goo blog サービス終了のお知らせ 

RANDAMの変態見聞録

ゲーム・漫画・映画が大好きです。
変態ときどき真面目でお送りします。

~平和の名を持つ男~ 第2章 Part1

2015-01-18 12:30:55 | MGS小説

~第2章 十字架 ~


それはMSFがまだコロンビアのバランキア港沿岸を本拠としていた頃で、
赤い義手の‘‘教授”とお涙頂戴の‘‘平和の使者”が訪ねてくるよりも前のことだった。


「おいカズ、ちょっといいか?」

突然のボスの声。
副司令室で‘‘とあるビジネスパートナー”からの極秘テープを解読していたミラーは内心ギクリとしたが、なに食わぬ顔でそれらを引き出しに片付け、顔を上げた。

「どうしたスネーク?あんたから訪ねてくるとは珍しいな」

スネークが部屋に入ってきてミラーの机の真向かいにある2つの椅子の片方に座った。

「カズ、1つ聞きたいことがある。
…お前、リンダとはどんな関係だ?」

これまた突然のことにえっ、と言いかけたがなんとか飲み込んだ。

「い、いや、別に言うほどの関係じゃないぞ?」

しまった!少し焦りが混じってしまった…!

スネークはふぅーんとでも言うような表情をして葉巻に火をつけると、部屋の外の‘‘誰か”に向かって言った。

「だ、そうだぞ…リンダ?」

リンダ…?リンダ、リンダ?

勢いよく扉が開くと、そこには美しい顔に怒りを貼り付けたリンダが立っていた。随分とお怒りのようだ。

「よ、よぉ~、リンダ!お前までどうしたんだ?」

ヤバい。それ以外に言葉が見当たらない。

「リンダ、お前もこっちに来て隣に座れ。」
スネークが促すとリンダはスネークの隣の椅子に座った。

「ん~?なんだこれは?三者面談か?ははっ!…そんな訳ないか…」
カズのジョークに2人は顔ひとつ変えずに無表情を保ったままだ。

「ミラー副司令、あなたは私のことをどう思っているの?言うほどの関係じゃない?じゃあ、あの夜のことは全部嘘だったわけ?!」

リンダからの突然の猛攻に、スネークに助けを求めようと視線を向けたカズだったが、スネークは葉巻を燻らせて見向きもしない。
どうぞ、お好きに。とでも言うようであった。

「ちょっと、ハッキリしてよ!あなた、私以外にもたくさんの女に手を出してるんでしょう?!それなのにあなたはあの夜、私に愛してると言った…あれも全部嘘だったのね…」

な、なんだこれは。ドロドロしている。まるで、昔日本で観た人情ものの映画のようだ。

「そ、それは誤解だ!お前のことは愛してるさ!」
世紀の女好きは心にもないことを言ってなんとかなだめようとした。

「そんなの嘘よ!ぜんぶ聞いてるわ!糧食班のマチルダにスーザンにマリア、それから研究開発班のレイチェルにキャサリン…それから他にもたくさん!」

これは言い逃れできない。
全て真実だ。なんてこった…!

サングラスの奥の瞳は動揺に揺れている。


ミラーは真っ白になって…燃え尽きた。



第2章Part1完 Part2に続く…




a streak of smoke

2015-01-17 12:39:33 | MGS小説

1人の男が甲板に立ち尽くしていた。


男は、海を見つめていた。
男は、この風が好きだった。
男は、水平線の果てを思い描いていた。

男は…

男は、愛する人の命をその手で奪った。


「綺麗でしょ?生命の終わりは…
切ない程に。」

彼女の声が、風のように心を吹き抜けてゆく。

そこには哀しみもなければ、切なさもなかった。ただ、痛みだけが疼いていた。


戦うことをやめることはできない。
俺は戦いの中でしか生きられない。
俺は‘‘銃”そのものだ。

男はそう言った。男にはそれ以外考えられなかった。持てぬ者の抑止力となり、戦士が生の充足を得ることのできる唯一の場所‘‘天国の外側(OUTER HEAVEN)”を造ること…それが自分に出来る償いだと考えた。


