
こんにちは。
今日は良く眠れたのでご機嫌だ。
わたくしです。
一昨日の金曜日又従姉妹の鈴ちゃんとお互いの誕生日プレゼントを買う為&ホワイトデーのお返しにケーキバイキングに行こう、と仙台に行った。
前日の晩「お互い起きたらメールしよう」と約束をして。
私は前日10時に布団に入り何とか就寝した。
そして私に新しい朝がきた。
3時33分に。
頭痛を堪えながら鈴ちゃんに起床の旨メールしチャットに入って六時迄時間を潰す。
紅茶をがぶがぶ飲みながら。
昼食はバイキングなので何も食べれない上に何か食べると絶対に猛烈な睡魔が訪れ二度寝確実だからだ。
楽しく6時迄チャットして「出掛ける準備をしますので落ちます」と打って「行ってらっしゃい」と暖かく送り出される。
鈴ちゃんに「6時だよ。起きた?」とメールしてから洗顔してメイクをして服を着て髪をセットし香水を付け忘れ物はないかと何度も確認して準備万端だ。
私はピースナウの白いシャツに白いネクタイ、エイチナオトの黒い蝶柄ボレロ、前がミニで後ろがロングになってるリボンの編み上げが付いているブラックピースナウのスカート。仕上げに黒と白のボーダーのオーバーニーソックスを履いて靴は11㎝ヒールの黒のワンストラップシューズ。バッグはエイチナオトの黒と赤のフリル付き手提げ。黒い不繊維のトートバッグ。黒い日傘。
爪はパープル。指輪は蝶と薔薇モチーフの物を三個。ピアスは王冠とジッパーの取っ手モチーフ。髪はピンク。
とどめに差し色の赤のフレームの伊達眼鏡を掛ける。
早い話がゴス。
これ以上無い、と言う位のゴシックだ。
「いつもカジュアルな装いの鈴ちゃんと一緒に出かけるんだから私もそうしよう❤」
等という事は全く考えておらん。
私は傲岸不遜なのだ。
鈴ちゃんは6時半位に起床メールをくれ8時14分に用意が終わった事をメールしてくれた。
船岡発9時32分の電車で行くつもりだったので居間でだらだらしていたら駅迄送って行ってくれる母が慌ただしい動きをしてる。
「お母さん、忙しいならもう行こうか?鈴ちゃんも準備終わったらしいし」
「是非そうして!!」
母の悲鳴に後押しされ8時40分に家を出る。
天気予報ではその日は日中18度迄気温が上がる、と予報されていたが一応これも黒い薄手のコートを着て鈴ちゃん宅に強襲揚陸しに出発する。
事前にメールで『暑い様なら仙台駅のコインロッカーにコートぶちこもう』と打ち合わせをして。
無事に鈴ちゃん宅に到着する。
鈴ちゃんが出て来た。
予想通り目に眩しい程のカジュアルな装いで。
「おはよー」
「おはようございますー」
鈴ちゃんが車の後部座席に乗り込み母の運転するワゴンRで駅に向かう。
着いた。
と同時に電車も来やがった。
間に合わない。
二人共Suicaだから改札は潜れるが階段を上がって歩いてまた階段を下りなければいけない。
無理だ。
ダッシュしても絶対間に合わない。
「鈴ちゃん・・・・・・次の列車にしよう・・・・・・」
「はい・・・・・・」
次の列車が最初から決めていた9時32分発の電車だ。
30分程待たなければいけない。
取り敢えず二人共Suicaにチャージをして2番線ホームの待合室に入る。
暑い。
我慢出来ずにコートを脱ぎ座る。
木の椅子が尻の骨にダイレクトに当たって痛い。
鈴ちゃんもコートを脱ぎ鞄に仕舞っていた。
その鞄凄い入るな・・・・・・鈴ちゃん・・・・・・。
そんな彼女はマスクを着けぐったりしている。
可哀想な事に花粉症な上に睡眠不足だとかすれた声で言う。
ぐったりしてるのに私のいつもテンションの高い傍若無人な激烈トークに付き合わせるのは可哀想なので私は貝になった。
電車が来る10分程前に
「コート脱いだままで大丈夫か一応外出て体感温度試してくるわ」
と、言い置きホームに出る。
すげー暑い・・・・・・。
とって返して待合室の鈴ちゃんに言い含める。
「大丈夫だ。コートは要らん、仙台駅のコインロッカーにぶちこもう」
「はい・・・・・・」
「あともうホームに出て並ぼう。私は座りたい」
「はい・・・・・・」
ホームに出て列の先頭に並ぶ。
電車はすぐ来た。
空いていて無事二人共並んで座る。
クッションがきいていて尻が痛くない・・・・・・。
待合室を早めに出たのは私の尻が
『もう限界よ!木の椅子はもう限界よ!!』
と叫んでいた為でもある。
騙してごめん・・・・・・鈴ちゃん・・・・・・。
鈴ちゃんは目を閉じてぐったりしているので私は何も話し掛けず大人しく電車で35分揺られていた。
仙台に着く。
さっさと立ち上がり電車から降りてエスカレーターに乗ろうとすると鈴ちゃんの姿が横に無い。
慌てて振り返るとゆっくりと彼女は眠たげにやって来た。
二人共マイペースなので気にせず合流しエスカレーターに乗る。
改札を抜け2階のコインロッカーを探すが以前在った場所が工事中でロッカーが撤去されており
「3階のロッカーを使おう」
「はい」
並んで3階へのエスカレーターに向かう。
「コートロッカーに入れたら七十七銀行のATMでお金下ろすから」
「はい」
何だか体調が今ひとつの鈴ちゃんは専ら『はい』としか発言出来ない様だ。
自分ばかりが元気で恥ずかしい・・・・・・。
空いているロッカーが無事見つかり300円を割り勘して投入し、コートを二着ぶちこんで私は一階のATMに向かおうと歩き出す。
そんな私を鈴ちゃんが止めた。
「○○(私の名前)ちゃん。あそこにもATMが・・・・・・」
「いやあそこの七十七銀行のATMは撤去されたんだ。1階じゃないと駄目」
「そうなの・・・・・・」
「うん」
またエスカレーターを下り2階からもう1回エスカレーターを使い1階に降り立つ。
てくてくと歩き無事ATMに辿り着く。
「鈴ちゃんは?お金下ろす?」
「はい」
私が七十七銀行のATMの列に並ぶと鈴ちゃんは仙台銀行のATMの中に入って行く。
『鈴ちゃんは仙台銀行なのかー』
と思いつつ列に並ぶ。
遅い・・・・・・二台あるのに一台をずっと占拠している女性がいて実質一台しか稼働していない。
思いっきり苛々しながら耐える。
私は『列に並ぶ』という行為が大嫌いだ。
漸くちゃんと稼働してる方のATMが空きお金を下ろす。
出ると鈴ちゃんの姿が何処にも無い。
物凄く焦ってメールしようかと思ったが堪えてATMコーナーの側に立ち鈴ちゃんを視線で探す。
いない。
本当に何処にもいない。
泣きそうになった瞬間鈴ちゃんは現れた。
七十七銀行のATMコーナーから。
オイ!七十七も利用するなら最初からそう言ってくれよ!!
