<<Ep6再考察>>
★Ep6における碑文の謎
(1週目)★ヱリカの正体で私は、Ep6では碑文が解かれたと考察した。しかしEp6には碑文の謎が解かれたことを匂わせる描写がなく、“ノックス第8条。提示されない手掛かりでの解決を禁ず。”に反する。それでもなおEp6では碑文が解かれたと解釈したのは、そうでなければ矛盾が解消できないと考えたからだ。
だが(2週目)の今は、推理の折り返しを経て多くのことが明らかになっている。Ep6では碑文は解かれていないとしても矛盾なく考察を進めることができるようになっているかもしれない。なので、改めて、Ep6では碑文は解かれていないとしてEp6の考察を進めていくこととする。
★Ep6の犯人
Ep6では碑文は解かれていないというのなら、Ep6の殺人は碑文殺人と言うことになり、それならその犯人は真犯人なので、Ep6の犯人は真犯人の紗音である。
事件発覚後すぐは、まだラウンジに全員集合する前で、多くの人間が自由行動をとることが可能なタイミングであり、紗音はこのタイミングで殺人を実行できる。
★ヱリカ本人
ヱリカが“私が殺した5人全員”と告白している以上、ヱリカは確かに犯人である。
しかし、Ep6の犯人は真犯人の紗音である。
つまり、Ep6において、紗音はヱリカ本人である。
★もうひとりのヱリカ本人
(1週目)★ロジックエラーの謎の答えで述べたが、所在確認後、ヱリカが部屋の外に移動するその隙に、救出者はヱリカと一緒に部屋の外に出た。
紗音はヱリカ本人であるから、紗音が隣部屋の外に移動するその隙に、“救出者”が紗音と一緒に隣部屋の外に出たことになる。ところが、戦人を救出したのは、間違いなく嘉音本人であるから“救出者”は“嘉音”である。そして、紗音は嘉音本人であり、隣部屋には他に“嘉音”はいないので、紗音が戦人を救出した“救出者”ということになる。
つまり、紗音が部屋を出るということは、“ヱリカ”であり“救出者”でもある人物が部屋の外に出るということになる。
ところが、“私は救出者ではない”、すなわち“ヱリカ”は“救出者”ではないので、矛盾が生じる。
これは、紗音はヱリカ本人であるからと言って、紗音が客室に向かったと短絡的に考えたことで生じた矛盾である。つまり、紗音以外にもうひとり、客室に向かったヱリカ本人が存在しているということである。
では、そのもうひとりのヱリカ本人は誰なのか。
それが紗音と同じ隣部屋に居る人物だとすると、その“もうひとりのヱリカ”と一緒に部屋の外に出た“救出者”は“嘉音”である紗音ということになる。しかし紗音はヱリカ本人であるから、やはり“私は救出者ではない”に抵触し、矛盾が生じる。
だから、“もうひとりのヱリカ”はいとこ部屋に居た、蔵臼、留弗夫、朱志香、源次、郷田のなかに存在する。
さて、ヱリカが部屋の外に移動するその隙に、救出者はヱリカと一緒に部屋の外に出るのだから、“救出者”もこの5人の中に居る。そして、この5人の中で“救出者”となれるのは、嘉音本人である朱志香だけである。戦人を救出したのは嘉音本人である朱志香である。ここで、朱志香がもうひとりのヱリカ本人だとすると、また“私は救出者ではない”に抵触して矛盾が生じるので、朱志香はヱリカ本人ではない。
蔵臼、留弗夫、秀吉、郷田たち4人は共犯者ではない。もちろん犯人でもないから蔵臼、留弗夫、郷田が“ヱリカ”とは考えづらい。ただこれは、絶対の理屈ではない。だが、彼らよりも“ヱリカ”であると考えやすい人物が居るので、無理に彼らがヱリカ本人であるとは主張しない。つまり、Ep6において、源次はヱリカ本人であると主張する。“もうひとりのヱリカ本人”とは源次である。
★ヱリカ本人であるために
