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出し平ダムの排砂問題、判決が出ました

2008年11月28日 | 環境問題
黒部川にある関西電力の出し平ダム。排砂ゲートをもち、実際に排砂実験が繰り返し行われたダムです。

そもそも河川には「侵食、運搬、堆積」という3つの作用があります。
しかし河川にダムを建設してしまうと運搬が中断されてしまい、下流地域や河口付近で堆積作用がおこらず、海岸がやせ細ってしまう例は日本中に見られます。

では堆積はどこで起こっているか?それはダムの中です。
建設され年月が経過したダム湖の底には、砂や粘土が厚く堆積し、貯水量が年々減少してしまいます。

そこで解決策として、この出し平ダムには、湖底に溜まった土砂を排出する「排砂ゲート」が作られ、実際に排砂実験が行われたのでした。

その排砂の水を目の当たりにしたことがあります。
梅雨末期、大雨が降り川が増水した最中、関西電力はゲートを開けました。
ダム底から流れ出した水は、真っ黒で異臭漂う、まるで「ドブの水」。
湖底に堆積した土砂と有機物が嫌気的環境(酸素が極少)で封じ込められ、硫化水素が発生していたのです。
各種の水質項目(pH,酸化還元電位,酸素要求量など)は全て激変しました。
(あの「死の水」の色と臭い、みなさんも体験されたらビックリされること間違いなしですよ‥

「死の黒水」が流入した黒部川河口の富山湾では、ワカメや魚に大打撃が発生し、漁民のみなさんには大きな被害が発生しました。
そして、漁業者などが関西電力に排砂の差し止めと損害賠償を求めた裁判をおこしたのです。

(写真:北日本放送)

11月26日、富山地方裁判所はワカメの収穫減少との因果関係を認め、一部原告に賠償金およそ2千700万円を支払うよう関西電力に命じました。しかし排砂の差し止め請求については棄却しました。

現在、日本には多数のダムがあり、そのいずれも湖底には堆積物がたまり続けています。一方、日本の海岸は痩せるばかり。
河川は地表の血管です。「河川の三作用:浸食・運搬・堆積」を停めてしまえば、必ずや歪みが生じます。
この出し平ダムを教訓に、ダムのデメリットにも目を向けてみませんか。

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