おねいさん(鈴ちゃんは私の事を『おねいさん』と呼ぶ時がある)超焦ったよ!!
でもそんなマイペースでスリリングな鈴ちゃんが結構好きな私は
「さぁ行こう!今日は超歩くぜ!!」
と、宣言して駅から並んで出る。
「喉渇いたからドラッグストアで飲み物買うわ」
「うん」
日傘をさして横断歩道の時間待ちをする。
横断歩道を渡ればドラッグストアがすぐにある。
信号が青になり連れ立って渡ってドラッグストアに入る。
入ってすぐの飲料水コーナーでしばし迷ってからアクエリを選んでレジに並ぶ。
会計を済ませて店の入り口付近を見たらまたしても鈴ちゃんの姿が無い。
今度は冷静に振り返って会計を見たら彼女はポカリのイオンウォーターを購入していた。
君も買うならそう言ってくれ・・・・・・花粉で頭がやられているのか鈴ちゃん・・・・・・。
まぁ別に構わないので良い。
並んで無言でてくてくする。
「○○ちゃん」
「なぁに?」
「下着が見たいの」
「あぁ、チュチュアンナね」
「うん」
「良いよ良いよ」
アーケード商店街を歩く。
チュチュアンナに辿り着き店内に入る。
ちょっと靴下なんかを見ていたら鈴ちゃんがやって来て
「○○ちゃん。もっと先迄歩くんだよね?」
「うん。三越迄歩くよ」
「三越が何処にあるかは分からないけど帰りに寄った方が良いんじゃ・・・・・・」
鈴ちゃん・・・・・・三越が何処にあるのか知らないのか・・・・・・。
「そりゃ買い物したら荷物になるから帰りに寄った方が良いよ」
「じゃあそうする・・・・・・」
「応」
店を出てまたてくてく歩く。
「フォーラスに用があるから先ずフォーラスに寄るよ」
「フォーラスって何処ですか?」
鈴ちゃん・・・・・・君位の年齢層をターゲットにしてるファッションビルだよ・・・・・・。
「藤崎の所を右に曲がって更に歩くの。イービーンズと同じエンドーチェーン経営のファッションビルだよ」
「そうなの・・・・・・」
「うん」
少しずつテンションが上がってきた鈴ちゃんに安心して喋りながらフォーラス迄歩く。
「鈴ちゃんはプレゼント何が欲しいの?」
「髪留めが」
「じゃあエスパルの中とPARCOの中に大きめのアクセサリー店が入ってるからそこに帰りに行こうか」
「うん」
途中ABCマーケットが開店大セールをやっていて鈴ちゃんが
「あ・・・・・・」
と呟く。
「何?靴欲しいの?入る?」
「靴が欲しいんですが帰り道で買います」
「あいよ」
「はーい。ここでーす」
無事フォーラスの扉を潜る。
「今期間限定で可愛いにゃんこモチーフのブランドが入ってるよ。目の前だからちょっと見ようか」
「はい」
ちょこっとそのブランドを眺め『可愛い可愛い』言いながら目的の7階迄エスカレーターで上がる。
「○○ちゃん。用事って何?」
「・・・・・・アルバイトを募集しているブランドがあるんだ・・・・・・募集要項を詳しく見ようと思ってな・・・・・・」
良い加減働きたいのだ。私だって・・・・・・。
7階に着いて目的のブランドのアルバイト募集要項の紙を読んで携帯で写真を撮ろうとするが明るさとぼやけに負けて諦めて目を皿にして熟読して頭に叩き込む。
「さ、行こか」
下りのエスカレーターに乗る。
5階に着いて
「あそこにも髪留め置いてあるからちょっと見ようか」
「うん」
5階で止まりショップに突撃する。
う~ん・・・・・・あまり良いのが無い・・・・・・。
「鈴ちゃん。予算は三千円だからその位だったら何買っても構わないからね」
「はい」
「・・・・・・ごめん、もう1回7階行って良いかな?B級品のセールしてるんだよね・・・・・・あそこ」
「良いですよー」
上りのエスカレーターに再び乗る
また7階だ。
フォーラスの7階がどんだけ好きなんだ私は・・・・・・仙台来る度寄ってるよな・・・・・・。
お目当てのB級品セールの中に三千円で物凄い可愛い服がありじっと見詰める。
「試着してみたらどうですか?」
鈴ちゃんの声に
「いや、この服脱ぐの面倒臭いし合わせるアンダーが無い・・・・・・。ちょっと向かいの店も見たい」
と、いらえる。
「はい良いですよ」
ちょこちょこと見てディスプレイされている服を指さし
「これが欲しいんだ・・・・・・でも高いんだ・・・・・・」
と呟きまた最初の店に戻る
とても素敵なハットがあったが合わせる服が無い上に高い。
その時鈴ちゃんが言った。
「このハットとか鞄ってアレっぽいですよね・・・・・・」
「アレって何よ?」
「ドールが出て来る・・・・・・」
「ネイキッドエイプの『DOOL』か?」
「違くて、ほらドールが戦うアニメにもなった漫画の・・・・・・」
「あぁ『ローゼンメイデン』?」
「そうそう!!」
「確かにそうだわな。欲しいな~。服なら作れるけどハットと鞄は作れないよ・・・・・・」
店を後にする。
またエスカレーターで下って行くと
「○○ちゃんストップ!!」
「はぇ?」
5階でまた止まる。
「さっきも引き止めたんですけど○○ちゃん気付かなくて・・・・・・見たい店があるんです」
「それは済まなかった・・・・・・」
私は耳が悪い。
補聴器着けても聞こえなかったらしい。
現に今鈴ちゃんは私が肩に掛けていたトートの肩紐を掴んで止めてくれた。
鈴ちゃんが行きたかったのは『ワールドワイドラブ』だった。
私も好きなブランドだ。
またしてもにゃんこモチーフの服や鞄に興味を持ったらしい。
鈴ちゃんは猫が大好きだ。私も好きで鈴ちゃん宅の猫2匹を愛している。
ウチでは猫は飼えないのだ。
家の法律である祖母は猫が嫌いだ。
よねを(父)も嫌いだ。
よねをは犬が好きなのだが必ず外飼いでないと駄目なのだ。
犬も好きだが家の中で飼いたいのだ!私と母は!!