紗音は不測の訪問者に備えるために、六軒島近海を航行する船から行方不明になった人物の有無を確認していた。そして、「新堂(仮)ヱリカ」なる人物が行方不明になっていることを知った。Ep6での紗音はこの事実を利用し、ヱリカが六軒島に漂着したという幻想を生み出し、碑文殺人計画に利用することにした。
まず、“ヱリカ”のキャラクターを即席で固め、紗音がそのキャラクターで、薔薇庭園で真里亞と接触し、ヱリカを名乗る。そして、真里亞の案内という形で使用人室に行く。使用人室には真犯人の共犯者である源次が待機している。
そこで、紗音と源次が、交互に、“ヱリカ”のキャラクターで魔法やベアトリーチェを否定するような発言をして、真里亞に喧嘩を売る。そのうえで、紗音が“ヱリカ”として振る舞うときには源次が“ヱリカ”をたしなめ、源次が“ヱリカ”として振る舞うときには紗音が“ヱリカ”をたしなめる。
普段は、ベアトリーチェは“い”ると言っている紗音と源次が、突然ベアトリーチェを否定したり、かと思ったら否定するもう一方をたしなめたりしている。すると、真里亞には“ヱリカ”が紗音と源次の間を交互に憑依しているように見える。
こうして真里亞は、ベアトリーチェを否定する許しがたいキャラクターとして“ヱリカ”を認識する。そして、その“ヱリカ”のキャラクターを演じた紗音と源次は、“ヱリカ本人”の資格を得る。
“ヱリカ”は即席のキャラなので、“ヱリカ”として振る舞うのが紗音だけだと、紗音に“悪い紗音”が憑りついたかのような解釈を、真里亞にされてしまう可能性があったので、あくまで“ヱリカ”というキャラクターで定着させるために、紗音は自分以外の人物として源次の協力を必要としたのだ。だからこれは決して赤字を利用して謎を解くことを想定したトリックではない。
★“ヱリカ”
ベルンカステルの駒であり、ベアト世界で推理バトルをしているヱリカを、便宜上「メタヱリカ」と呼びます。
また、Ep5のゲーム盤上に登場する“古戸ヱリカ”を「Ep5ヱリカ」、Ep6のゲーム盤上に登場する“ヱリカ”を「Ep6ヱリカ」と呼びます。
「Ep5ヱリカ」:Ep5の古戸ヱリカは、既出の登場人物の別名という意味でもなく、正真正銘Ep5で初登場の人物。紗音は不測の訪問者に備えるために、六軒島近海を航行する船から行方不明になった人物の有無を確認していて、「新堂(仮)ヱリカ」なる人物が行方不明になっていることを知っていた。その「新堂ヱリカ」が本当に六軒島に漂着し、そのときに初めて“古戸ヱリカ”を名乗った。
「Ep6ヱリカ」:物語当初から登場していた人物の誰かが、ヱリカを名乗っているのが、Ep6ヱリカである。その誰かとは、“紗音はヱリカ本人である”“源次はヱリカ本人である”ということで、紗音と源次である。紗音は不測の訪問者に備えるために、六軒島近海を航行する船から行方不明になった人物の有無を確認していて、「新堂ヱリカ」なる人物が行方不明になっていることを知った。Ep6での紗音はこの事実を利用し、その人物が六軒島に漂着したという幻想を生み出し、碑文殺人計画に利用した。
「メタヱリカ」はどういう存在と考えるべきなのか。
Ep5では、幻想大法廷で、ベルンカステルが、“あなたの封印も赤き真実も完璧よ。”とメタヱリカをほめるシーンがある。しかし、ゲーム盤上で封印を 施したのは厳密にはEp5ヱリカなので、そのEp5ヱリカの行動をもってしてメタヱリカをほめたということは、Ep5ヱリカはメタヱリカに該当する人物であるということである。
Ep6では、Ep6ヱリカが行った行動を、メタヱリカが、“私”が行ったと赤字で言及するシーンが多々登場する。つまり、Ep6ヱリカはメタヱリカに該当する人物であるということも言える。
ところが、Ep6のヱリカはEp5の古戸ヱリカとは別人である。Ep5ヱリカもEp6ヱリカもメタヱリカに該当する人物であるのに、別人であるという。これは一見大いに矛盾する。
