理系母の療育と自閉症児の成長の記録

3歳で自閉症スペクトラムと診断された息子。約3年でDQ57→97。14歳で診断が外れ,高校受験を経て通常学級デビュー。

支援級という選択1

2018-11-29 16:50:20 | 発達障害

息子は3歳半から就学までの間にDQだけみれば57から97と標準近くにまで伸びたのですが,小学校は特別支援級を選択しました。

そして4年生まで過ごしてみて,支援級を選択してよかったと私も息子も思っています。

 

今回はその支援級に入るまでの経緯と,よかったと思える理由について述べていこうと思います。

 

 

 

********************************************************************************************************************

 

年長の年の9月のはじめに,市の教育委員会との就学相談がありました。

小学校で息子の通うクラスをどうするのがいいのか,話し合うためのものです。

 

自由勝手な息子の性格上,普通級はいろいろと難しいように思いましたが,では特別支援級があっているのかというと,なんとも判断し難いところがありました。

というのも,以前,息子と支援学校を見学に行った時に,その場を息子がとても嫌がったことがあったからです。自分のことはさておいて,障害のある子どもと一緒にいるのを嫌がっているようでした。

 

直近の発達検査は田中ビネーでIQ75。

その検査は試験官とのやりとりがかち合わずに点を落としているようなところがあったので,実際にはもうちょっとIQがあるのではないかとも思いましたが,そういうのも含めての検査結果ですので,教育委員会には正直に結果を伝えました。

 

教育委員会の担当者からは保護者の希望も聞かれましたが,正直私たちにも判断がつかない,と答えました。普通級と支援級のあいだをとって,通級クラス(席は普通級におき,週1日程度その子にあった特別な授業を通級クラスに通って受けられる)はどうかと相談しましたが,通級クラスはまずは普通級に入ってしばらくしてからでないと受けられないと言われました。

 

その2週間後,市で指定された支援級に体験入学に行き,それからまもなくして教育委員会から,専門家との話し合いの結果,支援級を奨めるとの連絡がありました。

 

周りでは,教育委員会に支援級を奨められたら絶対に支援級に行かなくてはならなくなるからと,普通級を希望する親御さんのなかにはあえて就学相談を受けない人も多くいました。

 

しかし私は,息子を絶対に普通級に通わせたいわけではありませんでした。

私にとって大事なのは,どの環境が息子が最も成長できるか,です。

もちろん,普通級に入って普通に授業を受けて普通に友達と遊べるのならそれに越したことはありません。

でも息子はそうではありません。

まず,授業中,ちゃんと着席できるのか,そして先生の話をちゃんと聞いて指示に従えるのか,とりあえず先生に怒られない程度の行動ができたとしても,そこで何かを学べるのか?

息子は,普通の子であれば周りから吸収して自然と学ぶようなことがとにかく難しい子です。DQが伸びたのも,息子に合わせた療育や保育園の先生の特別な配慮があってこそのことで,普通級に入ったら学校にいる時間のほとんどを先生に怒られるかほっておかれて過ごす様子が容易に想像できました。学校に行ってから帰るまでの1日6時間以上,週5日,それを6年間,その膨大な時間をただ耐えて過ごしているだけでは何も成長できません。

それよりはいくら勉強が遅れても,手厚く支援してもらって,少しずつでもいいから確実に成長ができる方がよいのではないか,と私は考えるようになりました。

 

その一方で,支援級を選択したら,息子は嫌がらないだろうかという心配はありました。

 

当時,私の住む市では,学区外の学校でも希望すれば通うことができたので,無理なく通学できる範囲の学校の支援級を2つ見学に行きました。

どちらもとても雰囲気がよかったのですが,そのうちの1校は落ち着いたやさしい上級生が多く,一見すると何の障害があるのかわからない子ばかりでした。しかも勉強もしっかりしていて,得意科目は普通級に受けに行ける「交流」という制度もありました。実際,上級生のなかには支援級から普通級に移った子も何人かいます。

 

結局,その支援級がある学校に就学希望を提出し,その希望が通ってそのクラスに入学することになりました。

 

この学校を選ぶまでの過程は,息子とは相談もせず,意見も一切聞きませんでした。親でもこれだけ悩むようなことを,なんの経験もなく見通しもない5〜6歳の子に判断ができるわけもなく,ほぼ私の独断で決めました(夫には確認程度に学校見学に付き合ってもらい,結論とその理由を説明して同意を得ました)。

そのかわり,息子が学校を嫌がったら,その時は柔軟に対応して別の最適な環境を探したり作ったりしていこうと,かなりの覚悟を決めていました。

 

そんなふうに,母としてはかなり気負っていたのですが,入学の1カ月ほど前,嬉しい出来事がありました。その支援級の担任の先生のはからいで,体験入学としてクラスに入ることができたのです。しかも先生はわざわざお楽しみ会の日を選んでくれたので,やさしいお兄さんお姉さんに囲まれてワイワイ楽しく過ごすことができ,息子も学校に対する明るいイメージがぐっと膨らんだようでした。

 

支援級という選択2」に続く。

 


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格安会議室で就学に向けた自主勉強会2

2018-10-05 16:11:21 | 発達障害

格安会議室で就学に向けた自主勉強会の続き

 

さて,なんとか場所を確保できたので,保育園の終わる16時ごろから公民館の会議室を借りて,保育園のお友達と一緒に勉強会を始めました。

 

この勉強会の目的は,学力の向上ではなく,机に向かってみんなで勉強するといった,就学したら必須になってくる課題に慣れることです。

 

勉強会の内容は,鉛筆を使うものでは市販されている学研やくもんの簡単なドリルやネットの無料学習プリント,ハサミを使った切り絵や貼り絵,カルタや絵合わせカードなどの知育・療育ゲームなど,10〜20分で終わる課題を1~3個,全体で30分〜1時間くらいやりました。そして勉強会の最初には必ず今日やる課題を黒板に書いて説明し(事前に説明することで心の準備をさせる),会の終わりにはみんなで掃除をしました。

 

また,徳島県の「発達障害早期介入・支援ハンドブック 平成21年2月」に紹介されていてる鳴門教育大学の「就学前指導教室グループ学習指導案」(38ページ)と,このサイトを教えてくれた義母の助言を参考に,プリント配布などの当番を設けたり,勝ち負けに慣れるためゲームは個人戦ではなくチーム戦(親子グループなど)にする,机を二人で運ぶ(共同作業に慣れる),掃除の当番(ほうき,ちりとり,ぞうきん)の当番表を作り,自分がやった当番をシールにつけるなどして,こだわりで同じ当番を連続してやりたがった場合などにこの前もやったのがわかるようにする,などの工夫をしました。

 

で,息子はというと,課題によっては気が乗らなかったり,好き勝手なことをしようとしたりと,完璧にできたためしはありませんでしたが,この勉強会の目的である「少しずつ慣れる」,という点では目的を達成できたと思います。

 

また,仲がいいお友達同士の限られた人数での集まりで,勉強会後は近所の中華料理店で一緒にご飯を食べるというおいしい終わり方をしていたため,息子はこの勉強会を楽しみにしていたようです。

 

勉強会は,お友達と時間の都合のつく範囲で無理ない程度にやっていたため,毎週できるときもあれば,月1程度のときもありましたが,小学校に入るまで1年以上続けました。

 

最終的に息子は普通級でなく支援級を選択したのですが,小学校に通い始めてパニックになったり生活が荒れるようなことは特になく(非常によくあるそうです),就学への移行はスムーズだったと思います。

 

普通級でなく支援級を選択した理由については,次回,「支援級という選択」で述べたいと思います。


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格安会議室で就学に向けた自主勉強会

2018-10-05 15:10:44 | 発達障害

8カ月ぶりの更新です。

仕事に追われ,執筆時間が取れずすみません。

 