「猫が欲しい・・・・・・飼いたい・・・・・・」
と小さく呟きながら鈴ちゃんと共に店内を見る。
鈴ちゃんは穴が空く程見てる気に入った洋服があったらしく、しばらくその服の前で立ち尽くしていた。
私は私で気に入ったパンツが在ったのだが合わせるトップスが無い。
すごく安くなっていたのだが堪えた。
「鈴ちゃーん。この階全部女性向けだから一巡りしようか?」
「・・・・・・はい」
鈴ちゃんとぐるっと回る。
その階に在ったブランド店を全部回りながら
「鈴ちゃ~ん。予算以内なら服でも良いんだぜ~プレゼント~」
「うん・・・・・・」
そして運命のブランド店に足を踏み入れたのだ。
私達は。
『Scolor』だ。
物凄い可愛い動物プリントのTシャツがあって即座に手に取る。
柄も良いのだがデザインも凝っていて前身頃と後ろ丈の長さが違うのだ。
丁度三千円位だ。
私も欲しいが取り敢えず鈴ちゃんに勧めてみる。
「どうよコレ!超可愛い!!」
「う~ん・・・・・・背中の所にラメ付いてるから洗濯が・・・・・・」
「手洗いすれば良いじゃん」
「う~ん・・・・・・」
鈴ちゃんは店の中をうろつく。私も付いて行く。
可愛い店員さんが笑顔で「いらっしゃいませ~」と控えめに声を掛けてくれる。
鈴ちゃんはどんどん服を見ながら「このお店のロゴの女の子の絵が可愛いです・・・・・・」と呟く。
確かに可愛い。
「高いなぁ・・・・・・」
「鈴ちゃん。私は服はヤフオクか古着屋かフォーラスのバーゲンでしか買わないよ?因みにバーゲンは8月頭と1月上旬ね」
「そうなんだ・・・・・・」
上の空で鈴ちゃんが呟く。
取り敢えず一旦店を出る。
隣は『スーパーハッカ』だ。私は大好きなのでにこにこと服を見るが高いので買わない。
フォーラスでの買い物は大体年2回の大バーゲンの時だけだ。
スーパーハッカを出てもう一回りしたので
「じゃ、もう行く?」
と言うと
「さっきのワールドワイドラブの服をもう1回見たい・・・・・・」
と返ってきて仰天する。
鈴ちゃんが丁度自分年代のブランドの高い服を欲しがってる・・・・・・!!
今迄そこまで服には執着しなかった鈴ちゃんが・・・・・・!!
私は嬉しくなり
「良いよ良いよ!!」
とニコニコ着いて行く。
鈴ちゃんは例の服の前で立ち止まり凝視している。
「三千円出したげるから残りの金額自分で出して買ったら?」
「う~ん。部屋着が欲しいんですよね・・・・・・」
ワールドワイドラブは確かに部屋着にしても良いが勿体ない・・・・・・。
溜息を吐いて出る。
「さっきの店にまた行っても良いですか?」
「あの女の子がロゴの?」
「はい」
「うん良いよ」
『Scolor』にまた向かう。
自分が欲しい例のTシャツの前に立ち尽くし色々考える。
普通に持ってるGUの黒のスリムパンツに合わせれば・・・・・・でもそれだけだと勿体ない・・・・・・何かなかったか・・・・・・他に何か・・・・・・
猛烈に欲望と戦う。
だがその日は絶対に欲しい物が在ったのだ。
泣く泣く諦めて鈴ちゃんの所に行く。
セール品の前で立ち尽くしている。
染め物っぽく、独創的なデザイン(鈴ちゃんの後日譚)の服の値札を見ている。
5900円が50%オフになっていた。
「これ・・・・・・半額だと幾ら位でしょうか・・・・・・」
「3000円位だよ」
「じゃあこれをお願いします・・・・・・!!」
髪留めじゃなくて良いのか!?
お洒落への新たな扉を今開くのか!?