しかしここで、Ep5ヱリカの存在も、Ep6ヱリカの存在も、紗音が不測の訪問者に備えるために、六軒島近海を航行する船から行方不明になった人物の有無を確認していて、「新堂ヱリカ」なる人物が行方不明になっていることを知っていたからこそ、ゲーム盤上に存在し得たということが鍵になる。
紗音は「新堂ヱリカ」なる人物が行方不明になっているという情報を得たとき、そこから様々な碑文殺人の展開し得る可能性を考える。ヱリカが島に漂着して探偵の如く振る舞う可能性、あたかも漂着したかのように見せかけ名前だけ利用する可能性等々、これらは現実には可能性は薄いが、既存の推理小説に存在するパターンでもある。つまり、メタヱリカは、紗音が「ヱリカ」という名前の行方不明者の存在を知ったときに考えた可能性の集合体であると主張する。メタヱリカは、Ep5ヱリカもEp6ヱリカもその他の可能性の「ヱリカ」も全てを包括する存在である。だからメタヱリカはゲーム盤上でEp5ヱリカとしてもEp6ヱリカとしても振る舞うことができるのだ。
★“ヱリカ”の受け入れ
メタヱリカは、紗音が「ヱリカ」という名前の行方不明者の存在を知ったときに考えた可能性の集合体である。ということは、メタヱリカの存在は、紗音に依存する。ということは、ベルンカステルなど関係なく、ベアトは最初から“ヱリカ”をゲーム盤上に配置することもできた。すなわち、“ヱリカ”はもともとベアトが用意していた駒である。だが、“ヱリカ”の存在はかなりイレギュラーなので実際にはベアトが“ヱリカ”を用いることはなく、駒置き場にしまわれていた。それにベルンカステルが目を付け、使われていなかった駒を自分の手駒として用いただけのことだったのだ。
ベアトが用意していた駒が、ベアトのゲーム盤に受け入れられるのは当然のことなのだ。
★自己紹介の意味
Ep6開幕当初はバトラも、ヱリカとの対決を目的としていた。そのバトラは如何にしてヱリカと戦うつもりでいたのか。
ロジックエラーを除くと、バトラの用意したトリックは、“第一の晩の犠牲者全員の死んだふり”である。ファーストプレイで思い至らなかった私がしょぼいとは口が裂けても言えないが、少なくとも、ヱリカに通用するような代物ではない。実際このトリックはヱリカに看破され逆に利用されている。
有能なバトラがヱリカと対決するのに、このトリックをメインに据えるとは思えない。古今東西の推理小説を知っているヱリカを負かすには、魔女ならではのアンフェアぎりぎりのトリックが必要だ。ゲームの全てを理解してなくても解けるような凡庸な謎をいくら出してもヱリカは屈服などしない。
ではバトラはどのようなトリックでヱリカと戦うつもりだったのか。これは想像になるが、メタヱリカの思い違いを利用したトリックだったのではないかと考える。
メタヱリカは、自分自身を、Ep5ヱリカと全く同一の存在と考えていたのではないだろうか。つまり、自分はプレジャーボートから転落して溺死したところをベルンカステルに駒として拾ってもらった存在であると考えていた。だから、Ep6のゲーム盤に降り立ったときも、Ep5ヱリカと同じ、六軒島に漂着して“古戸ヱリカ”を名乗った、探偵古戸ヱリカとしてゲーム盤に登場していると、思い込んだ。しかし実際は、紗音と源次が、ヱリカを名乗っているのが、Ep6ヱリカである。
この思い違いをどう利用するかというと、例えば、第二の晩以降も事件が進んでいくにつれ、手掛かりが増え、容疑者が絞られていくとする。そして最終的に、ヱリカ以外に犯行が可能な人物がいなくなってしまう。しかし、ヱリカには自分が殺人を犯したつもりはない。すると犯行可能な人物がいなくなり、ならば犯人は魔女なのか?ということになる。