息子が保育園の年中クラスの終わりにさしかかったころのことです。

3歳半の発達検査でDQ57だった息子も,家庭での療育がきいたのか2年弱でDQ88にまではなっていたのですが,小学校入学という一大イベントがだんだんと迫ってきていることを意識して,不安が募るようになっていました。

 

小学校で普通級に入る目安として,とある発達相談で言われたのが「DQ75」。

実年齢が6歳で4歳相当,2年遅れだと授業は厳しいだろう,というお話でした。

(あくまで目安としてうかがいました。お子様の性格にもよりますし,専門家によっても意見は異なります)

 

DQだけみればその値はクリアしていたものの,とにかく自分勝手で自由気ままな息子のこと,保育園でさえたびたび集団行動からはずれ,加配の先生にサポートしてもらっている状態なのに,小学校に入って着席して45分間,じっと先生の話を聞いていられるものだろうか。

 

周りの軽度の発達障害のある子の中には,受給者証を使って塾のようなところに通い,就学に向けた療育・勉強をしている子もいましたが,そういうところに行くには,その1時間の授業のために仕事を半日休まなければならず,いろいろと効率が悪いと判断しました。

 

かといって,これまでの家庭の療育は,とことん息子に合わせたものだったので,集団の中で周りに合わせたり,やりたくない課題でも指示されたらやる,といった能力を伸ばすことが難しいように思えました。

 

ではどうやったらこの課題をクリアできるか。

 

幸いにも息子の保育園には,同じクラスにやはり同じような発達の問題を持つ仲のいいお友達がいたので,その子と一緒に保育園が終わってから,どこか家とは違った場所で勉強会をできないかと考えました。

塾より優れたことができないとしても,保育園帰りにちょこっと勉強できたら頻度で多くをカバーできます。

 

そこで私は家の近くに貸し会議室がないか調べました。

「貸し会議室」と自分の住んでいる市の名前をキーワードにネットで検索すると,あるにはあったのですが,家や保育園から距離が数kmあるうえに,料金も1時間数千円と,勉強会を連続して行うには現実的ではありませんでした。

 

そんな都合のいい場所はないか….とあきらめかけたとき,ふとひらめきました。

 

ある。それも近所に。値段も調べると2時間210円〜と破格の値段です。

 

そう,それは地元の公民館。

 

市の公民館は,息子の通う保育園の隣と,保育園から家までの帰り道に計2カ所あり,どちらにも会議室がありました。

 

私は次の日,帰り道にある公民館を訪れ,会議室を使ってみたいので,まずは部屋を見せて欲しいとお願いしました。

 

その公民館は会議室が3部屋あり,どの部屋も黒板,ホワイトボード,机,椅子といった学校のような設備がある上に,気を散らすような掲示物などが何もなく,子どもの勉強スペースとして理想的でした。

 

「今後,ときどきこの部屋を使いたいのですが,どのような手続きをすればよろしいでしょうか?」。私は案内をしてくれた館長さんにたずねました。

 

すると予想外の答えが。

 

「公民館の部屋は個人には貸せなくて,10人以上の団体でないといけないんです」。

 

10人……周りに3人だったら発達障害のお友達がいるけど,10人はちょっと,どうやっても……無理……

 

絶句していた私をみかねたのか,館長さんがしばらくしてからこんな助言をくれました。

 

「団体は,10人中9人が市内の人だったらよいので,ご自身とご主人,お友達のご夫婦,そしておじいさんおばあさんも入れてなんとか10人にして,団体の名前をつけてもらえば,(定期使用ではない)臨時使用として申し込めますよ。会議室を使うのはその全員でなくても使えます」。

 

そんな手があったとは! 友達夫婦,じじばば入れれば何とか10人はクリアできる!

 

公民館の臨時使用申込書は団体名とその構成員の人数,活動内容を書くだけだったので,私はすぐさま友達と自分の両親から了承をもらい,自分たちに適当な団体名をつけ,活動内容は子どもたちの学習支援ということにして,会議室を予約しました。

 

 

格安会議室で就学に向けた自主勉強会2に続く


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療育に役立った絵本2

2018-01-26 12:48:15 | 発達障害

療育に役立った絵本1」の続き

 

3. 自閉症児の苦手な考え方を変えるもの

・概念理解を助ける

どうぶついろいろかくれんぼ」ほか,型抜き絵本シリーズ,いしかわこうじ作,ポプラ社。

自閉症の子どもは一般に,個々の物の名前(トラ,タクシー,など)はきっちり覚えられても,それらを含むグループ名(動物,乗り物)のような概念の理解が苦手とされています。息子は,例えば様々な機種の飛行機を「ひこーき」として理解していたので,グループ概念のすべてが理解できていない,というわけではなさそうでしたが,4歳3カ月の時点で「動物はどれ?」の質問に対して適切な絵カードを答えられず,苦手はありそうでした。そこで,利用したのがこのシリーズ。

この絵本シリーズは,最初にページ一面に色や模様と描かれ,簡単なヒントとともに「なにかな?」「だれかな?」と問いかけがあり,ページをめくると切り取られた部分が輪郭となって答えが浮かび上がってくる仕組みになっています。普通に読むだけでも楽しめる本なのですが,例えば「のりものいろいろかくれんぼ」だったら,出題のページで「こののりものなんだろう?」とか,「次ののりものは何かな?」など,「のりもの」という言葉を強調して語りかけるようにしました。また,単純な色彩構成になっているので,「この赤いの何かな〜」など,色を強調して話しかけて色を教えるのにも使えます。

このシリーズは,息子が発達の問題を指摘される3歳以前から使っており,言語理解がそれほど進んでいない子どもでも理解できる,クイズ形式で次々出題されるので子どもが飽きない,といったメリットもあるので,まだ絵本の読み聞かせに慣れていないお子様にもおすすめです。

 

・人の視点に立って考える

どうぞのいす」,香山美子作,ひさかたチャイルド。(4歳4カ月〜)

 

自閉症児は一般に,心の理論(他者の感情や考えを自然と感じ取る能力のようなもの)の発達に問題があり,人の視点に立って物事を考えるのが苦手とされています。

たとえばそれを表す例として有名な「サリーとアン課題」と呼ばれるものがあります。サリーが部屋に隠したものを,サリーがいないときにアンが別の場所に隠してしまうところを子どもに見せてから,そのあとサリーがどこを探すかを子どもに推測させる問題で,自閉症児はサリーの立場に立って考えられず,アンの隠した場所を答えてしまう傾向があるそうです。

息子もそんな傾向を感じさせられることがありました。4歳ごろのことです。息子が祖父母と電話で話しているとき,自分の目の前にある飛行機のポスターを指差して「ひこーき!ひこーき!」と連呼。受話器の向こうにいる相手がこちらの様子が見えていないことがわかっておらず,自分が見えているもの=相手が見えているもの,と思っているようでした。

なんとかせねばと思い,これに関連したストーリーの絵本として「どうぞのいす」を教材に使いました。

ストーリーは,どんぐりの入ったかごを運ぶのに疲れたロバさんが,イスの上にかごをおいて昼寝をしていると,次々に動物がやってきてカゴの中身を入れ替えてしまい,目覚めたロバさんがカゴの中身にびっくりするというお話。

息子にとっての問題は,ロバさんがびっくりした理由を理解できるかという点です。

私はこの話を息子に読み聞かせるときに,ただ本文を読むだけでなく,各ページで動物が登場するたびに,「でもロバさんはまだ寝てるね〜。カゴの中身が変わっちゃったのにロバさん気づくかな?」と,ロバさんの視点で一緒に考える会話を入れました。

もちろん,この絵本1冊だけで他者の視点に立てるようになる,というものではありませんが,これはあくまでシチュエーション練習の教材として使い,日常でも同じように母の視点,父の視点を息子に伝えたり(母さんにはわからない,など),息子に考えさせる(父さんはどう思うかな?,など)練習をしました。

 

 

・物の見方や考え方は1通りではない

ねずみくんのチョッキ」シリーズ,なかえよしを作,ポプラ社。(4歳半くらい〜)

