理系母の療育と自閉症児の成長の記録

3歳で自閉症スペクトラムと診断された息子。約3年でDQ57→97。14歳で診断が外れ,高校受験を経て通常学級デビュー。

語彙を広げる コミュニケーションボードの次の工夫

2017-09-15 14:19:23 | 発達障害

市の療育センターで言語訓練の順番待ちを申し込んでから4カ月ほどたったころ,市とは別の療育機関から言語訓練の空きが出たとの連絡が入り,4歳2カ月から週1回のレッスンを2カ月ちょっと,市外に引っ越すまで受けることになりました。

 

担当してくださったのは若くてやさしそうな女性の先生で,息子には一緒に遊んでもらえそうなお姉さんとして映ったのでしょう。息子はじっと着席してレッスンを受けることができず,室内に置かれたクッションブロックなどで一緒に遊んでもらおうとするばかり。

先生も遊びながら「高いね」「大きいね」などわかりやすい簡単な声かけで言葉を教えてようとはしてくれたのですが,家ですでにやっていることと変わりはありませんでした。

 

そんなんだったので,息子がこのレッスンで直接学んだことはほとんどなかったのですが,私にとって非常に重要な発見がありました。

 

レッスンの初回,息子が遊び始める前のほんのわずかな時間のことです。

最初に先生が机に4枚の絵カードを広げて,「帽子はどれ?」「車はどれ?」と息子に聞きました。そのすべてに対し,息子は絵カードを指差して答えました。次に先生は質問を変えて,「“かぶる”のはどれ?」と息子に聞きました。すると息子は答えられず,嫌になったのか席を立って遊び始めてしまいました。

私はこの時初めて,息子が「かぶる」という言葉を理解していなかったことに気付いたのです。

衝撃的でした。

ipadをコミュニケーションボードとして使って話しかけ始めてから息子の語彙も着々と増えてはいたものの,それは主に「物の名前」であって,「かぶる」をはじめとした動詞の理解は進んでいなかったのです。

 

次の日,私は保育園の担任の先生にそのことを伝えました。

担任の先生は最初,キョトンとした感じで

「H(息子)くんに“帽子をかぶって”と言うと,ちゃんとかぶってくれますよ?」と答えました。

ですが,それは単に「帽子」という言葉に反応していただけで,「かぶる」という言葉を理解はしていなかったと説明したところ,先生も納得してくれました。

そして先生と話し合い,息子に話すときに,帽子を「かぶる」とか,靴を「はく」など,動詞を強調して声をかけていくことにしました。

 

こうして家庭と保育園での声のかけ方を変えることで,「かぶる」や「はく」など日々の生活でよく使う言葉はわりとすぐに覚えてくれたのですが,息子の語彙をもっと広げていくためには,息子が何を理解していて何を理解していないかを把握することが重要であると考えました。

 

そこで私は,「うごきのことばえじてん」(絵・山崎秀昭,ひかりのくに)を参考に,子どもに知ってほしい動詞と形容詞のリストを作成して印刷し,それを私が一番よく目につく食卓の壁に貼りました。

(リストのjpegファイルを下記に貼っておきます)

私は常にこのリストを見ながら,息子が理解して使えた言葉をチェックすると同時に,息子に次に教える言葉を選ぶようにしていきました。

それぞれの言葉の利用頻度は生活スタイルに大きく依存するので,例えば川に近い新居に引っ越してからは橋をわたる機会が増えたので,「わたる」という言葉を強調するなど,言葉の選択は生活に合わせたものにしました。

一度にたくさんの言葉を教えることはしませんでしたが,保育園の先生や息子の面倒を見ることの多い祖父母にも情報共有をして,橋や道路をわたるときに「わたる」を強調して話しかけて,などのお願いをしました。

 

こんなふうにして,一語一語,地道に言葉を教え続けました。

息子の言語能力は発達検査の成績でみると飛躍的に上がることはありませんでしたが,1〜2歳遅れで成長を続けました。

 

最初のうちは一語一語を強調するというスタイルをとっていましたが,ある程度語彙が増えてくると,強調したり繰り返したりしなくても,自然な会話の中から吸収できる言葉が増えていったように思います。

例えば自分が外国語で話しかけられたときに,文章を構成する単語の9割がわからなかったら,意味もわからないし各単語も聞き取れませんが,逆に9割の単語がわかっていたら,残りの単語を文脈から推測したり聞き取ったりするのが容易になるのと同じなのかもしれません。

 

 


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