正解は真犯人の紗音が犯行を行っているわけだが、Ep6では紗音はヱリカ本人であり、そして、源次はヱリカ本人である。つまり、Ep6の六軒島に実在する“ヱリカ”は、真犯人と真犯人の共犯者である。ファンタジーシールで“ヱリカ”が紗音のアリバイを証明したとしても、実際には、源次(ヱリカ)が紗音のアリバイを偽証しているのである。
メタヱリカが自分自身を、Ep5ヱリカと全く同一の存在と考えている限りこのトリックを解くことはできない。屈服せざるを得ない。これが、バトラが用意していたであろうメイントリックと思われる。
ここでEp6ラストのメタヱリカの自己紹介、“初めまして、こんにちは! 探偵ッ、古戸ヱリカと申します!!”。探偵古戸ヱリカを名乗ったうえで“初めまして”と言えたということは、今まで探偵古戸ヱリカ、すなわちEp5ヱリカはEp6に登場していなかったことに気付いたということだ。これは、メタヱリカが自分自身を、Ep5ヱリカと全く同一の存在と考えているうちは決して言えないことである。つまり、最期の最後にメタヱリカはバトラが用意していたメイントリックの核を見抜いたのだ。幸いロジックエラーの謎が残っているので魔女側の勝利に終わるが、本来ならバトラに対する致命的な一撃である。確かにこの自己紹介は、命を賭した最期の一撃にふさわしい。
★18人目と17人・解答編
10月4日、親族を乗せた船が六軒島に到着した時点で、六軒島には、蔵臼、絵羽、留弗夫、楼座、朱志香、譲治、戦人、真里亞、夏妃、秀吉、霧江、南條、源次、紗音、熊沢、郷田の16人に加え、17人目のXとして十七が生存している。
“探偵ッ、古戸ヱリカ”はEp5ヱリカのことであり、正真正銘Ep5で初登場の人物であるから、上記の17人の誰でもない。だから、この“探偵ッ、古戸ヱリカ”が“来訪者ッ”として六軒島を訪れたとしたら、それは確かに“18人目”である。
嵐が来たら六軒島には出入りできないので、“探偵ッ、古戸ヱリカ”が六軒島に来訪するのは嵐が来る前で、まだ第一の晩は起こっていない。しかし、十七は“古戸ヱリカが登場するタイミング”以前に必ず死んでいるので、上記17人のうち、十七だけが死んで16人となっている。そこに“探偵ッ、古戸ヱリカ”を迎えると、“17人”になる。
★Ep6の“共犯者”
真犯人はゲーム盤毎に、四兄弟のうちだれか一人をランダムに共犯者に選んでいるが、Ep6では蔵臼、留弗夫、秀吉、郷田たち4人は共犯者ではないので、選ばれたのは蔵臼、留弗夫ではないし、秀吉の配偶者の絵羽とも考えにくい。従って、Ep6で真犯人紗音に共犯者となることを持ち掛けられた“共犯者”は楼座である。
★赤字を利用して謎を解くことを想定したトリック
ロジックエラーの謎を端的に言うと、“如何にして、チェーンロックを維持したまま戦人を客室の外に移動させるか。”ということになる。そしてその答えが、“戦人の代わりに別の誰かが客室に入ってチェーンロックを閉める。”である。
普通はこれだけでは謎にもトリックにもならない。戦人がチェーンロックを開けっ放しにして外に出て、代わりの人物が中に入ってチェーンロックを閉めた。だからチェーンロックは維持されている。当たり前である。
これは、ベアト世界で、“救出者”の存在が赤字で徹底的に否定されて初めて謎として成立するのである。つまり、ロジックエラーの謎は赤字を利用して謎を解くことを想定したトリックである。
しかし、ゲーム盤上の登場人物は、赤字を利用して謎を解くことを想定したトリックを用いない。もちろんそれを目的とした行動もとらない。
(1週目)で私は★ロジックエラーの謎の答えと★嘉音消失の謎の答えを示したが、客室における人の動きを簡単にまとめると、次のようになる。
1.戦人がチェーンロックを開けて、客室の外に出る。
2.救出者が客室の中に入り、チェーンロックを閉める。
3.救出者がチェーンロックを開けて、客室の外に出る。
4.第四の人物が客室の中に入り、チェーンロックを閉める。