りんごかもしれない」,ヨシタケシンスケ,ブロンズ新社。(5歳半くらい〜)

 

上記の課題と関連しますが,見えているものや知っているものだけでなく,人の価値観や考え方は,みな自分とは同じではないし,正解が1つではないこともある,という当たり前のことを,健常児の多くは成長する過程で自然と学んでいくのかもしれませんが,息子の場合はそれを丁寧に教えていく必要がありました。

息子はこだわりが強く,自分の考えに固執する傾向があったから,という理由もありますが,私自身(自閉傾向高め),20代くらいまでは人の考えを受け入れるのが苦手で,自分の考えを人に押し付けていろいろと周りに迷惑をかけてしまったという反省があり,小さいうちに教えて欲しかったなあという思いもあったからです。

そういった感覚を教える導入編として,「ねずみくんのチョッキ」シリーズはとても重宝しました。ねずみくんの赤いチョッキ。ねずみくんにはぴったりだけど,ぞうさんは体が大きすぎて着られない……。同じチョッキが着る人によって違った感覚を生むことが,簡単な言葉と一目でわかるシンプルなイラストで書かれていて,想像する力が弱い子どもでも理解しやすい内容になっています。

ただ,自閉症児は「大きい・小さい」のように,同じ物をさしていても比べる物によって変わってしまう言葉(関係語)の習得が遅れる傾向があるそうなので,これらの本をお子様に読み聞かせるのであれば,そういった関係語がしっかり定着してからの方がいいかもしれません。

 

もう一方の「りんごかもしれない」は,1つのりんごを題材に,主人公のぼくがあれこれ憶測というか妄想するストーリーで,1つのものに対するいろいろな見方・考え方を提供してくれます。突飛な見方もかなり出てきますが,それはそれでおもしろく,この本をまねて親子で「これは〇〇かもしれない〜」とお互いに想像して意見交換をする練習をしたりしました。

これまで紹介してきた本と比べてやや難しめの内容なので,ある程度読み聞かせに慣れてきた子向けです。

 

 

 

・客観的に自分をとらえる,自己分析

ぼくのニセモノをつくるには」,ヨシタケシンスケ,ブロンズ新社。(6歳くらい〜)

人の視点に立つのが苦手な自閉症児は当然ながら,人から自分がどう見えるか,人から見た自分と自分で思っている自分が違うことを理解するのも難しいものがあります。そのために自分を客観的に評価する練習に使ったのがこの一冊。

やりたくないことをやらせるための自分のにせものを作ることにしたぼく。お手伝いロボットを自分そっくりにするために,自己分析して自分の情報をいろいろインプットしていく…というお話。

自分の名前や外見的な特徴,できることできないこと,以外にも,居場所によって役目が違うことや,友達や先生など周りから見たいろんな自分,自分の頭の中の世界など,日頃説明したり一緒に考えたりすることが難しいテーマがたんとつまっていて,それでいておもしろい本です。

各ページを読みながら,「じゃあH(息子)はどうかな〜?」と,一緒に自己分析をしたり,意見交換したりと,当たり前だけど大事なことについていろいろ親子で楽しく学べる教材として使えました。

ただ,これまで紹介したなかでは一番難しい本なので,読み聞かせに慣れ,ある程度対話ができるようになったお子様におすすめします。

 

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ここまで紹介した本は,数としてあまり多くありません。本を探すのにあまり時間がとれなかったのと,息子の興味や理解度にあったものになかなか出会えなかったのが主な理由です。

子どもにあった絵本を自力で探すのは時間がかかって本当に大変なので,もしお子様の課題にあわせてここに書かれた以外のテーマを教えられる絵本を探すのであれば,図書館のスタッフや読み聞かせボランティアのようないろんな絵本を知っている方に,◯歳児向けの〜といったストーリーの本がないか,などと聞いてみると早いかもしれません。

 


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療育に役立った絵本1

2018-01-22 12:58:43 | 発達障害

 

今回は,息子の就学前に療育に使った絵本を紹介したいと思います。

長くなるので2回に分けて紹介していきます。

 

前回のブログ「絵本を聞かない息子が絵本を聞くようになったきっかけ」でも述べましたが,息子がひとたび絵本を聞くようになってからは,本は新しい概念や考え方を伝えるのに非常に強力なツールになりました。

 

それらの絵本を大別すると,

1. 言語理解などに役立つもの

2. ソーシャルスキルトレーニング用

3. 自閉症児の苦手な考え方を変えるもの

に分けられます。

 

それぞれについて,息子に使い始めたおおよその実年齢を記載しておきますが,難しい内容のものもあり,ご自身のお子さんが理解できるかどうかの判断は,過去ブログ「発達検査の略歴」にある息子の発達年齢が参考になるかもしれません。

リンクはできるだけ出版元のを貼りました。

 

 

1. 言語理解などに役立つもの

 

・歌になっている絵本シリーズ

はらぺこあおむしエリック・カール作,偕成社

できるかな? あたまからつまさきまでエリック・カール作,偕成社

月ようびはなにたべるエリック・カール作,偕成社

音楽CDは別売りで,CD エリック・カール絵本うたとして発売されています。

(すべて4歳4カ月〜)

息子は話を聞くことは苦手でしたが,歌は好きで,歌を繰り返し歌うことで歌詞や内容を覚えられるので,本文が歌になっているこれらの絵本を利用しました。

 

このなかでも有名な絵本「はらぺこあおむし」は,ちっぽけなあおむしが蝶に成長するまでのあいだにいろんな食べ物を食べまくる,というストーリーが読んでいて楽しいだけでなく,数や曜日の概念が含まれているので,絵本を見ながら繰り返し歌うことを通じて多くのことを教えられます。

息子ははらぺこあおむしの絵本と歌をすごく気に入ってくれたので,はらぺこあおむしを題材にした数を数えるアプリ(「Counting with the Very Hungry Caterpillar」,現在は配信されていないようです)をipadに入れたところ,かなりはまってやっていました。

「できるかな? あたまからつまさきまで」は,動物の真似をしながら体の各部位を動かす内容なので,リトミックとしても使えます。体の各部位の名称を理解し,指示通りに動かす練習に役立ちました。

「月ようびはなにたべる」はアメリカのわらべうたがベースになっていて,月曜日から日曜日までそれぞれ違った食べ物を食べる,というだけの内容で,ストーリー性はありませんが,曜日を順番に繰り替えし歌うので,各曜日を覚えるのに役立ちました。

 

 

・マグネットになった絵を貼って使うマグネットブック

マグネットブック アニマルワールド,リーバン

(4歳11カ月〜)

この本には特にストーリーはなく,19匹の動物のマグネットと,それらの動物がどこにいるかという説明文があるのみ。場所を説明しながら動物マグネットを貼ることで位置関係を表す言葉(〜の上,〜の前など)を教えらえるのでは,と期待して購入しましたが,息子はあまり動物に興味を示してくれず,ほとんど活用できませんでした。息子の好きな飛行機のシリーズがあったらよかったのですが……。

なお,このマグネットブックは現在1歳の下の子には受けがよく,下の子に言葉を教えるのに利用しています。本文通りでなくても,動物の名前+「走ってる〜」「飛んでちゃった」などの簡単な動詞を教えたりと,マグネットを動かすことでいろいろな使い方ができます。

マグネットブックはずらしたり繰り返し貼ったりすることができる点でシールブックよりずっと便利です。ほかの出版社からもいろんなマグネットブックが出ているので,この本以外にもお子様が興味を持っているジャンルのマグネットブックを使ってみるといいかもしれません。

 

 

2. ソーシャルスキルトレーニング用

こんなとききみならどうする?こんなとききみならどうするどうする?,スギヤマカナヨ作, ひかりのくに

(4歳〜)

服を汚してしまったとき,友だちのクレヨンを折ってしまったとき,など,子どもの日常生活であるあるのトラブルを,ただ○×で正解を教えるのではなく,みんなであれこれ考えて一緒に解決していくストーリー。説教くさくないので息子の食いつきが非常によく,保育園などで社会生活を送る上での問題と対策を自分で考える訓練に使いました。