私はそんな新しい鈴ちゃんが誕生した瞬間に立ち会えて本当に嬉しかった。
「はいよ!!」
彼女の手から服を引ったくり(心変わりされるのを怖れたのだ)すぐにレジに向かう。
会計は予算通りだ。
「ありがとうございますー。こちらのビニールのショッパーもお入れしますね❤」
店員さんの言葉に鈴ちゃんを振り返り「ショッパーもう1つくれるってよ!!」と言い私に服が入った不繊維で作られたとても可愛いピンクのショッパーを渡そうとする店員さんに
「彼女に渡して下さい」
と、背後に立つ鈴ちゃんを示した。
ショッパーを渡されて彼女はとても嬉しそうな、でも恥ずかしそうな顔をして
「ありがとうございます・・・・・・」
と言ってくれた。
私は本当に本当に嬉しかった。
「じゃ、三越行こっか!!」
「はい」
店を出て鈴ちゃんが呟く
「ロックオンされてたみたいです・・・・・・」
「へぁ?」
「2回目に『Scolor』行った時店員さんに言われたんです」
「何て?」
「『お帰りなさい』って・・・・・・」
私は爆笑して
「あのさー只でさえ私は今日はこんな服装だし鈴ちゃんはカジュアルだし目立ってるんだよ」
そう、その日の私達の格好はお互いが離れすぎていて実は何カ所かで二度見されていたのだ。
「今度はバーゲンの時来ようね」
ご機嫌で言葉を返した。
さてエスカレータで今度は順調に1階迄下りられた。
と、思ったらトラップ発動!!
鈴ちゃんがまた私のトートの肩紐を掴み
「ここ寄りたい!!」
左手にあるアナスイを指す。
「はいはいアナスイね」
もう私は行き慣れてる店内に突撃する。
相変わらず店内の装飾が良い。
手鏡が欲しいのだが私は先日しまむらで一目惚れをして買ったマイメロディの鏡があるので黒い欲望は暴れ出さなかった。
この前購入しそうになったのだ。
危ない危ない・・・・・・。
鈴ちゃんは店の奥に行き私は期間限定で展開されているムーミンとのコラボバッグを手に取った。
相変わらずお高い。
私のアナスイコレクションはトートとマニュキュア4本とハンドタオルと手袋と香水2つだ。
手袋は薄手に見えて暖かくて良い。
鈴ちゃんが戻ってきてアナスイを出れば今度は目の前にツモリチサト。
入らずにはいられない!!
私のお財布はツモリチサトだ。
ここも猫モチーフの服がニューアライバルされていて
「うわー!可愛いー!!欲しいけど高い~・・・・・・」
と騒ぎながら見て買わずに出る。
漸く欲望ビルディング魔窟のフォーラスを出る。
最初に予定していた滞在時間を大幅に過ぎていて流石に腹が減ってきた。
だがまだまだ先が長い。とことん歩く。
三越はまだまだだ。
「三越なんて初めてですよ・・・・・・○○ちゃん、この道の正面に見えてる大きな建物何ですか?」
「市役所じゃない?」
良く知らないので適当に返す。
すまん、鈴ちゃん。
私にとっては三越の1階フロアも欲望ビルディング魔窟なので上の空なのだ。
『市役所』なんて興味無いんだ。
だって角田市民だから。
途中でジブリショップの『どんぐり共和国』を見掛けたが
「入らなくて良いんですか?」
「もういい」
三越を前にして地に足が着いていない。
浮かんでる。
漸く辿り着いたその日の私のお目当てショップは『シュウウエムラ』だった。
お決まりのライオンの彫像を見て鈴ちゃんは
「ライオン!ライオン!!」
と驚いていたがそれは全国の三越の入り口にいる狛犬みたいなもんなんだぜ鈴ちゃん。
突入してシュウウエムラを探すが無い。
鈴ちゃんがその場でスマホとフロアガイドを見るが矢っ張り無い・・・・・・。
「総合カウンターで訊こう・・・・・・」
自力で探すのを諦め案内嬢のいるセーブポイントに行く。
「『シュウウエムラ』どこですか?」
案内嬢は最高の笑顔と声音で天高く私に告げる。
「定禅寺通り店の1階になります」
私は堕天していたのだ。
本店と定禅寺店が別れている事を知らなかった。
とぼとぼと隣の店舗に向かう。
流石に足が痛い。
だが欲しい物はもう目の前だ。
アクエリでエネルギーチャージをして入店する。
きょときょとと入り口付近にある花屋(私はお花が大好きだ・・・・・・)を見ながら奥に向かう。
「あった!!」
叫んで早歩きの前屈姿勢になってクレンジングオイルの棚の前にしゃがみ込む。
すぐに販売員のお姉さんがやって来て
「何かお探しですか?」
と訊かれたので
「3000円位のオイルクレンジングで角栓除去力が強いのはどれですか?」
「こちらになりますね」
「鈴ちゃん、これ買って」
「えぇっ!?」
何故そんなに驚く。
誕生日のプレゼントで3000円位の物という条件を満たしているだろう。
会計をして袋に入れて貰ってる時に鈴ちゃんは私に言った。
「てっきりアクシーズの手袋だと思ってました・・・・・・」
何故(2回目)だ。
アクシーズは仙台中心部には無い。
長町と名取だ。
しかももう4月も近いこの季節。
手袋なんて何処の店も取り扱ってない。
鈴ちゃんの思考回路はミステリアスだ。
スリル満点で楽しい。
鈴ちゃんも販売員のお姉さんに
「彼女に渡して下さい」
と私を示してくれた。
「はい、こちらお品物になります」
他のクレンジングのサンプル迄入れてくれたのに感謝する。
私は戦う。
叶姉妹(好きじゃないが)のモットー通り
『美とは健やかな戦いである』
と思っているからだ。
スキンケアにザクザク金と時間を惜しみなく湯水の様に費やしている。
だから三越の1階フロワが欲望ビルディング魔窟なのだ。
世界中の名だたるブランドが化粧品を取り扱っているから。
出て来られないのを避けてさっさと三越を出る。
暑い暑い。
コートロッカーにぶちこんできて良かった、と話しながら私は思い出す。
欲しい本があった事を
「鈴ちゃーん」
「何ですか?」
「欲しい本があるんだ」
来る時にあゆみブックスがあったのを思い出してそこに向かう
カウンターに直行し
「光文社文庫の新刊は何処ですか?」
と尋ねると無愛想な女性店員が笑顔でいらっしゃいませ、の言葉もなく
「こちらの通路を真っ直ぐに進んで頂き右手にあります」
等とほざく。
普通客が困ってたら探している本のタイトル訊いて売り場案内位するだろう。
レジは2つあってもう1つのレジは稼働している。
並ぶ客もいない時間帯。
元書店員として叫びたい。
『もっと客を大事にしろ。例え単価が安い文庫でも店員の態度が悪ければ買う意欲を無くす』
大きな書店の書店員だからといってそれに甘えるな。
他で買おうかと思ったが帰りのルートには2軒しか本屋が無い。
そしてその2軒は売り場面積が狭い。
必然取り扱い書籍が少なくなっている。
仕方無いのでここで買う。
本当に嫌だったが買う。
新刊が置いてあるエンド台を見るが目を皿にしてもお目当ての三浦しをん著『船を編む』が無い。
鈴ちゃんにも「探して!」と頼むがエンド台には無かった。
光文社文庫の棚の前に立ち面陳されているタイトルを総ざらいしても無い。
『平積みか?』
と思い下を見る。
じっくりと見る。どうしても欲しい。文庫化を三年程は待っていたのだ。
読ませろ!!
