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八日目の蝉

角田光代 中央公論新社

本の世界に入り込む事を「離陸する..」そんな感覚を私は持っています。
周りの音が気にならず、作品の中に入り込む瞬間です。
残念ながら..いつもそうではありません
時にはそのまま飛び立たずに終わる作品...
離陸後も滑走路から離れる事なく、再び着地する作品...
どこかに不時着する作品...行方不明になる作品...

八日目の蝉は「0章」と「1章」そして「2章」へと続きます。
「0章」で始まり、長い「1章」は、離陸後..機体の高度をなかなか上げません
が..しかし、だらだらとページをめくっていたら紙の端っこで指を切られるような
角田さんの文章力に関心しながら、そして面白くなる予感を感じながら
何とか頑張って読んでいました。

そこには「愛」がありました..

誘拐犯を憎しみではなく見守る様な不思議な感覚で読み進む自分がいました。
しかし相変わらず..思う様に高度は上がりません。
「1章」が終わる..滑走路も後少し..どうする?角田さん
まさに「1章」が終わるその瞬間でした、見事でした..
まるで垂直に..飛行機がロケットに変身した様に機体は垂直に舞い上がります。

これで2章に続ける..

「2章」はフィクションとノンフィクションが混ざったような内容で
もう一人の彼女の「闇」なのか「病」なのか..
狂わされた人生の悲しい物語に続きます..。

「やっぱりそうなるの?」

題名にもなった「 蟬」にたとえた角田さんのメッセージ力は流石です。
読み手にこれだけ感情移入させるための「1章」だったんだと言う実感
単なる憎しみや身代金目的の誘拐ではなかった..
「愛」があるのです
ラストの数ページは鳥肌が立ちました。
頭で考えたら感想も答えもひとつ..心で考えたら...正解が言えません..

人はそれでも生きて行けるんだと思った..

★★★
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