さらに,このシリーズの話の持っていき方が非常に効果的だったので,イラストの得意な私の父に頼んで息子の苦手な問題を網羅したオリジナルストーリーの絵本を作ってもらい,友達と遊ぶ時のマナーなどを教えました(内容と絵がまったくのパクリなので,家庭内でのみ使っており,これ以上ブログにアップできません。ご了承ください)。

 

こういったソーシャルスキル的なことをあらかじめ理解し,心構えができていると,保育園などで実際にトラブルがあった時に解決がスムーズになり,トラブルが起きて怒られて終わり,という失敗体験を重ねることを減らせます。この療育が効いたのか,息子が保育園の年中年長でほかの友達とトラブルを起こすことはほとんどありませんでした。

 

療育に役立った絵本2」に続きます。


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絵本を聞かない息子が絵本を聞くようになったきっかけ

2017-11-03 22:55:11 | 発達障害

「H(息子)くんはいつも絵本の読み聞かせの時間にみんなと一緒に聞かず,部屋のはじっこで一人でおもちゃで遊んでいるんです。おうちでもっと絵本を読んであげてください」。

保育園の2歳児クラスで担任の先生から言われた言葉です。

息子の自分勝手な行動は家で絵本を読んであげてないせいだというような口ぶりでした。

 

ええ,確かに家で絵本の読み聞かせはしていません。

でもやろうとしてないわけではないんですよ。できないんです。

私が家で絵本を開いても,息子はまったく耳を傾けず,勝手にページをパラパラめくってどこかに走り去ってしまうんです。

本当はそう反論したかったのですが,決め付けたような態度のベテランの年配保育士にくってかかる気力もなく,「はぁ…」としか答えられませんでした。

 

絵本の読み聞かせが発達障害児の療育にかぎらず,子どもの成長にいい理由はわかります。

そこから得られる言葉や教訓,物の考え方が成長の糧になることはいうまでもなく,人の話を聞く姿勢を伸ばすことにもつながります。

いいのはわかる。でもできない。

 

物語を聞かないというと

「では好きなのは図鑑ですか?」

と発達相談で聞かれたことがあります。自閉症の子には愛読書が「図鑑」というタイプの子もいるようですが,息子の場合,図鑑にも対して興味を示しませんでした。

 

私は長い間,息子が絵本を聞かないことに諦めモードになっていました。

でも息子が2歳10カ月のとき,転機が訪れました。

飛行機好きな息子のために,私の友人が飛行機の出てくる絵本をプレゼントしてくれたのです。

有名なリサとガスパールシリーズの「リサ ひこうきにのる」。

主人公のリサが飛行機に乗ってニューヨークに到着するまでのあいだの機内での体験をつづった物語です。

私の仕事の関係で毎月のように飛行機に乗っていた息子にとって,機内でジュースを飲んだり映画を見たりすることが自分の経験と重なったのか,最初から最後まで絵本を聞くことができたうえに,何度も読んでくれとせがむようにまでなりました。

 

この一冊で絵本が楽しいとわかってからはほかの絵本に対するハードルも下がり,飛行機が出てくる「バムとケロのそらのたび」のような絵本だけでなく,いろんなジャンルの絵本も聞けるようになりました。

 

ここで私が学んだのは,息子が絵本を聞かなかったのは興味の偏りももちろんあるけれど,ページから次のページに行くまでのあいだの状況を言葉を聞いてイメージする力が足りなかったせいもあったということです。

私がそれまでに試した絵本では,言葉の遅れもあって,話を聞いて物語の内容を想像することが難しかったのでしょう。

私は,もっと息子の経験に沿った,息子がイメージしやすい絵本を探さず諦めていたことを反省しました。

 

 

実はうちにはこのブログで紹介している小学生の息子のほかに,もう一人,自閉症が疑われる1歳の息子がいます。

この下の子は1歳3カ月ころから発語や言語理解の退行があり,1歳半の時点で話せる言葉がありませんでした。

私は上の息子での反省をふまえ,この1歳の子にとにかく絵本をいろいろ変えて読み聞かせを試みています。図書館で一度に10冊くらい借りてくると,そのほとんどはきちんと聞けませんが,1冊か2冊は聞いてくれるものがあります。

でも,この子は明らかに上の息子よりもレスポンスがよいので,10冊中1〜2冊聞いてくれるのはいいほうなのかもしれません。なかなかいい本に出会えない場合には,こんな方法もあります。

 

1.はしょる

下の子はよく,動画で慣れ親しんでいる「機関車トーマス」の絵本を読んでくれと持ってくるのですが,このシリーズは幼児向けのわりに文章が長く,ちゃんと読んでも最後まで聞けません。なので全部を読まずに「ジェームス,トーマス,なかよし,おしまい!」くらいにはしょってしまったところ,かえって喜び,もっともっととせがむようになりました。

 

2. フォトブックを作る

上の息子に言葉を教えるのにデジカメとipadを使ったことは過去記事(言葉を引き出す 自作コミュニケーションボードとデジカメで語りかけの効果)で述べましたが,この1歳の下の子にも同じ方法を試したところ,幼すぎるのかメカそのものに興味がいってしまって映像を一緒に見てくれません。そこで,おでかけやちょっと変わったイベントがあるごとにフォトブックを作成し,それを絵本代わりに使っています。

うちではしまうまプリントを利用していますが,簡単なレイアウトや文字の追加までできて1冊198円から制作できるので,頻繁にフォトブッックを作っています。

自分で見知ったことが写真で出ているフォトブックは,どれも非常に食いつきがいいです。

 

3. 動画を使う

絵本,絵本といっておいてなんですが,動く絵本と考えれば動画も使えます。

動画は一般に絵本に比べて「よくない」と言われがちですが,それは使いようの問題で,見せっぱなしにせずに親子で一緒に見てインターラクティブに利用すれば役立つこともあります。

うちでは「ピングー」や「ひつじのショーン」など,言葉がなくてもストーリーがわかる単純なクレイアニメを一緒に見ながら,「壊れちゃったね」とか「悲しいね」など簡単な言葉で解説をしています。

動画の方が絵本よりも子どもの食いつきがいいので,絵本だけでは伝えきれないことも教えられるのではと期待しています。

 

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この下の息子が今後どういう成長をたどるのかは,データがある程度たまってからまた別の機会に発表したいと思います。

 

次回は息子の療育に役立った絵本を紹介します。

 

 

 

 

 

 


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過去の出来事を話す練習 目指せ!ほうれんそう(報告・連絡・相談)3

2017-10-27 14:07:42 | 発達障害

過去の出来事を話す練習 目指せ!ほうれんそう(報告・連絡・相談)2のつづき

 

このようにして,5歳4〜5カ月ぐらいには絵日記というツールを使って前日のことについて日常的に話ができるようにはなりましたが,では視覚的手がかりが何もない状態で,言葉だけで過去の話が通じるようになったのはいつかというと,正直なところ,はっきりしません。

写真のようなものがなければ息子が自発的に話をすることはなく,もともと会話も続きにくい子だったので,こちらが話を切り出しても無視されてばかり。これが,興味がないからなのか,何のことか理解していないのかがわからなかったからです。

ただ,5歳11カ月のときには保育園で数日前に行われた運動会の絵をきちんと描いており,先生の言葉だけで先日の出来事を認識できたのは確かです。

 

こうして「ほうれんそう」の「ほう(報告)」に必要な能力が身についてきたところで,「れん(連絡)」の練習もしていくことにしました。

 

6歳0カ月ごろ,保育園の先生が連絡事項を息子に伝え,息子がそれを母に伝える練習を始めました。連絡の内容はあらかじめ先生から直接聞くか,日記の連絡欄に書いてもらっておき,息子が断片的にしか伝えられなくても私の方から「〜っていうこと?」と確認できるようにしました。