複数の人間が入れ代わり立ち代わり客室に出入りしてチェーンロックを開けたり閉めたりするという、不思議な状況が出来上がってしまっている。赤字を利用して謎を解くことを想定したトリックに対する答えとしてはこれでよいのかもしれないが、いま私は推理の(2週目)として、六軒島世界視点での行動原理の説明を試みている。
いったいどういう状況だと上記1~4のようなことが起こるのか、それを踏まえて、幻想を取り除いたEp6の真の姿、ミステリーベースを考察してみようと思う。
★Ep6のミステリーベース
【十七の運命】
十七は“嘉音”に与えられた仕事を実際にこなす役割を与えられた、おそらく源次辺りのつてを利用して雇ったプロフェッショナルである。
そんな人物が紗音に大量殺人計画を持ち掛けられて同意するかどうか。プロだからどんな任務も冷徹にこなすというイメージもある。しかしそうではなく、その道の専門家であるからこそ、その道のプロ足りえるのであろうから、何でも屋のような扱いは逆に期待できない。
大量殺人計画は、十七に与えられていた役割からかなり逸脱しており、十七にしてみれば契約範囲外の申し出なので、十七はおそらく拒むであろうし、紗音もそう考える。
なら、殺人計画であることを伏せて狂言者として協力してもらうことができるかというと、これも難しい。本当の殺人であることがばれてしまえば、十七は自身の身を守るために正体を明かしてしまうだろうから、それで全てが破綻してしまうのだ。
つまり、紗音にとって、十七は邪魔である。
だから、嵐が来て、縁寿が来ず、計画が決行と決まった時点で、紗音は十七を殺しにかかり、十七は1人目の犠牲者となる。
【共犯者の選定】
紗音は楼座を共犯者に選び、話を持ち掛ける。
【ヱリカ情報】
紗音は不測の訪問者に備えるために、六軒島近海を航行する船から行方不明になった人物の有無を確認したところ、「新堂(仮)ヱリカ」なる人物が行方不明になっていることを知る。
紗音は、そのヱリカが六軒島に漂着したという幻想を生み出し、碑文殺人計画に利用する方法を選択する。
【“ヱリカ”の配置】
紗音が“ヱリカ”として薔薇庭園で真里亞と接触し、紗音と源次が協力して真里亞に“ヱリカ”の存在をアピールする。共犯者となった楼座にも協力を取り付ける。
【客人不在の晩餐】
紗音も源次も“ヱリカ”の姿に変装して人前に出るということはしない。従って、晩餐には“ヱリカ”は出席せず、クイズ大会も始まらない。
一同には、ヱリカという人物が六軒島に漂着し、現在ひどく消耗しているので一室で休んでいると説明される。するとそこで、ベアトリーチェを否定する許しがたいキャラクターとして“ヱリカ”を認識している真里亞がヱリカに対する怒りを口にし、さらに共犯者の楼座が後押しする形で、「私もヱリカに会った。確かに空気を読まず、自分は名探偵で頭が良いとひけらかす人物であった」とか言って“ヱリカ”の存在を主張する。
楼座はEp2で晩餐の席で魔女の手紙を出さなかった前科があるので、Ep6の晩餐で魔女の手紙が登場したかどうかは定かではない。しかし、晩餐後はいつも通り親族会議に移る。
【狂言殺人】
第一の晩の犠牲者とされる絵羽、楼座、戦人、真里亞、夏妃、霧江が死んだふりをしていたのは、確実である。
しかし、犬猿の仲である絵羽と夏妃が協力して狂言殺人を行うなど、普通は考えられない。第一、経済的に窮している親族たちにしてみたら、ヱリカをからかうための狂言殺人などしている場合ではないはずだ。
しかし実際に、絵羽と楼座は協力して狂言殺人のために貴重な時間を費やした。それはもちろんヱリカをからかうためでなく、そうすることが、自らが抱える問題の解決につながると考えたからである。
