もう卒業したつもりなのに知人が薦めるから聴いてみたら、なんでこんなに肩肘張って頑張って歌うのかなあ、ワザとらしいなあと、最初の曲はあまり気に入らなかった。で、解説を見てみると、男になったつもりで男心を唄っているとか、なーるほど、宝塚かぁ、それならわかるわぁ、男ブリってことやねと納得した。鑑賞とは特別に解説がなくても成り立つと思っていたが、やはり作者や演奏家の意図の解説があるとまた別の聴き方・見方があるということを実感した次第です。
そして最近のアルバムを意気込んで聴いてみた感想は...。スペイン語で歌ってるんだけど、日本語の方がいいみたい。ていうのは、スペイン語が全くわからないのでたいして説得力がないのを承知で言うと、タリアにしてもシャキーラにしても、英語歌詞よりもスペイン語で歌ってる方が調子がいいし、いわゆるノリが良くて、元気で情熱的に聞こえる。それはやはり母国語だからという面が確かにあるだろうし、そもそもスペイン語って歯切れが良くてテンポがあって、シャキッと、いえ、シャキーラだからじゃなくて、してるように私には聞こえる。冴木杏奈のはどうものっぺりしてるなあと思って注意して聴くと、マリアのマとかシレンシオのシとかの子音が際立ってなくて、彼女のまったり・のびやか・しなやか・やさしいという利点がかえってマイナスになって、輪郭がぼやけてしまっている印象を抱いた。歌はやっぱ母国語でしょう。そう考えるとテレサ・テンは日本語でも情感たっぷりだなあ。
最初の曲を聴いた途端、鳥肌ものでした。デビュー盤の歌手とまるで別人!人って成長するんやわ。20年近く前のは正直言ってただのアイドル歌手がたまたまタンゴっぽいのを歌っただけだったのに、その後いろんな経験を重ね、研鑽を積んだのでしょう、いやあ、求めていたのはこれでした。デビュー盤の解説に「もっともっと恋をして乱れて(人生経験を積んでほしい)」と書いてあったけど、美女の境遇にどんなことがあったのでしょうか、ほんの少しの若さの衰えと引き換えにとても貴重なものを手に入れたみたい。HMVのたくさんの好意的なレビューがうなずけます。百万本のバラ、しびれます。
ふとしたきっかけで冴木杏奈という名前を知った。YouTubeで菅原洋一とタンゴデュエットしてたので、オオっと思ってさっそく標題の1986年デビュー盤を手に入れた。かみさんにさあかけるぞと意気込んでCDスタートしたところが。アレっ?ミス札幌?タンゴ歌手?アルゼンチンで表彰されたって?本格的に声楽の勉強してたって?...。ふっつーの歌、ありきたりの声、80年代の並みの美形アイドルやんかぁ。こんなはずじゃないぞぉ。タンゴを歌わせたら合ってたのでこれでデビューしようとプロデューサーが決めたんだそうな(つづく)。
YouTubeで話題になったテノール歌手、ポール・ポッツの歌は確かに真面目で誠実でしょう。ただ、低音がおっさん臭いとか、もっと華やかなのがいいとか、これは好みだから仕方ないけど、私としては同じノンプロ出身のA.ボチェリの方が好きです。いかにもイタリアのテノールらしい輝くようなあっかるーい声の方が。ところで関係ない話ですが、部屋を整理して要らなくなった古い置時計を玄関先に捨てておいたところ、未だにカチカチ音をたてている。電池くらい抜いとけよ、ゴメン。律儀なヤツだ。