 

これは,先生が息子に面と向かって伝えるのと,先生の話があってから私に会うまでの時間が短かったせいもあってか,わりとすんなりとできるようになりました。

 

ただ,息子は先生がクラス全体に向かって話したことは聞いていないことが多かったので,そういう連絡は先生が息子に注意を促したり言い直す必要がありました。

なお,この傾向は小学校に入ってからもなかなかなおらず,就学後も支援級でみっちり指導されました。クラス全体に対して言われたことがきちんと連絡できるようになったのは小学2年生になってからです。これがちゃんとできるようになってからは,得意科目(体育や数学)を普通級で受けられるようになりました。

 

「ほうれんそう」の「そう(相談)」に関しては,特別な練習はしなかったのですが,幸いにも自然にできるようになってくれました。保育園や学校の連絡かねて「明日お弁当だって。そぼろ(そぼろ肉)ごはんにしてくれない?」のように,自分一人では決められないことは私や夫に聞いたりします。

 

息子はこのほど9歳になりましたが,学校であったことを自発的に話してくれることは今もまれです。でも,休日に家であったことは学校でよく話すと担任の先生が教えてくれました。絵日記をがんばったかいがあったのかな?と嬉しく思います。ただ,「どこで」をきちんと説明できない(場所の名称を言えない)ことが多いようで,それを親から聞いてくるという宿題を先生からよく出されます。

そういうわけで,報告と連絡の練習は今も続いています。


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過去の出来事を話す練習 目指せ!ほうれんそう(報告・連絡・相談)2

2017-10-19 11:54:32 | 発達障害

過去の出来事を話す練習 目指せ!ほうれんそう(報告・連絡・相談)1のつづき

 

こうして絵日記による言葉の訓練の方向性が見えてきたのですが,問題は息子の気まぐれでした。絵日記自体は毎日書いていたのですが,その内容を息子が先生に話すのはその日の気分次第で,数日分の日記をさかのぼってあれこれお話をする日も月に数回あったものの,完全に無視される日の方が圧倒的に多い状態でした。

 

毎日の絵日記の内容が平凡な日常生活で話をする気も起きない,というわけでもなく,例えば仲のいいお友達家族とグアム旅行に行って海で珍しい魚を見たり潜水艦に乗ったというレアな体験に大興奮した次の日も,先生には一切話をしませんでした。

 

療育はなんでもそうかもしれませんが,特に言語訓練のようなものは1回で劇的に能力が上がることはなく,回数や頻度,繰り返しが重要になります。

 

息子が先生に話をする頻度を何とかあげられないかと考えたのが,写真の導入です(5歳4カ月〜)。絵を描くかわりにその日にあったことがわかる写真を撮って家庭用プリンタで印刷し,一緒に話しながら絵日記に貼り付けるようにしたのです。

その効果は劇的でした。最初の1カ月は絵日記に絵を描く日と写真を貼りつける日が半々くらいでしたが,息子が先生によく話しをする日が5割以上になり,翌月から全部写真に切り替えたところ,ほぼ毎日,先生との会話が弾むようになりました。

 

今こうして振り返ると,私の描いた拙い絵と写真とでは情報量の差が歴然で,例えば私にはエビらしきものを描くのがやっとでしたが,写真だったらどういうカニがどれくらい獲れたかがわかります。子どもだったらどっちが人に話したくなるか……は一目瞭然ですね。

 

私の絵

 

写真

私の絵

写真

 

その日つかまえた魚やカニ,料理などは写真におさめやすいのですが,DVDやビデオゲームなど写真に撮りにくいものはビデオのパッケージをそのままコピーしたり,パソコンで画像検索したイメージ図を印刷して貼りました。また,訪れた施設の全景がうまく写真に撮れないような場所は,施設のパンフレットをそのまま切って貼り付けたりしました。

 

やがて息子は,自分に起きた出来事を先生に話すのが楽しくなったようで,種まきした野菜の種のパッケージや,折り紙の作品など,息子が先生に見せたい・話したいというものを日記にどんどん貼り付けていきました。

 

 

写真などをこれだけベタベタ貼ってしまうと,もともとの日記のテンプレートはあまり意味がなくなってしまうのですが,最終的に利用していた日記のテンプレートをここに載せておきます。月の始まりが何曜日かによってカレンダーが変わるので,7種類あります。

 日記日曜スタート日記月曜スタート日記火曜スタート日記水曜スタート日記木曜スタート日記金曜スタート日記土曜スタート

 

絵日記を写真にしたところ,思いもかけない効果もありました。写真に興味をもったクラスメイトが息子と先生の周りに集まるようになり,言葉下手な息子が友達と近づくためのきっかけにもなりました。

 

過去の出来事を話す練習 目指せ!ほうれんそう(報告・連絡・相談)3につづく


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過去の出来事を話す練習 目指せ!ほうれんそう(報告・連絡・相談)1

2017-10-19 11:39:11 | 発達障害

家庭で療育を始めて1年弱,息子の言葉も徐々に増え,発達検査の数字も上がってはいきましたが,依然として困った問題もありました。

それは過去の出来事や経験について話すことができない,という問題です。

その対策として,ここでは絵日記を使った療育を何回かにわけて紹介していきます。途中経過や試行錯誤をすっとばして実際にうまくいった例やテンプレートを見たいという方は「過去の出来事を話す練習 目指せ!ほうれんそう(報告・連絡・相談)2」へお進みください。

**********************************************************************

保育園で年中クラスになったころ(4歳6カ月ごろ)の息子は,コミュニケーションボードやデジカメを使った語りかけを通じて直近の予定や互いの希望を伝えられるようにはなっていたのですが,「昨日○○行った」だとか,「○○したことある」といった,過ぎてしまったことについての会話がなかなか成立しませんでした。

 

保育園では0〜3歳クラスくらいまでは,保育園と家庭の間で連絡帳をやりとりしてその日の様子や大事な連絡などの情報を共有できるのですが,年齢が上がると園からの連絡は必要な限られたものだけになり,園での子どもの様子を知る手立てがなくなります。

 

健常児であれば子どもがしゃべって親に伝えられるようになるので,園が詳細な情報を連絡帳に書き込む必要はないのですが,息子が保育園であったことを自ら話してくれることは皆無でした。

 

それでも保育園に通っているあいだは,お迎えの時に保育園の先生と直接話をする時間が多少なりともとれるので,それでどうにかなるのですが,就学後,特に普通級に通うとなれば,「ほうれんそう(報告・連絡・相談)」ができる必要があり,そのためには過去のことについて話す能力が必須です。

 

当時の息子は,お出かけから帰った直後ならどこに行って何をしたかを答えることはでき,時間がたってしまったことについても写真などを見せれば一言二言話すことはできていましたが,何の手がかりもない状況で「この前さ〜」とか「昨日ね〜」と話かけてもノーレスポンス。そもそも過去のことについて会話をするといった概念すらないようなので,抜本的な対策が必要でした。そこで考えたのが絵日記です。

 

夜寝る前,息子がその日の出来事について会話ができるうちに,一緒に話をしながら私がその内容を簡単に絵に描き,翌日それを見ながら息子が保育園の先生*と一緒にお話をする,というのを日課にしました(4歳7カ月〜)。

 

まずは,過去の出来事や経験を親以外の人と話すことの大切さ・おもしろさに気づいてもらうのがねらいでしたが,将来的に「ほうれんそう」ができるようになってほしいという思いから,情報を伝える上で重要になる「いつ・どこで・だれが・何をした」が言えるようにと,それらがわかる簡単な文章も書き添えました。

 

また,このころ息子は月日や曜日の概念がなかったので,月々のカレンダーもつけて,日記を書くときに「今日は○日○曜日」と息子に見せながらチェックをいれました。

 

さらに,保育園の先生ともっと情報を共有し,連携を取れるようにするため,保育園からの連絡欄も追加しました(4歳8カ月〜)。

 