結論を言うと、まず当主の指輪と金塊を提示し、自分が黄金の正当な所有者であると納得させ、生贄の行動をコントロールすることは、紗音が用意した第一の晩の基本的な手口であるが、Ep6でもこれが実行されたのである。つまり、絵羽や夏妃たちが狂言殺人を行ったのは、紗音の指示によるものである。
【テスト】
紗音が具体的にどのような指示を出したかを想像してみる。
・蔵臼と絵羽のどちらが次期当主にふさわしいかを、彼らが育てた朱志香と譲治にテストをすることで決定する。
・レベルの低い勝負では意味がないので、客人ヱリカにもテストに参加してもらい、もしヱリカが勝者になった場合には、誰も次期当主に選ばれず、右代宮家は終了。
・テストの方法は、狂言密室殺人。第一の晩を見立て、絵羽、楼座、戦人、真里亞、夏妃、霧江が死んだふりをして内から鍵を掛ける。この真相に最も早くたどり着いたものが勝者。
・第一の晩のあと、朱志香、譲治、ヱリカの三人は別々の部屋に分け、お互いが協力して謎解きを行わないようにする。
・朱志香もしくは譲治が真相に辿り着いたら、紗音もしくは源次が正解者とその親を金蔵の書斎に連れていき、そのとき、そこにいるヱリカがまだ真相に至っていなければ、勝者となる。
【第一の晩】
戦人には、ヱリカをからかうためと言って協力してもらう。絵羽、楼座、戦人、真里亞、夏妃、霧江がそれぞれの場所で内から鍵を掛け死んだふりをして発見されるのを待つ。発見する側の蔵臼、留弗夫、秀吉は検死を行い、みんな死んでいると嘘の証言をする。
そして、“遺体発見”直後の騒ぎの隙をついて、紗音は絵羽、楼座、真里亞、夏妃、霧江をしっかりと、殺し直す。
それから戦人が居る客室には完全な封印を施す。ガムテープの封印のように出入りの有無を確認するだけの代物ではなく、南京錠やかんぬきのような、出入りそのものを禁ずる本当の封印である。これは、今後一切戦人を他の親族とあわせないようにするためである。
【碑文殺人の演出】
紗音は、六軒島世界の戦人視点で碑文に忠実に沿っているように見えることが、碑文殺人が成立する条件であるとしている。ではEp6ではどのように戦人に碑文殺人を見せようとしていたか。
戦人を一人隔離して、次々と碑文殺人が行われているという情報だけを先に全て与えて置いて、最後にまとめて、情報通りに殺されたように見える遺体を見せるという、Ep4に近いやり方ではないだろうか。この場合、戦人に自由に動き回られては困るので、Ep6では、まず物理的に閉じ込めるという手段をとった。
狂言殺人では碑文殺人にならないので、戦人には、絵羽、楼座、真里亞、夏妃、霧江が本当に殺されたという情報はあとでちゃんと伝えられる手筈のはずである。戦人を除く5人では“鍵の選びし六人”に足りないので、金蔵あたりが6人目に数えられるのだろう。
【部屋分け】
朱志香はいとこ部屋、譲治は隣部屋、ヱリカは金蔵の書斎に分かれる形に。朱志香と譲治にはそれぞれの父親が同室し、紗音と源次も二部屋に分かれる。後は人数合わせ。
【第二の晩へ】
いとこ部屋で、朱志香が先に狂言殺人の可能性を口にして正解者となる。正解者の朱志香と、その親の蔵臼と、付き添いとして源次が金蔵の書斎に行くことになり、この三人がいとこ部屋を出る。
戦人を救出したのは嘉音本人である朱志香である。源次はヱリカ本人である。なので、このいとこ部屋からの移動は、“ヱリカが部屋の外に移動するその隙に、救出者はヱリカと一緒に部屋の外に出た”を満たす。
この段階では蔵臼はまだテストのつもりでいるが、紗音と源次の意図としては、正解者として部屋の外に出た親子が第二の晩の犠牲者となる。源次は殺人の実行犯にならないので、一旦どこかに二人を閉じ込め、行方不明になってもらい、あとで紗音が殺す手筈。
【計算外の行動】
ここまでは紗音の思惑通り事が運んでいるが、蔵臼、朱志香、源次が屋敷に辿り着いたところで、計算外の事態が発生する。本来は源次が、蔵臼と朱志香を金蔵の書斎に案内する途中で、二人の隙をつき、どこかの一室に閉じ込める手筈のはずが、屋敷の玄関の鍵が開けられたとたん、朱志香が、まず母親の生死を確認すべく、夏妃の部屋に向かって単独で走り出してしまうのだ。