鬼の如き顔で(私は本と服を目の前にすると凶暴になる)探す。
漸く大きなポップに『船を編む!文庫化!!』等と書かれているのを発見して無事手に取ってレジに向かう。
無愛想な女性店員側のレジしか無い・・・・・・。
本当の本当に嫌だったが文庫をカウンターに出す。
『いらっしゃいませ!』
の一言も笑顔もなくバーコードを読み取り
「○○○円です」
と言い勝手にカバーを掛ける。
おい、私はカバーは要らない派だ。
BLもカバー無しで電車で読む猛者だ。
猛烈に腹が立ち
『ブ○で化粧が濃くてプロ意識もないんだから笑顔とカバーの有無位は訊け。何様だ』
と思い代金を少し雑に置き普段絶対しないようにしている眉間に皺を寄せて釣り銭を待つ。
店員はまたしても勝手に文庫をビニル袋に入れる。
オイ、カバー掛けたら『袋にお入れ致しますか?』と訊けよ。
カバーかけて貰ったんならもう購入した本だと分かるしレシートもあるんだぞ?
お前に接客の心得を教えた奴は誰だ。
私が殺してやろう。
それとも教わったが実行していないのか?
私が殺してやろう。
苛々は美に悪いのだが思いっきり憎悪をこめて心の中でつばを吐きレジに背を向ける。
鈴ちゃんを探すとすぐ近くでムックを立ち読みしていた。
『家計のやり繰り』関連で涙が出そうになる。
苦労人だもんな、鈴ちゃん・・・・・・。
「会計終わったよ。行こう」
「はい」
出口に向かうとまた鈴ちゃんに止められる。
入ってすぐのフェアー台に『桜』と題された美しいピンク色の装丁の本があって、彼女はそれをパラパラ捲る。
「・・・・・・行きましょう」
本を平積みの上に戻し店を出る。
おそらく私はもう一生この書店には来ないだろう。
アニメイトの店員の勤勉さと接客を見習え。
ジュンク堂と丸善なんて本当にプロだぞ?
この店駄目だ。
潰れろ。
あゆみブックスに後ろ足で砂を掛けながら来た道を戻る。
目の前にセブンがあったので履歴書を購入した。
直ぐに歩き出す。
腹が減った・・・・・・。
外はまた暑くなっていた。
鈴ちゃんが音を上げ
「カーディガン脱ぎます」
「じゃあ、あそこのベンチで脱ごう」
丁度あったベンチに荷物を置き鈴ちゃんはカーデを脱ぎまた鞄に入れた。
ホント大容量な、その鞄・・・・・・私だったらカーデ腰巻きかプロデューサー羽織りにするぜ・・・・・・。
何とか体裁を整え鈴ちゃんは歩き出す。
「私、三越迄行ったの初めてですよ。高校の時初めて仙台にAと来てディズニーストア迄なら行きましたが」
「マジで!?高校生で初めて仙台行ったの!?」
仰天する。
私は中学生の時から月1で必ず仙台に来ていた。
鈴ちゃん、箱入り娘か?
途中で大きな靴屋があったので
「鈴ちゃん。ここも靴屋だよ」
教えると
「入ります」
店内に突入してゆく。
『ABCマーケットはいいのだろうか・・・・・・』と思いつつ付き合って靴を見る。
「歩きやすい靴が欲しいんですよね・・・・・・」
「スニーカーか?あっちだ」
スニーカーコーナーには鈴ちゃんの気に入る靴が無かったらしく私はカジュアル路線の靴が置かれた場所に鈴ちゃんを引き摺って行く。
「これなんか可愛いんじゃない?」
緑色のエスパドリーユを手に取る。
「えーっと・・・・・・サイズがLですね。Mが欲しいんです」
「店員さんに言ってサイズ出して貰いなさい。私疲れたからあそこのソファーに座ってるから」
「はい」
11㎝ヒールは伊達じゃない。
人魚姫の足になってきている。
ぼーっとしながら香水を付け直して背中をソファの背に預ける。
鈴ちゃんの靴選びは難航している様だ。何足も履いている。
そうこうしている内に私の隣に真っ赤な上着を纏ったマダムが座った。
横目で観察していたらマダムはスマホを取り出し優雅に画面をタッチしている。
私はまだガラケーなのに!!
そしてマダム!貴女この店の雰囲気にそぐわないファッション!!
でもそれは私も同じ・・・・・・!!