この絵日記を始めて最初の数カ月,親の思いも虚しいほどに,息子が保育園で絵日記の内容を先生に話すことはほとんどありませんでした。私と一緒に話して絵を描いているときはそこそこ反応があるのに,次の日いくら先生が絵日記を広げて誘いかけても無視される日が続きました。

 

最初の絵日記は保育園の先生と私の交換日記のようなものになってしまいましたが,それでも続けないことには息子が成長することはないと,絵日記を続けました。

 

休日はお出かけしたり,お友達と遊んだりしたことを絵に描き,平日であればその日に見たDVDのイラストや,息子ががんばったお手伝いの内容や家族のことなどを地道に描き続けました。

 

 

そのかいあってか息子は4歳10カ月ごろになってようやく,絵日記のことを先生と話すようになりました。

 

過去のことについて話す練習が可能になってきたところで,私としては「いつ・どこで・だれが・何をした」を伝えるための訓練をしていったほうがよいのではないかと考え,月1回通っていた言語訓練の先生に相談したのですが,先生の意見は違っていました。

先生はレッスン中の息子の言語能力から判断して,息子は単語レベルでの語彙は増えてきているけれど,単語と単語をつなげて文章を作る力がまだ弱い,なのでまずは息子が発した断片的な単語をつないで大人が文にして返してあげる方がよいというご意見でした。

 

すごくもっともだったので,日記の「いつ・どこで・だれが・何をした」という項目をやめ,かわりに息子にもっと耳を傾け,息子が発した断片的な言葉(「さかなつかまえた,いっぱい」など)をつなぎ,助詞もちゃんと入れて「今日は魚をいっぱいつかまえたね」と返すようにしました。保育園の先生にも同じように話しかけてくださいとお願いしました。

 

過去の出来事を話す練習 目指せ!ほうれんそう(報告・連絡・相談)2に続く

 

* 保育園の先生について

息子は年少クラスまではH県K市の,年中からはS県K市の保育園に通っていましたが,どちらの保育園でも担任の先生のほかに,息子のサポート役となる「加配の先生」がついていました。先生が余分にいるおかげで私は安心して息子を保育園に預けることができ,絵日記について話すのに付き合ってほしいなどの特別なリクエストをすることができました。

 

その加配の先生ですが,息子をサポートするといっても常にそばにいてあれこれ指示をするわけではありません。担任の先生,あるいは加配の先生が,クラス全体を見ながら息子が集団行動から外れた時や問題行動を起こした時に適宜サポートするといった感じだったので,ほかの園児や保護者にはなぜこのクラスに先生が多いのかわからなかったと思います。

 

加配の制度自体は自治体(厚労省?はっきりわかりません)によるものですが,対象となる子どもや先生がつく時間は市町村によって異なるようです。ちなみに加配の先生がついた時間はH県K市では1日4時間,S県K市では全日でした。詳しくは園やお住いの自治体の保育課に問い合わせてみてください。


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語彙を広げる コミュニケーションボードの次の工夫

2017-09-15 14:19:23 | 発達障害

市の療育センターで言語訓練の順番待ちを申し込んでから4カ月ほどたったころ,市とは別の療育機関から言語訓練の空きが出たとの連絡が入り,4歳2カ月から週1回のレッスンを2カ月ちょっと,市外に引っ越すまで受けることになりました。

 

担当してくださったのは若くてやさしそうな女性の先生で,息子には一緒に遊んでもらえそうなお姉さんとして映ったのでしょう。息子はじっと着席してレッスンを受けることができず,室内に置かれたクッションブロックなどで一緒に遊んでもらおうとするばかり。

先生も遊びながら「高いね」「大きいね」などわかりやすい簡単な声かけで言葉を教えてようとはしてくれたのですが,家ですでにやっていることと変わりはありませんでした。

 

そんなんだったので,息子がこのレッスンで直接学んだことはほとんどなかったのですが,私にとって非常に重要な発見がありました。

 

レッスンの初回,息子が遊び始める前のほんのわずかな時間のことです。

最初に先生が机に4枚の絵カードを広げて,「帽子はどれ?」「車はどれ?」と息子に聞きました。そのすべてに対し,息子は絵カードを指差して答えました。次に先生は質問を変えて,「“かぶる”のはどれ?」と息子に聞きました。すると息子は答えられず,嫌になったのか席を立って遊び始めてしまいました。

私はこの時初めて,息子が「かぶる」という言葉を理解していなかったことに気付いたのです。

衝撃的でした。

ipadをコミュニケーションボードとして使って話しかけ始めてから息子の語彙も着々と増えてはいたものの,それは主に「物の名前」であって,「かぶる」をはじめとした動詞の理解は進んでいなかったのです。

 

次の日,私は保育園の担任の先生にそのことを伝えました。

担任の先生は最初,キョトンとした感じで

「H(息子)くんに“帽子をかぶって”と言うと,ちゃんとかぶってくれますよ?」と答えました。

ですが,それは単に「帽子」という言葉に反応していただけで,「かぶる」という言葉を理解はしていなかったと説明したところ,先生も納得してくれました。

そして先生と話し合い,息子に話すときに,帽子を「かぶる」とか,靴を「はく」など,動詞を強調して声をかけていくことにしました。

 

こうして家庭と保育園での声のかけ方を変えることで,「かぶる」や「はく」など日々の生活でよく使う言葉はわりとすぐに覚えてくれたのですが,息子の語彙をもっと広げていくためには,息子が何を理解していて何を理解していないかを把握することが重要であると考えました。

 

そこで私は,「うごきのことばえじてん」(絵・山崎秀昭,ひかりのくに)を参考に,子どもに知ってほしい動詞と形容詞のリストを作成して印刷し,それを私が一番よく目につく食卓の壁に貼りました。

(リストのjpegファイルを下記に貼っておきます)

私は常にこのリストを見ながら,息子が理解して使えた言葉をチェックすると同時に,息子に次に教える言葉を選ぶようにしていきました。

それぞれの言葉の利用頻度は生活スタイルに大きく依存するので,例えば川に近い新居に引っ越してからは橋をわたる機会が増えたので,「わたる」という言葉を強調するなど,言葉の選択は生活に合わせたものにしました。

一度にたくさんの言葉を教えることはしませんでしたが,保育園の先生や息子の面倒を見ることの多い祖父母にも情報共有をして,橋や道路をわたるときに「わたる」を強調して話しかけて,などのお願いをしました。

 

こんなふうにして,一語一語,地道に言葉を教え続けました。

息子の言語能力は発達検査の成績でみると飛躍的に上がることはありませんでしたが,1〜2歳遅れで成長を続けました。

 

最初のうちは一語一語を強調するというスタイルをとっていましたが,ある程度語彙が増えてくると,強調したり繰り返したりしなくても,自然な会話の中から吸収できる言葉が増えていったように思います。

例えば自分が外国語で話しかけられたときに,文章を構成する単語の9割がわからなかったら,意味もわからないし各単語も聞き取れませんが,逆に9割の単語がわかっていたら,残りの単語を文脈から推測したり聞き取ったりするのが容易になるのと同じなのかもしれません。

 

 


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発達検査結果ー療育手帳から外れるー

2017-08-24 14:03:29 | 発達障害

久しぶりのブログ更新です。

 

昨日,療育手帳の再申請のため,発達検査を受けてきました。

形式は田中ビネーⅤ。

 

前回(5歳10カ月)受けたときの結果はIQ75で,その前後に受けた新版K式発達検査のDQよりもだいぶ低く出ました療育と発達検査の略歴を参照)。

その差は,新版K式発達検査を担当してくださった先生の話によると,田中ビネーは言葉で説明する問題が多いので,言葉に苦手のある息子には難しかったせいでは,とのことでした。子どもによって発達検査にも相性があるようです。

 

それから3年,いろんな面で成長した息子ですが,日本語は今も拙く,聞いたり読んだり理解はできても表出が実年齢よりも遅れており,第三者に言葉だけで何かを上手く説明するのは難しい状態です。

