ブナの中庭で

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「無念の撤退」の思い出

2008年09月05日 | Colombia
先日アフガニスタンで伊藤和也さんが拉致・殺害され、ペシャワール会が現地より一時撤退すると報道がありました。
インタビューに応じる会の代表の中村哲医師。苦渋に沈んだ表情。

よくわかります。
私もColombiaコロンビア共和国で「無念の撤退」を経験しました。



青年海外協力隊員として配属されたのが、Colombiaの北東部、ノルテデサンタンデール州の州都Cucutaククタ市。
協力隊のシステムとして、途上国政府から日本政府に対して協力隊員の派遣要請があり、それに応じて隊員が赴任することになっています。私の場合もノルテデサンタンデール州からの要請でした。

私が現地に到着したまさにその日に州知事が新しく替わり、私を要請してくれた州教育長が、なんとクビになってしまいます。
そしてやってきた新任の教育長は、こう言いました「自分は要請した覚えが無い。だからあなたをここでは引き受けられない」
ということで、私は赴任してすぐ解雇されました(というか就職以前だよね!)

悔しいけれど仕方ありません‥‥。知り合いが全くいない異国の地で最初にしたのは「職探し」でしたね~。

「えっ?日本に帰国すればよかったのに、だって?」
日本の職場には休職届を提出済みで、既に代替の方もいたので戻れなかったんですよ。

毎日気温40度になる炎暑の町を歩き回って、何とか仕事を探しだして就職し、住む家も見つけました。この間に強盗に遭うわ、赤痢に罹るわ、ゲリラ戦闘にも遭うわ‥‥。毎日ビックリする事件の連続でした!
(これを語り始めたらブログ3ヶ月分ぐらいになるので、このへんでやめておきますが )

次第に仕事も軌道に乗り始め、私が主催する講習会が順調に開かれるようになり、参加者も増えてきて連日満員御礼。
「キャー、順調だよ、嬉しいな。Colombia大好き!

ところがその頃、住んでいたククタ市の治安は急激に悪化。
政府、麻薬マフィア、反政府ゲリラの三つ巴の内戦状態に突入します。毎日戦車がやってきて撃ち合いに‥‥。 週に一回は爆弾テロも。
私もいつか流れ弾にあたるかも‥、という状況でした。

そしてとうとうJICA事務所から「ククタは極めて危険。即刻荷物をまとめて首都に引き上げよ」と撤退命令が下ります。

「職探しからずっと苦労して、やっとここまでこぎつけたんです。しかも任期はあと半年。その毎日に講習会の計画ができているんですよ。私は危ないからってククタの人たちをほっぽり出すなんてこと、できません。最後までククタに残ります!」
と伝えたら、JICA職員の人がはるばるやって来られて、強制撤退となりました。

泣く泣く(本当にボロボロ涙を流して)荷物をまとめCucutaを離れました。



今日は中村医師のインタビュー記事を読んで、思い出したことを書きました。

「えっ?その後はどうしたかって?」

首都に撤退した私はあまりの無念さに落胆激しく、数日は放心状態。
その後、なんとか気を取り戻します。そしてククタでやっていた講習内容をテキストにまとめ、日本のビデオ教材のスペイン語版を作り(当時は海賊版、後日許可をいただく)、各500部ほど配布しました。
そして任期もあと3ヶ月というときに、別の町の国立大学から声がかかって、大学で教鞭をとるという素晴らしい経験もさせていただきました。
つまり撤退があったおかげで、また次のステップに進むことができたんですね。
    挫折もいいもんなんだなぁ~、ホントホント。
   (というよりも、私の人生、挫折の連続なんだけれど‥‥)

4 コメント

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卓袱堂さんへ (Repu)
2009-07-23 20:48:51
ようこそ!コメントありがとうございました。
配属先が無いのは不安だけど、必要度の「鮮度が高い」、ナルホド、いい表現ですね、よ~く分かります。

コロンビアへ赴任とは、ああうらやましい。
コロンビアは実に魅力に富んだ奥深い国です。
しかも最近は最大の懸案事項だった治安が大幅に改善されたようだし、もともと親日派が多く大変好意的に迎えてくれる国民性です。なによりラテン系で明るく楽天的というのがいい。
卓袱堂さん、どうぞバリバリやってくださいね。
HPも拝見しました。日本から応援しております!
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エジプト⇒コロンビア (卓袱堂)
2009-07-23 10:13:36
古い(?)記事にコメント申し訳ございません。
私も、二本松での訓練中に配属先がなくなるという、同じような経験をした元隊員(エジプト)なので…懐かしくて書き込みをさせて頂いています。

配属先のない出発は同期で私だけだったので、皆に心配されましたが…結果は(欲しいと思っている側の鮮度もあり)とても充実した2年+延長でした。炎天下の就職活動(笑)けっこう楽しかったです~

あれから10年、今度はSVとしてコロンビアに行きます。
アラブ圏と南米…文化的・地理的に地球の裏側といえそうな国でイイ感じにシャッフルされた人間が出来上がりそうです!
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たいしたことありませんよ (Repu)
2008-09-05 18:54:09
青年海外協力隊員をはじめとして、途上国で活動するNPOなどの方々は、それぞれ様々な苦労をされていると思います。私だけじゃないよ~。

コロンビアに居たその時は「毎日が大変だ、これ以上耐えられない!」なんて思っていたものです。
でもね、実は一番大変だったのは、日本に帰国した時。逆カルチャーショックでウツ病になりそうでした。
え?いまでも人間ヘンだって? 
誰だ~、そんなことつぶやいているのは!?
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Unknown (さとりん)
2008-09-05 10:08:30
改めて聞いてみても、ものすごい経験したんだなーと……なんか、言葉もありません。

今回の伊藤さんのことは、とても残念なことでしたが、それでも、うちの娘などは「日本人にも、そんなすごいことをしている人がいるんだー」と感心していました。

ただ、今回のRepuさんの文を読んで、伊藤さんのことも、そんなふうに深く捉えられたら、もっとよくわかってもらえるのに(ニュースでは、残念ながら心のことまでは伝わって来ません)と思いました。
一般の日本人は「どうして、そんな危険なところにいたの?」くらいにしか思わないかもしれないですから。

Repuさんの、その経験を、もっと外で語れる場があるといいですね。
そういうことがわかれば、今回の伊藤さんのことなども、もっとちゃんと理解できるのにと思います。
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