鈴ちゃんが紺のエスパドリーユを手にして
「これにします。Mサイズ出して来て貰います」
「応」
また待つ。
何故か異様に待たされた。
メイク治しが出来る位待たされたがこんな場所でメイク治しをする程女を捨てていないので取り敢えずタオルハンカチで皮膚を押さえてテカリを取る。
待つのに飽きた所で鈴ちゃんが購入した靴を箱ごとショッパーに入れて現れたので立ち上がる。
「次はマツキヨに寄るよー」
「はーい」
鈴ちゃんはご機嫌な様だ。
勿論私もご機嫌だ。
ショッピングは大好きだ。
自分のも他人のも見るのが好きだ。
「あぁっ!!」
鈴ちゃんの奇声に驚いて
「ど、どしたの?」
と訊くと
「ABCマーケットこっちだったんだ!!」
鈴ちゃんは先程の店をABCマーケットだと思い込んでいた様子だ。
「良いよ良いよ。入ろうよ」
ずかずかと店内に入り「私あそこに座ってるから」と椅子を指し示す。
靴屋は椅子が一杯あって良い。
どっかりと腰掛けていたら直ぐに鈴ちゃんが戻ってきた。
「もう良いの?」
「はい・・・・・・」
店を出る。
「良い靴が無かったのか?」
「いや、そうじゃなくて・・・・・・他店のショッパー持ってるから試し履きして買わなかったら顰蹙受けそうで・・・・・・」
「店員さん気にしないよ~お客様は神様よ~」
接客業だった私は鈴ちゃんに軽く言葉を返してそこにあったツルハドラッグに気付く
「ここ確かキャンメイク入ってたよね・・・・・・」
「入ってますよ」
「欲しい物がある。入ろう」
「はい」
奥のコスメコーナーに突撃してキャンメイクのキャンディラップリップ01を探して即買いする。
鈴ちゃんは私の会計が終わるのを今度は待ってくれていた。
ありがとう。
「マツキヨ~マツキヨ~」
ピヨピヨ鳴きながら進む。
マツキヨに着いた。
入り口付近のヘアケアコーナーをなぎ倒しながら2階へと上がる階段をスカートの後ろを手で掴み上げて上り中2階で足を止めて商品を探す。
オバジC10の40㎜ℓを手に取る。
税抜きで4000円もしやがる。
だからフォーラスであのTシャツを買わなかったのだ。
2階の会計に直ぐに向かいさっさと買う。
鈴ちゃんを探すとコスメコーナーにいた。
私に気付き手を『おいでおいで』のゼスチャーにしているので向かう。
「どした」
「あの・・・・・・眉毛描くやつ何て言いましたっけ?」
「・・・・・・あぁ、アイブロウ」
「これそうですよね」
彼女が示したのはペンシルタイプのアイブロウと眉毛マスカラを一本にしたものだった。
「うん、そう」
「どうやって使うんですか?」
「どうやってって・・・・・・そこに書いてある様に先にペンシルで眉毛描いてその後眉マスカラで発色させるんだよ」
「・・・・・・良く分からないから良いや」
うーん。
鈴ちゃんは眉毛が短い上に薄いのでアイブロウは買った方が良いと思うんだがな・・・・・・。
またスカートの後ろを持ち上げ階段を下りる。
漸く入手したオバジに満足している。
効くのだコレが。
C20にするともっと高い上に冷蔵庫で保存しないといけないので面倒臭いからC10にしている。
「さささ、次はチュチュアンナだ!!」
相変わらず道ゆく人に二度見されつつ前進する。
途中で鈴ちゃんが
「○○ちゃん!見て!!あの2階の店!!」
教えてくれたので見る。
見た事も聞いた事も無いゴスロリ服屋があった・・・・・・。
「寄りますか?」
「いや、いい。また仙台来た時に1人で行く」
「何でー」
「面倒臭い。腹減った」
子供が1人いるな・・・・・・。
チュチュアンナに着いて鈴ちゃんは靴下を見て、下着も見ていた。
「安いのは無いんですかね」
「季節の変わり目だね。底値の1000円セットは」
「うむー」
「今一番安いのはこれだ、1330円セット」
「何色が良いかな」
「私はピンク推し」
「・・・・・・水色が良いなぁ」
「水色も綺麗だよな」
「試着した方が良いよね」
「当然だ」
鈴ちゃんは下着を持ち店員さんと共に試着室に消えた。
この店には全身が映る鏡がいくつもある。
1枚の鏡の前に立ち、顔がテカっていたのでまたタオルハンカチで押さえる。
己の足を見て
『良し、今日も細い。むくんでない。毎晩の激痛リンパ線マッサージの賜物だな』
と合格点を自分で出すあほ。
それが私だ。
ナルシストになっていたら鈴ちゃんが試着室から出て来て下着一組と靴下二足をショッピングバッグに入れていた。
「それにするの?」
「うん、もう1つ試着したんだけどそっちはちょっと気に入らなくて」
「ふむふむ」
レジで会計をする鈴ちゃんを出口で待つ。
腹が限界迄減っている。
一刻も早く何か食べなければ機嫌が悪くなってしまう。
無事会計を終わらせた鈴ちゃんがやって来て今度こそPARCOに向かう。
目的はスイーツパラダイスだ。
80分でケーキとパスタとカレーとアイスが食べ放題で1人1580円。
鈴ちゃんはバレンタインデーに我が家にチョコレートをくれたので少し遅いがホワイトデーのお返しだ。
足の痛みに耐えながらPARCOの8階にエスカレーターで上がりスイパラを見ると長蛇の列だ。
並ぶのが大嫌いな私はすぐに
「9階のイタ飯屋に行こう。私はパスタが食べたい」
と告げる。
鈴ちゃんは快諾してくれエスカレーターでもう1階上がる。