そんなだったので,今回の田中ビネーでどう出るか気になっていたのですが,結果は

 

IQ92(8歳2カ月)

 

前回から17ポイントアップの大成長です。

実年齢(8歳10カ月)から8カ月の遅れですが,検査では,答えはわかっていても言葉で説明ができなかったり,うまく切り替えられなかったがために落としてしまった問題もあり,実年齢と比べて知的に大きく遅れているというわけではなさそうとのこと。

ちまたでは,IQは大きくは伸びないとか,小学校に入ってからは大きく変わらないとか,ひとたび特別支援級に入ったら健常児との差が大きくなってしまう,等々聞ききますが,必ずしもそうとは限らないようです。

 

再申請した療育手帳は非該当となりました(当県ではIQ70台くらいまで)が,息子が小学校に上がってからも着々と成長してくれたことが数字として表れたようで,嬉しかったです。

 

 

 

 

 

 

 

 


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パン生地こねて指先訓練 夜まるめて朝焼きたてパンを食べる

2017-08-09 12:05:08 | 発達障害

私は朝食パン派です。

朝,焼きたてのパンが食べられればこの上ないのですが,近所にパン屋はなく,自分でパンを作ろうにも仕事に家事に療育に,時間が足りません。

ですが,忙しい中でもちょっとした工夫で療育兼ねて子どもとパンを作り,朝,焼きたてのパンを食べられることに気づいたので,今回はその方法を紹介します。

うちでよく作るのは成形の簡単なバターロールやフォッカッチャです。

ただいい加減な方法なので,パンにこだわりのある方からすればダメダメなパンかもしれませんが,スーパーで袋売りされているものや,パン屋で前日に買ってしなびたパンよりははるかに美味しいものが食べられます。

 

パン作りの大まかな流れとしては

1. 夕食を終え,お風呂に入っているあいだなどに,ホームベーカリー*で生地をこね,発酵する。

2. 寝るまでの空いている時間にパン生地をまるめる(成形する)。

3. 成形したパン生地を冷蔵庫にしまう。

4. 朝,冷蔵庫からパン生地を出してオーブンで焼く。**

 

パン生地の配合と焼き時間は,ホームベーカリーやオーブンに付属のレシピや一般のパン作りの本に出ているものを参考にしていますが,上記のスケジュールで時間をかけずにパンを焼くための重要なポイントがあります。それは

 

A. イーストの量をレシピの半分にする(発酵しすぎてイースト臭くなるのを防ぐため)。

B. 冷蔵庫にパン生地をしまう際に,パン生地の上にクッキングシートをかぶせ,その上からラップをかける(膨らんだパン生地がラップにくっついてしまうのを防ぐため。うちではシリコン樹脂加工されたトップバリュのクッキングシートを愛用しています)。

 

 

この方法だと,発酵時間やベンチタイムなどをきっちりレシピ通り守らなくてもよく,ホームベーカリーでこねあがった生地をそのままホームベーカリーの中で1時間くらい放置していても,大きく味には影響しません。だから,あわてなくても寝るまでの空いた時間に成形ができます。

また,本来なら成形する前にベンチタイムを設けて生地を休ませたりしますが,このプロトコールでは,ホームベーカリーの生地をクッキングシートの上に取り出してすぐ軽く打ち粉をし,そのままクッキングシートの上で成形します(こうすると片付けが楽)。パン生地を一晩寝かせている間に表面がつるっときれいになるので,がんばってきれいに形作らなくてもそれっぽいものができるんです。

 

バターロールの成形方法はこんな感じ。

 

フォッカッチャの場合は生地を大きくまるめてめん棒でのして1〜2cmくらいの厚さにするだけです。

 

さて,ここまではパン作りの流れを書いてきましたが,ここからは療育のポイントについて書きます。

 

このパン作りの中で子どもがやりやすいステップは材料の計量とパンの成形です。

 

材料の計量から成形,焼き上げまで全部一緒に,いずれは一人でできればいいのですが,最初からすべては期待せず,どこかの過程で少しでも興味を持って参加してもらえればいいくらいの気持ちでやります。

息子が最初にやったのは,ホームベーカリーでできた生地を,粘土のようにただつまんでこねくり回す,というだけのものです。これだけでも十分指先の力を使います。

そのうちバターロールやフォッカッチャの成形もやってもらいました。

大人がやると簡単な作業ですが,めん棒で生地を伸ばしたり,バターロールをくるくるとまるめたりするのも力の加減がうまくできず,最初のうちは悲惨な形態になりました。でも一晩寝かしているうち適当に膨らみ,焼きあがるとわりと見れたものになるので,あまり口を挟まず,いびつなものでもそのままにしました。

 

こうして形作ったパンを,朝焼き上げ,朝食に出すと,息子も嬉しいのか寝起きがよく,朝ごはんもしっかり食べてくれます。

 

ホームベーカリーはうちではNational(現Panasonic)のイースト後入れ式のものを使っています。私は国産小麦が好きなのですが,ほかのメーカーのホームベーカリーは国産小麦を使ったパンがうまく膨らまないので,小麦粉にこだわる方はPanasonicのものをオススメします。

 

**

朝,パンを焼くときは,冷蔵庫から出してそのままオーブンで焼けますが,焼き上がりの膨らみが悪いと感じた場合は,冷蔵庫から生地を出して15〜30分おき,室温に戻してから焼いてみてください。


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字を書き始めるまで3 その他の工夫

2017-08-08 15:02:20 | 発達障害

息子がきちんと鉛筆を持って字を書き始めるまでの大まかな道のりについてはこれまでのブログに書いたとおりですが,息子がすべてのひらがなや数字を覚え,安定して席について字を書けるようにするために,直接的なもの,間接的なものも含め,様々なアプローチをとりました。

 

とはいってもそれほど大層なものはありません。私は仕事を続けていたため,息子につきっきりで何かを教えるための時間があまりとれません。平日ではせいぜい1日15〜30分程度です。その一方で,息子は暇を持て余している時間が保育園から帰った後でも存分にありました。私が夕食や朝食の準備や片付け,その他諸々の家事をこなしている間,息子は何もすることがないので,その時間を最大限有効利用できるよう,息子が自分一人でできるものが中心です。

 

また,私がする家事の中で,指先の訓練につながるようなものを手伝ってもらうことにしました(お手伝いをしてもらう方法については別記事「お手伝いは現金報酬で交渉」を参照)。

 

下図のモチベーション以外の3つの課題別に紹介します。

 

字の認識

・こどもチャレンジの「ひらがなのうた」

息子は言葉はあまり覚えないものの,歌のメロディーを覚えるのが得意だったので,歌で攻めてみました。YouTubeで見られるこどもチャレンジの「ひらがなのうた」は,「あいうえお」に始まり「わをん」で終わるまで余計な歌詞がない非常にシンプルな構成になっており,メロディーとともに各文字が強調されるので,文字と読み方(音)を対応させるのに非常に役立ちました。また,この歌を覚えてからは,お風呂のひらがなポスターを見ながら一緒に歌うなど,ひらがな表をよく注意して見てくれるようになりました。

 

微細運動

・ くもんの幼児ドリル

めいろ,ひらがな,きりえ,など。

本屋やネットショップで購入。これらのドリル課題は付き添って一緒にやりました。

 

・ シールブック

市販のもの。シールを貼るのも意外と手先を使います。

 

・ ぷりんときっずの無料学習プリント

ぷりんときっず」のめいろ,点つなぎ,ひらがな,かたかな,など。無料とは思えないほど充実したラインナップ。

 

 ・ サラダ野菜の栽培と収穫

ブログ「いつでもレタス」を参考に,100円ショップのトレイ&ザルを使ってベランダで水耕栽培。種をつまんだり,ハサミを使って葉の基部を切ったりするのが指先のトレーニングになったほか,苦手だった野菜が食べられるようになり,一石二鳥。

 