自由に動き回る朱志香を捕らえるのは骨なので、源次としては慌てて朱志香を追いたいところだが、それよりも優先しなければならないことがある。それは、朱志香が戦人と接触するのを阻止することだ。朱志香は“嘉音”の正体を、戦人は“狂言殺人”の真相を、それぞれ知っているので、この二人が出会えばすべてが破綻する。
なので、源次は書斎の鍵を蔵臼に預け、朱志香を書斎に連れて行っておいて欲しいと頼み、自分は戦人を確保して別室に移動させるべく、客室に向かう。これだと蔵臼はすぐに夏妃の死を知り面倒なことにはなるが、もともと閉じ込める予定であったので、まだ決定的なほころびではない。それより戦人の隔離が優先されると源次は判断する。
【戦人の脱出】
一方、戦人は客室で危機感を募らせている。なぜなら、外の様子をうかがおうと思ったら、扉に完全な封印を施されているせいで、客室から出られなくなってしまっているのだ。推理小説に造詣が深い戦人は、これは狂言殺人を利用した本当の殺人ではないかという疑念を持ち、このままおとなしく客室にいたら殺されてしまうという危機感を抱く。
そこで、時間稼ぎのための仕掛けをバスルームに施し、扉近くのクローゼットに身を隠し、誰かが来るのをじっと待つ。
そこに、源次が客室の封印を破って客室に入ってくる。源次はすぐに扉を閉め、チェーンロックを掛け直し、戦人が死んだふりをしているはずのベッドルームに向かうが、ベッドの上に、右代宮戦人は、いない。急いでベッドルームを探すも、ベッドルームに誰の姿もありマセン。そして、次にバスルームに向かい、バスルームの仕掛けに悪戦苦闘することになる。
源次がバスルームで悪戦苦闘している間に、戦人はクローゼットから出て、チェーンロックを開け、客室から出ていく。この段階ではチェーンロックは開けっ放しである。
源次はヱリカ本人である。なので、この戦人の脱出は、“ヱリカがバスルームで悪戦苦闘している隙に、戦人が客室を出て”行ったということになる。
【戦人の“救出”】
夏妃の部屋。本当に死んでいる夏妃を見て望みを絶たれた形の朱志香。そして、自分が紗音と源次に良いように利用されていたことに気付く蔵臼。蔵臼と朱志香は他の部屋に生き残りはいないかどうかを確認しつつ源次を探し、戦人が居るはずの客室に辿り着く。
客室はなぜか扉が開けっ放しで、ガムテープの封印によって、チェーンロックが修復されているが、チェーンロックは外れて垂れ下がっている。
この状況になんとなく関心を抱いた朱志香は、チェーンロックの状態を確認すべく、客室に入り、内から扉を閉め、チェーンロックを閉めてみる。普通に閉められるな…、などと考えたところで、客室の奥からシャワーの音がするのに気付いたため、慌ててチェーンロックを開け、客室の外に出る。
救出者とは、戦人の開けたチェーンロックを、再び掛け直した者なので、朱志香がチェーンロックを閉めた瞬間に、朱志香が救出者の条件を満たすことになる。朱志香はなんとなくチェーンロックの状態を確かめただけなのだが、戦人を救う意思があったかどうかは、問わないので問題なし。そして、朱志香は嘉音本人であるので、“戦人を救出したのは、間違いなく嘉音本人である。”を満たす。
【“嘉音”の“消失”】
朱志香が客室を出入りする間もまだ、源次はバスルームで悪戦苦闘している。
蔵臼は、不用意に客室に入った朱志香がすぐに出てきたことに安堵し、同時に、今客室に居るのは源次ではないかと気付く。蔵臼は源次が犯人か共犯者であることを確信しており、ねじ伏せてでも真相を聞き出したい、なんなら殺しても良いくらいには怒りを覚えている。朱志香は一旦近くの部屋にでも避難しておいてもらい、自分は客室に入り、源次が逃げにくいように、娘が巻き込まれないようにチェーンロックを内から閉める。源次を待ち伏せするため、クローゼットに隠れ、源次が来るのを待ち構える。この時点で、Ep6のゲーム盤は永遠に停止する。