「ちょっとトイレに行ってきます」
「はいはい」
雪隠に行く鈴ちゃんを見送りイタ飯屋のメニューを凝視する。
『バイキングセット』がある。
パスタかピザを選んで飲み物が飲み放題、軽食が食べ放題。
『これだな』
と決めて鈴ちゃんを待つ。
・・・・・・長い。
混んでいるのか、鈴ちゃんの尿が止まることを知らないのか、またあほな事を考えじっと待つ。
ようやっとやって来た彼女を店に引きずり込む。
席に案内され
「バイキングセットにするよ。ほら、パスタかピザ選んで」
「はい」
「私明太子クリームパスタな」
「・・・・・・じゃあ私はこの和風パスタを」
「すいませーん!」
即座にオーダーする。
もう腹は限界迄空いている。
軽食コーナーに向かいグラタンとポテトサラダを大量に取り席に戻る。
「○○ちゃん。ポテトサラダ大量だね・・・・・・」
「好物だからな。飲み物取って来て良いか?」
「はい。待ってます」
優しい鈴ちゃんの好意に甘えて自分の食事を先に獲得しようとする大人げない私・・・・・・。
いつもごめん・・・・・・。
オレンジジュースをピッチャーからコップに注ぎストローをさして席に戻る。
「さ、いってらっしゃい鈴ちゃん」
「はーい」
鈴ちゃんの背中を見ながらウエットティッシュで手を拭き先に食べ始めるやはり大人げない私・・・・・・。
鈴ちゃんはお茶(何の茶かは訊かなかったので分からない)と軽食を持って来た。
大量にガツガツ喰ってる私よりはるかに少ない量の軽食を持って来て
「あぁ・・・・・・お箸が要りますね。取って来ます」
また軽食コーナーに行った。
鈴ちゃんのお皿の上には私が悩んで取って来なかった春雨のサラダがあった。
戻って来た鈴ちゃんが春雨のサラダを食べている時に
「鈴ちゃん。それ美味しい?」
尋ねる。
「美味しいですよ」
「じゃあ喰おう」
「・・・・・・私、実験台?」
「ふんふふ~ん♪」
誤魔化して席を立つ。
フォカッチャと肉団子とマリネと春雨のサラダを取ってもう1回オレンジジュースを注ぎ席に戻る。
がっついて喰っていたらパスタが来た。
猛烈な勢いで食べ終える。
もう満腹だ。
満足だ。
最後にピーチティーが飲みたくなりドリンクバーコーナーに行くとピーチティーは残り僅かだった。
グラス半分程で良いので丁度良かったなぁ・・・・・・と思って注いだらカウンターの向こうのお兄さんが
「お客様、お注ぎ致しますよ」
と、素敵な笑顔で手を差し伸べてくれた。
かなり好みのタイプのお兄さんだったので『もう要りません』とは言えず
「はい・・・・・・」
グラスを差し出してしまった!!
満杯になったグラスを持って席に戻るとこれまた満腹で動かない鈴ちゃんが私に訊いてくる
「○○ちゃん、それ何?」
「ピーチティー・・・・・・」
「え?桃嫌いだったよね?」
「うん、嫌い。でも紅茶にすれば飲めるんだ。私紅茶大好きだから」
「そうなの」
大量のピーチティーに苦しむ私を見て不思議そうに
「何でそんなに満杯で持ってきたんですか?」
痛い所を突かれる。
「いや、ちょうどピッチャーの残りが良い塩梅に残ってて全部注いだらカウンター向こうの店員さんに更に注がれた・・・・・・」
「・・・・・・私が残り飲んであげましょうか?」
「・・・・・・ごめん。お願い・・・・・・」
鈴ちゃんはグラス半分に残ってたピーチティーを15秒程で一気呵成に飲んだ。
本当に15秒位だった。
誇張では無く。本当です・・・・・・。
「さて、行くか。エスパルのマリクワに用がある。今日は私の奢りね、ホワイトデーのお返しだから」
「ありがとうございます」
キャッシャーに向かうと先程のお兄さんがレジにいた。
その時私は発見した。
奥にちんまりと置かれたソフトクリームのコーナーを・・・・・・。
「しまった!アイスがあったのか!!」
遠慮無く叫ぶとお兄さんは
「食べて行かれますか?」
と笑顔で訊いてくれたがもう満腹なので
「いえ、良いです」
断って会計を済ませエスカレーターに乗る。
エスカレーターは何故か下から温風が吹き上げてきて私のスカートを吹き上げる。
ラインの綺麗なスカートなのでまるでゲーム・FFシリーズのCGみたいになる。
「何だこの風は・・・・・・」
「スカート凄いですね・・・・・・」
2階迄下りてペデストリアンデッキに出て仙台駅の中に入ってそのままエスパルに入店する。
またエスカレーターでエスパル3階に上がりマリクワに到着する。
スキンケアラインの棚を見るが目的のブツが無い。
しょうがないので販売員のお姉さんに訊く。
「すいません。ポアクリアキットありませんか?」
「申し訳ありません。売り切れでございます」
「そうですか」
諦めて潔く店を出る。
鈴ちゃんは待っていてくれた。
エスカレーターで下りながら私はこれ以上恥辱的な行為は絶対無い、というお願いを鈴ちゃんにした。
「鈴ちゃん・・・・・・デジカメで全身写真どっかで撮ってくれ・・・・・・」
「何で!?」
「バイトの募集に全身写真も必要なんだ・・・・・・流石アパレルだよな・・・・・・」
ニヒルに笑う。
そんな私に鈴ちゃんはガッツで応えてくれた
「分かりました」
ありがとう!
本当にありがとう鈴ちゃん!!
でもなるべく人気の無い所で撮って下さいね・・・・・・!!
