 日記
下記の記事はヨミドクター様のホームページからお借りして紹介します。(コピー)です。

85歳、男性。心不全と腎不全を患い、当院に5年前から受診して、内服治療を行い経過観察していた。妻、長男夫婦と暮らしていたが、妻は半年ほど前から認知症が進み、施設に入居した。患者は毎日、手料理を持参し、施設の妻を訪問することが日課となっていた。患者は経済的に自立しており、良い意味で依存的ではない父と子の関係であった。
ある日、肺炎を併発して、当院のHCU(High care unit:高度治療室と呼ばれ、集中治療室と一般病棟の中間に位置する)に入院した。患者は「息が吸えない。苦しい」と訴え、冷や汗をかいて下肢がむくみ、苦痛で顔をゆがめていた。NPPV(気管挿管や気管切開を行わない換気法の総称)を装着して、苦痛を軽減するために傾眠できるような薬剤を投与。呼吸回数は1分間に30回以上、NPPVの酸素濃度は100%となっていても、血中のSpO2(酸素飽和度)は88~90%と低かった。 看護師は以前から、患者に「心不全が急激に悪化した場合には、口から管を入れると(挿管して人工呼吸器を装着すると)話すことができない状態になる」「その場合、腎臓の状態も限界なので体が耐えられず、管が抜けずに気管切開に移行したり、最悪の場合は命を落としたりする場合もある」と伝えていた。その際、患者は「妻のために何でもしたい」と言い、その頃は妻も「頑張ってほしい」と言っていた。挿管して人工呼吸器を装着するイメージについても、看護師から写真や動画などを用いて具体的に説明されていた。
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主治医は、「肺の状態が限界に近づいており、挿管しても回復は極めて難しい」と考えていた。患者は、「こんなに苦しいなら、管を入れて、何でもやってくれ。治してほしい」と話し、入院してからは「妻に 鮎
あゆ
 の甘露煮を持って行ってあげたい」としきりに言っていた。呼吸器を装着しても回復が難しいなかで、「もしかしたらそのまま亡くなるかもしれない」とも伝えられたが、患者は「それでも一回はやってほしい」と言った。主治医は、状況を話すため、家族に来院を頼んだが、多忙ということで電話での話になった。長男は主治医の話を聞いて、「人工呼吸器をつけても治らないなら、苦しくないようにしてほしい」と言っている。
いったい、どうしたらよいのか。HCUの看護師から、急性・重症患者看護専門看護師(以下、専門看護師)に相談があった。

患者は人工呼吸器を希望 それでは「本当の望み」につながらず…
患者の「治療してほしい」という明確な意向と、厳しい見通しとの間で悩み、さらにコロナ禍での他施設との協働に苦慮したケースとして、専門看護師が話してくれました。
HCUのスタッフたちは、「本人はずっと『どんな治療でもしたい』と言っていて、今回も明確にそう話している。できるだけ意向に沿いたい。でも、呼吸器を装着したまま亡くなる可能性も高いので、どうしていいかわからない」と悩んでいたそうです。この専門看護師も、患者さんの身体状況とデータを見て、「非常に厳しい」とまず思ったそうです。「挿管したら絶対に外せない。気管切開になる可能性もある。しかし、妻への思いが強く、『治したい』という本人の気持ちは尊重したい。医療者の考えだけで進めてはいけない。本人の意思を尊重しながら、それを息子さんとも共有していかないといけない。患者さんの意思を尊重するにはどうしたらよいか、状況を整理しないと感情論に走ってしまう」と思ったそうです。
専門看護師は、今後どうアプローチしていけばよいか、いま一度、チームでの話し合いをする場を作りました。本人は何とか治療してほしいと言っているが、「その先に患者さんが求めているもの」について話し合ったそうです。主治医は、「治って妻に会いたい、妻に会いに行く、というところに本人のゴールがある。それは治療して回復できるという前提で考えられている」と言いました。しかし、患者さんが意向として伝えている治療、つまり人工呼吸器を装着することでは、患者さんが最終的に望んでいることの実現にはつながらない状況でした。そのことを患者さんが十分理解しているかどうか……。そこで、チームとしては、患者さんがいま望むことは何なのか、現状をどのように捉えているかを確かめ、患者さんが目指すゴールに向けてできることを考えていくことになりました。
妻との“再会” その3日後に…

看護師は、患者さんのベッドサイドに行き、自分の病気をどのように受け止めているのか、いま何がしたいのか、をたずねていきました。患者さんは、「妻には自分が一番の支えだから、元気になりたい。苦しくて、日に日に悪くなっているのはわかっている、もしかしたら……とも考えている。でも妻に会いたい」と話したそうです。
その後、何とか会える形を考えようと、まず妻の入居している高齢者施設へ問い合わせました。患者さんの厳しい状況を伝え、「最後に会わせたいので、奥さんに車いすでこちらの病院まで来てもらえないか」とお願いしました。電話などではなく、直接、二人が会える方策を考えていました。しかし、新型コロナウイルスが 蔓延
まんえん
 した第2波の真っただ中で、施設側からは「難しい」という返事でありました。その頃は、オンラインでの面会にも、今ほど病院も施設も慣れていませんでした。
時間は迫っています。患者さんは話すこともつらい状況になり、鎮静薬で傾眠傾向にあることが多くなり、日々、血圧の低下や尿量の減少も表れてきました。
長男に改めて相談したところ、初めは「もう年もとってるし、会っても、きっとおふくろはわかんないだろうし、もういいんじゃないか。ずっと仲良くしていたんだから、もういいんじゃないか」と言っていました。しかし看護師が、「奥さんに会いたいとはっきりと言っていて、何とかその意思をかなえたい」と伝えると、「わかりました。ぼくが病院に行って撮影します」。施設側は感染対策のため、面会制限があり、スタッフが代わりに撮影することで話はまとまりました。
施設では、ニコニコした笑顔の妻の姿が撮影されました。目の前に患者さんがいるかのようでした。それを息子さんが病院に持参し、感染対策を整えたうえで病室に入り、患者さんに見せました。患者さんは意識が少し 朦朧
もうろう
 としていましたが、画面に映った妻の姿に手を振っていました。息子さんから「母さん、元気だったよ」と伝えられました。患者さんは、その3日後に亡くなったそうです。
患者さんの意向の背後にある「大切なこと」「価値」
専門看護師によれば、入院当初は「鮎の甘露煮を食べさせたい」と繰り返し言っていたのが、映像を通しての再会後、そう言うことはなくなりました。そして、「手を振ってたよ。わしも手を振った。会えてよかった……」と話していたそうです。
このケースでは、コロナ禍での面会制限が、患者さんの意思決定に大きく影響したと言えます。専門看護師は、通常なら、医師から家族に説明した段階で、「患者さんと家族がよく話をしているのか」「そのうえで、状況をどう受け止めているのか」を聞くよう心掛けているそうです。しかし今回は、それがかないませんでした。そういう中でも「思い込みをせず、患者さんが望んでいることを尊重したい。家族の考えも大事ですが、やはりそこにいる患者さんを大切に、その希望をくみ取り、つなげることを目指しています」と語ってくれました。
あらかじめ、起こりうることを考えておく、話し合っておくことは重要です。また、その時の患者さんの意思を大切に扱うことも重要です。その一方、その想定への捉え方は、患者さんと医療者では必ずしも同じではありません。その状況が実際に身に迫って初めて感じる苦しさ、怖さ、不安もあります。事前の意向の尊重は大切ですが、改めて患者さんの意向の背後にある「大切なこと」「価値」を、きちんと見極めることが大事だと思いました。(鶴若麻理 聖路加国際大教授)


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