とあるぐだぐだの飲み会で、友人の呂律が空回りをし始めた。
街行く女性はもちろんのこと、幸運の女神も決して振り向くことのない人生を謳歌している彼は、燃え上がるような恋に落ち、一人奈落の底で全身火傷。
私はこうして今年に入って何度目かの救助活動に駆り出された。
彼は虚ろな目でメニューを熟読していたが、やがて的を得たり、という面持ちで店員を呼び出した。
「ひとり歩き!ロックで!」店内に響き渡る無意味な . . . 本文を読む
関西で覚えた言葉だ。それまで知らなかった使い方とニュアンスを。
大学生活の4年間を大阪で過ごしたのであるが、やはり言葉の壁は存在した。
「マック行かない?」と話しかけようものなら睨まれ、
「天王寺」という駅名を“天”にアクセントをおいて発音すると、
“王”にアクセントをおけとの修正が入る。
ウィッキーさんよろしく、「Repeat after me.」てな具合に。
…大阪に来てから初めて女の子を . . . 本文を読む
大切なものは失ってみてはじめて気づくもの。
使い古されこそすれ、消費し尽くされはしない真理。
Tom Waitsの『San Diego Serenade』は「Never~till…」がとめどなく繰り返される、取り返しのつかないものへの悲哀に満ちている。
とても土曜日の夜になんか聴いていられない。
健康な人間は健康を知らない。病人だけが知っている。
という言葉を聞いたことがある。だとすれば、病 . . . 本文を読む
携帯がどこかにいきました。恐らくは自分の意志で。
何度か考え直すように呼びかけたのですが、居留守の一点張り。
今年の初めに去って行った彼女と同じように、何の前兆も感じ取れなかったことが悔やまれます。
とりあえずDocomoショップへ行き、息の根は止めました。
数百件の連絡先と、いくつかの大切なメールを失ったことは、逆に前向きに生きるためのきっかけと自分に無理強い。
そんなわけでこの週末は携帯な . . . 本文を読む
懐古主義は重々承知の上で。。。
大学時代に付き合っていた、背の低い年上の彼女がサニーデイ・サービスを好きで、特にこの曲をよく口ずさんだりしていた。
「“コーヒーと恋愛が共にあればいい”ていうのがいいよね」
「そうだね」
「この無気力な断定が」
「そうそう」
もちろん実際にはいいわけがないから終わったわけだけど、
こんな無責任な会話を交わしながら、この曲のメロディーラインのように少しひねた価値 . . . 本文を読む
都営浅草線に乗り込む。
少しの間をおいてドアが閉まる。
車体が動き始める、その刹那、
タ~ララララ~♪
というメロディーが車内に響き渡る。
誰かの着信?と思わず辺りを見渡す。
その仕草に気付いた見知らぬ誰かと目が合い、気まずく逸らす。
こんな経験はありませんか?…ありませんか。
絶対音感があれば五線譜に書き込めるくらいにはっきりとした音階。
ただ日によって聴こえないときもある。恐らくは車両の種類 . . . 本文を読む
ここに載せているそれぞれの文章を、実はよく改訂してます。
基本的に余計な言葉を削っています。
先ほど、頭まで遡り、結構やりました。
文章それ自体を削った方がよいと思われるものも少なからずありましたが、
あえて汚点は汚点として残してみるのも一興かと。
. . . 本文を読む
兄さん粋だね、と普段は話しかけられたくない類いの人に、たまには言われてみたい。
本当の洒落者は、さり気なさと何気なさをそれとなく漂わせ、小粋に見せしめる。
小唄を口ずさむように、ちらりずむ。
たとえば胸ポケットからハンカチーフの代わりに、諭吉の肖像が印象的な紙幣を覗かせてみる。
ただのリッチ感だけでなく、新札ではなくあえて旧札をもってくることで、こだわりを演出。
本当の洒落者は、帯にも襷 . . . 本文を読む