朱志香がチェーンロックを閉めた瞬間にロジックエラーが修復される。ロジックエラー修復後ならヱリカ、戦人、嘉音以外の人物も客室を出入りできるので、蔵臼も客室に入ることができる。朱志香が客室を出た後にこの蔵臼が客室に入りチェーンロックを閉めたことが、“第四の人物が客室を訪れ、嘉音と入れ替わりに客室に入り、チェーンロックを閉めた”に該当する。
蔵臼がロジックエラーに関わる“第四の人物”に該当する。蔵臼も、ヱリカ本人である源次とともにいとこ部屋の外に出ているので、“第四の人物も、所在確認後、ヱリカが部屋の外に移動するその隙に、ヱリカや救出者と共に部屋の外に出た”を満たす。
【ロジックエラーおよび嘉音消失の謎の答えの真実】
まとめると以下のようになります。六軒島世界視点での行動原理の説明を試みるために想像に想像を重ねたものなので、仮定の域をでないのは否めません。
“所在確認”後、源次が部屋の外に移動する時に、蔵臼と朱志香も一緒に部屋の外に出た。封印の完了はその直後。
源次がバスルームで悪戦苦闘している隙に、戦人が自力で客室を脱出し、その後、チェーンロックの確認のために朱志香が客室の内側からチェーンロックを掛け直した。“これでロジックエラーが修復され”、そのすぐ後に、蔵臼が、朱志香と入れ替わりに客室に入り、チェーンロックを閉めた。
★世界観の設定
六軒島世界において、紗音はベアトリーチェ本人である。真里亞にそのキャラクターであると認めてもらうためには設定がしっかりしていればいるほど良い。そこで、ベアトリーチェのバックボーンとなるベアト世界の世界観の設定は、紗音の頭の中で練りに練られてしっかり構築されていた。この時点では碑文殺人は関係ない。ベアト世界の世界観の設定にはベアトリーチェの千年の経験はデフォルトで組み込まれているが、これはあくまで設定でありルールではない。
黒幕は紗音である。黒幕のベアトリーチェの動機は戦人の罪にある。そして紗音には、戦人に対する恋心が芽生えていた。そんな紗音は碑文殺人を計画するに当たり、ベアト世界を戦人のために存在させたいと考えた。もともとは戦人とは関係なく構築された世界観に、“戦人のため”という目的を達するためのルールが付与され、ベアト世界の世界観構築が完成した。
紗音の動機は、碑文に沿った殺人を完遂して儀式を成就し、黄金郷に行き、全ての恋を成就させることである。碑文殺人が見事成功してしまい、それをみていたラムダデルタ様が御褒美に、紗音の願いどおり、紗音が構築した世界観そのままにベアト世界を誕生させる。
そのベアト世界でルールが擬人化してベアトが誕生する。ベアトも雛ベアトも等しくルールの擬人化した存在なのだから、ベアトもはじめは雛ベアトのごとき未熟な存在だったはずだ。それでもおそらくゲームマスターとしてゲーム盤は構築できる。しかし、例えルールの考案者であっても戦術を練らなければ上手くチェスが指せるわけがないのと同じで、この段階ではまだお粗末なゲーム盤しか作れない。
メタ戦人の成長を促すほどのゲーム盤を作れるようになるには経験が必要である。ベアト世界の設定に組み込まれているベアトリーチェの千年の経験を擬人化すると、姉ベアトとなるが、この姉ベアトの性質を獲得する=千年の経験を理解することで、ベアトは熟練した黄金の魔女に成長する。
Ep6の雛ベアトもそれと同じく、最終的に姉ベアトの性質を獲得し、熟練の黄金の魔女「新ベアト」として成長した。
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