 ・洗濯物干し

うちでは洗濯を仕事から帰ってから回し,夜間に除湿機を使って室内干しをしていたので,洗濯物を干すのを手伝ってもらいました。室内用つっぱり洗濯物干しの高さを調節して洗濯ハンガーを子どもの目線くらいに吊るし,自分の洗濯物を自力で干せるように工夫。最初は片手で洗濯バサミを開閉するのがとても難しく,洗濯物をただはさむのがやっとでした。よれていたり重なっていたりするのを見るとつい直したくなりましたが,本人の努力を尊重し,しばらくはそのままにしました。そして握力がついて洗濯バサミを簡単に操作できるようになったころ,綺麗に広げる方法を教えました。

 

・パン作り 

ホームベーカリー+αの工夫で,時間がなくても夜,仕込んで朝,焼きたてバターロールが食べられます。「パン記事こねて指先訓練 夜まるめて朝焼きたてパンを食べる」をご参照ください。

 

姿勢制御

・室内ジャングルジム

これでずっと遊び続けることはあまりないのですが,ちょっとした空き時間にすぐよじ登るので,1日にすると最低でも10〜20分は登っています。こういった室内用のそれほど怖くない遊具に慣れると,公園の大型遊具やアスレチックなどにもチャレンジしやすくなります。

 

・ピーナツ型バランスボール

球形のバランスボールよりも安定性があり,真ん中のくぼみに馬乗りになって遊んでいます。これもちょっとした空き時間に1人でよく乗っています。

 

・Xbox 360 キネクト

過去記事「キネクトで全身運動 療育に使えるゲームあれこれ」をご参照ください。

 


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お手伝いは現金報酬で交渉

2017-08-08 15:00:41 | 発達障害

「これ手伝って」とお願いをしてほいほい手伝ってくれるような子なら,こんな苦労はありません。一般的な子どもがよく反応する「ごほうびシール」も反応なし。先の見通しの苦手な自閉症児,シールを貼って貯めたところで得られる報酬がわかりにくかったのでしょうね。

そこでうちでは現金報酬を導入しました。1回のお手伝いにつき内容に応じて30〜50円の報酬を即時現金払い。この金額だと2〜3回お手伝いをすると保育園の帰り道にある100円ショップで好きなおもちゃを自分で買えるので,それがモチベーションとなり,家事を手伝ってくれるようになりました。

ただ,これを成功させるにはいくつかポイントがあるので以下に記します。

 

・ 欲しいものは必ず自分のお金で買わせる

「あとでお手伝いするから買って〜」などの要求をしてくることがありますが,一度をそれ許可すると子どもは学習し,同じ戦法を何度も使ってきます。ここは毅然とした態度で臨み,ルールを絶対に曲げないようにします。お店で1時間以上大泣きされたこともありますが,「母は絶対にゆずらない」ことをひとたび学習すれば,大泣きされることは減ります。ある程度わかるようになってからは,出先で手持ちがないときの家での後払いを許可しました。クリスマスプレゼントや祖父母からのプレゼントは普通にあげていましたが,自分のお小遣いで自分の好きなものを買うのには十分有効でした。

 

・ 報酬を明示する

「この洗濯物を干したら50円あげる」と,口で説明してもよいのですが,報酬表を作って「せんたくものほし 50えん」などと書いた紙を壁に貼っておくのも手です。明文化すると,たとえ字が読めなかったとしても,そこに書かれた内容が自分だけでなく母も守るべき平等なルールとして認識されるのか,口約束以上の効果があるように感じました。本人にとってもその紙を指差せば報酬を請求しやすくなり,お手伝いに対するやる気がアップします。

 

・ イレギュラーで桁違いなお小遣いをあげないよう,家族に伝えておく

私としてはお手伝い1回50円の報酬は高すぎるかな?と悩む額なのに,夫や祖父母がちょっとしたことで数百円,数千円のお小遣いをあげてしまうとすべて台無しに。なので,家族にはあらかじめその旨を伝え,子どもに対するごほうびは別の形であげてもらうよう相談しておくことをお勧めします。

 

 

 

 

 


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字を書き始めるまで2 鉛筆の持ち方を正す

2017-07-26 16:36:53 | 発達障害

字を書き始めるまで アプリとプリントを合わせて使う(3)のつづき

息子が紙に書くことに興味を示し始めたとき,息子の鉛筆の持ち方は思いっきり「グー持ち」でした。

注意して直そうとしましたが,癇癪を起こして聞く耳を持たず,正しい持ち方を教えられません。

指の当たる位置にシールを貼ってもみましたが,無視されました。

 

このまま間違った持ち方が定着して修正がきかなくなるのが心配で,厳しくしかって無理矢理にでも矯正しようか悩みましたがやめました。

ここで息子とバトルをして鉛筆の持ち方を直せたとして,逆に書くことが嫌いになってしまったら,元も子もありません。

これは科学的根拠ではなく,個人の経験に基づく判断です。

みなさんは子どもの頃,親に無理矢理やらされたがために大人になっても嫌いになったままのものってありませんか? 

私にはあります。夫にもあります。私と夫の性格を色濃く受け継いだ息子も,一度嫌いになってしまったものは一生修正できないように思いました。

なので,私が療育で一番気をつけていることは,嫌いにさせない,です。

 

とはいっても,どうしたらよいか。

悩んでいたところにヒントをくれたのは,保育園の先生でした。

 

保育園の担任の先生とは毎日,その日の息子の様子やトラブルについて話しをしていたほか,家で取り組んでいる療育課題なども伝え,こちらが行き詰まったときには何かいいアイデアがないか聞いたりしていました。

 

あるとき私が先生に,鉛筆の持ち方を直せずに困っていることを伝えると,先生がこうおっしゃってくれました。

「H(息子)くんはお箸を持たせるときに,こちらが人差し指を突き出して鉄砲を打つように『バンバン!』ってやると,同じように真似してくれるんです。そこで,親指の付け根のあたりに箸をはさむと自然と人差し指と親指で箸をつまむので,鉛筆も同じようにやってみてはどうでしょうか?」

 

なるほど!「鉛筆の持ち方はね…」と教えるのではなく「てっぽうバンバン!」。これなら息子も反応してくれるかも。

 

私は早速,家に帰るとプリントを用意し,鉛筆を渡す前に息子に人差し指を出して「てっぽうバンバン! Hもやってみて」と言いました。

すると息子も同じような指の形をしてくれます。

その手の親指の付け根に鉛筆をあてると,息子は人差し指と親指で鉛筆をつまんでくれました。

そこで私はすかさず,その鉛筆の持ち方を褒めちぎりました。

「そうそう!それが鉛筆の持ち方!かっこいい!上手上手!」

 

息子も褒められてその気になったのか,それからは人差し指と親指でつまむように鉛筆を持つようになりました。脱・グー持ち!

 

ところがまだ問題はありました。

鉛筆を持つ位置が,グー持ちのときのように鉛筆の中央を持ってしまうので,先端から指までが離れていて,力の入り方が不自然です。

 

これは,注意して直すよりも単純でいい方法がありました。

それは,極力短い鉛筆を持たせる,です。

短い鉛筆であれば必然的に指でつまむ位置は先端に近くなります。

私はプリント課題をやってもらうときには長い鉛筆はすべて隠し,短いものだけを渡すようにしました。プリント課題をやるようになってから1カ月後くらいのことです。

 

この短い鉛筆については,最初は家にあった短い普通の鉛筆を使っていましたが,後からは「くもんのこどもえんぴつ6B」を使うようになりました。長さもちょうどよく,6Bなので筆圧が弱くてもしっかり線が引けるので,書く練習にはぴったりでした。子どもの特性をよく考え,研究された商品だと思います。

また,市販されているくもんの幼児ドリルには鉛筆の持ち方を示した写真がついているので,それを息子の机の前に貼っておき,いつでも目に入るようにしておきました。

 

次回は,文字の認識や微細運動,姿勢制御のためのこまごまとした工夫について紹介したいと思います。


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