最初から東口にあるヨドバシカメラに用があった私達はとことこ改装中の仙台駅の連絡通路を歩いてヨドバシカメラの駐車場を右手に見た。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
人気が少ない。
「鈴ちゃん・・・・・ここで撮ろう」
「そうですね」
階段を下りる。
写真の事で頭が一杯になっていた私は普通に階段を下りてしまい
「スカート汚れますよ!」
鈴ちゃんの声に慌てて後ろを引き上げる。
年上なのにいつも面倒見てくれてありがとう・・・・・・。
お家に遊びに行って2時間爆睡しても怒らないでいてくれて本当にありがとう・・・・・・(何の為に遊びに行っているんだ)。
さて、階段を下りきって私はキョロキョロした。
人通りが少ないと思われる陰に入り込みデジカメを取り出す。
「3枚程撮ってくれ」
「ここで良いの!?」
「うん」
元コスプレイヤーの私は写真を撮られる事に慣れきっている。
しっかりポージングして撮って貰った。
「ありがとう!じゃヨドバシ行くか!!」
エスカレーターに乗りヨドバシの3階に向かう。
鈴ちゃんの用事はゲーム。
私の用事は今撮った写真の現像と履歴書に貼り付ける証明写真撮りだ。
エントランスのフロア案内を鈴ちゃんが見ている時に写真のプリントアウト機を見つけた私は即座にその前に陣取った。
デジカメからSDを引き出し、鈴ちゃんと共に画面を見ながらプリントアウトを無事終わらせる。
「じゃ、ゲームコーナー行こうか。2階だよね」
「はい」
ゲームコーナーに辿り着くと鈴ちゃんはお目当ての携帯ゲーム機の前で立ち止まって熱心に見てる。
その隙に店員さんと「証明写真どこで撮れますか?」「1階出口でございます」「ありがとうございました」淀みなく会話して鈴ちゃんの所に急いで戻る。
鈴ちゃんはまだゲーム機を見ていた。
「何を悩んでいるの?」
「小さいのを買うか大きいのを買うか・・・・・・」
「値段3000円位しか違わないじゃん。『大は小を兼ねる』で私なら大きい方にするよ」
「でも画面が引き延ばしとかされたら・・・・・・」
「あぁ、それは困るね」
「大きい方なら大河原のブックオフで中古があったんですけど・・・・・・」
「じゃあそっちで買えば良いじゃん」
ゲームは好きだが未だにプレステでサガフロをやり続けている私は気楽なものだ。
鈴ちゃんの懊悩が分からない。
彼女は本当に熱心にサンプルを触ってボタン等の感触迄確かめている。
「ん、もう良いです。次は何処ですか?」
「1階。出口付近」
「分かりました」
途中迷ったがまた店員さんに順路を教えて貰い順調に証明写真機に辿り着く。
順路にTIFFANYの腕時計とかあって物凄く欲しいのだがそれどころじゃないので素通りする。
そんな私の欲望も知らず無垢な鈴ちゃんは
「この辺で待ってます」
と言ってくれて助かった・・・・・・もう足の痛みが限界で無駄に歩く事は許されなかったのだ。
さっさと証明写真を撮って出ると鈴ちゃんはすぐそこにいた。
「帰ろ」
「はい」
「コート忘れずに取って行かないとね」
横断歩道を渡りまたエスカレーターに乗って駅ナカに入る。
ぼーっと改札に向かおうとする私に鈴ちゃんの
「○○ちゃんコート!!」
と悲鳴が上げられる。
危ない・・・・・・さっき自分で言った事忘れてる・・・・・・。
いくら疲れたからって・・・・・・。
鈴ちゃんがいて良かった・・・・・・。
3階のコインロッカーに向かいコートを無事回収する。
コートを手に提げ今度こそ2階の改札に向かおうとする私を鈴ちゃんが
「待って!」
と、止めて新幹線の改札南口前の手すりに鞄を乗せてゴソゴソと何かを探して取り出す。
「○○ちゃん。ちょっとこれ持ってて」
青い小さなビニル地だ。
鈴ちゃんは靴やコートを持ち直して私の手に在ったビニル地の物体を開く。
超でかいバッグになった・・・・・・。
「凄いなソレ」
「でしょ?」
荷物をどんどん入れてゆく。
「うん。行こう」
大きなバッグを抱えて鈴ちゃんが言うので2階正面改札に向かう。
東北本線上りは5時1分発だった。
20分位時間がある。余裕だ。
改札を抜けて5番線ホームに降り立つとまだ人はそんなに並んでいなかった。
『今日は絶対座りたい!座れなかったら死ぬ!!』と思っていた私は安堵する。
二人共疲れと荷物の重さにぼーっとして話もせずに立ち尽くす。
電車が来たので乗り込む。
私は母に『5時35分に船岡駅に着きます。宜しくお願いします』とメールを打ち、鈴ちゃんはお兄さんに『今から帰る。疲れた・・・・・・』みたいなメールを送信したらしい。
お兄さんから返ってきたメールに何故か鈴ちゃんは瞠目して私にそのメールを見せてくれた。
そこには・・・・・・
『つ、強い。強すぎる!とりあえず最強の持ちキャラで待ってる』
謎のメールが届いていた。
私も瞠目する。
「●●(鈴ちゃんのお兄さんの名前)君は何を待ってるの・・・・・・?」
「分かりません・・・・・・多分誰かと間違えたのではないかと・・・・・・」
鈴ちゃんがまた●●君にメールをした。
返信が来たらしい。
「矢っ張り誰かと間違えたみたいです。あの冷静な兄さんが間違えるなんて・・・・・・」
「んだな・・・・・・あのいつも冷静な●●君がな・・・・・・」
後は無言で電車に揺られる。
鈴ちゃんは朝と同じく目を瞑っている。
また電車に35分揺られ船岡駅に到着してホームに出る。
私は私の前を歩く女性の足に目が釘付けになった。
ピンクの膝丈スカートの下からまぐろの様にぶっとい足が見えてしかも履いてる靴が異様に小さい。
ふくらはぎの物凄い太さと小さすぎる靴の対比が強烈なのだ。
私の目線が何処にあるか気付いた鈴ちゃんが
「こら!○○ちゃん!!そんなに見ないの!!」
「いや、アレすげぇよ。今迄見た足の中ではダントツだね」
「聞こえるって」
「聞こえねーよ。鈴ちゃん『マヌケの小足』って知ってるか?」
「こらー!!」
怒られながら改札を抜けて駅から出、母の車を探す。
無い。
ちょっと不安になったが30秒程で母の車はやって来た。
「ただいまー」
と二人共乗り込む。
鈴ちゃん宅に向かい無事送り届け私達も自宅に帰る。
漸くヒールから解放された足にマイメロディのスリッパを履き自室に戻る。
鈴ちゃんに撮って貰った全身写真を携帯で写メにし友人のじゅうん(仮名)に
『ただいま~。今日はこんな格好で行ってきたよー』
と写メ添付にして送信する。
返信はすぐ来た。
『派手だねー!!』
そうだよ派手だよ~♪
取り敢えず楽しかったので良かった。
街行く人々の視線が痛い格好のアンバランスな2人だったがな。