世界中が追ってくる。
自分達を快く思う者ばかりではない。
しかし、もう覚悟はできている。

彼女が最期のその時を、美しく咲き乱れたように、自分もその生命を全うしよう。



男は1人、葉巻をくゆらせる。
その煙はまるで1匹の蛇のように宙をうねる。

男を天へと誘うように…。




~平和の名を持つ男~ 第1章 Part2

2015-01-14 17:54:48 | MGS小説
Part2


「あ、しまった。串を捨ててくるのを忘れてた」

騒々しい声が遠くに聞こえるこの部屋で独り言をつぶやく。少し疲れた。
部屋を出てバーベキュー会場への道を引き返していると、柱の影に若い男女の隊員がいるのが見えた。
どうやら人目を盗んでイチャついているらしい。しかもすごくいいムードらしくキスまでし始めやがった!
ここは副司令としてきちんと注意すべきだな、そう思ったミラーは部屋を出る時に飲もうと持ってきた、冷えたマウンテンデューをこっそりと2人の背後で開けた。

プシュッ!

という炭酸の音が鉄筋に響き渡る。完全に油断していた2人は頭の上に❗️マークを出すほど驚き、とっさに距離を置いた。
辺りを確認するために振り返った男の顔を見たミラーは思い出したように叫んだ。
「バード!」
さっき焼けた肉を持ってきてくれた彼だった。そしてあろうことか相手の女は‘‘ミラーが思うMSFの可愛い女の子ベスト10”の3位にランクインする21歳のレベッカだった。
これにはさすがのミラーもショックを受けたが、なんとか冷静を装った。
「お前たち、仲睦まじいのはいいことだ。しかし、それ以上エスカレートしてみんなに迷惑をかけることがないようにするんだぞ?」
そう言ってその場を去り、部屋に戻ったミラーはマウンテンデューをがぶりとひとくち飲んだ。
そして頭の中で自分の言ったことを思い返してみたが、どう考えてもバードに自分自身を見ているような気がしてならなかった。自分の女癖も言えたものではない。むしろバードより酷いものだ。苦笑いを浮かべながら空っぽになったマウンテンデューの缶を啜るミラーは、自らの女癖によって引き起こされたあの日の事件のことを思い出した。


第1章Part2 完 第2章Part1に続く…

~平和の名を持つ男~第1章 Part1

2015-01-14 00:13:40 | MGS小説

~第1章 バーベキュー ~


「ミラー副司令、お肉が焼けましたよ」

その声にミラーはハッとして我にかえる。今日は月に1度のバーベキューだ。
ボスであるスネークから猫のニュークまで、マザーベースの全員がこの日を心待ちにする人気行事の1つだ。

ミラーはありがとう、ええと…そう、バード。と彼の名を搾り出しながら礼を言った。300人近くいる隊員のうち1人の名前を思い出すのは大変なことなのだ。

なぜバードという暗号名(コードネーム)かというと、単純に鳥が好きだからである。そのため野鳥好きのパリジェンヌこと、セシールと大の仲良しである。時々、マザーベースに飛んでくるハトや渡り鳥を見かけては
「あ!あのハト可愛いなぁ~!」
などと興奮しているため、おそらくスネークのダンボール好きに並ぶほどの変態なんだろうな…と思いながらミラーは差し出された肉にかぶりつく。
糧食班がこの行事のためにあらゆる国の材料を使って作った『MSF印の秘伝のタレ』が最高に美味い。スネークに至っては、すでに軽く5本を平らげている。
もう1本貰えるか?とおかわりを受け取るとミラーはスネークの方へと歩み寄った。
「スネーク、あんた少し食べ過ぎじゃないのか?明日はマングースたちと任務に就いてもらわなきゃならないんだから、あまり食い過ぎて腹を壊すなよ?」
とボスであるスネークに注意した。これではまるで我が子を気遣う母のようである。
「わかってる。だが、明日の準備は万端だし、それにたくさん食べれば力も出るはずだ。心配するな、腹は壊さん。だから………もう1本だけいいか?」
ため息をこぼしたミラーは、もう好きにしてくれ。という顔をすると副司令室へと戻った。

第1章 Part1完 第1章 Part2に続く…

~平和の名を持つ男~ prologue

2015-01-14 00:07:27 | MGS小説
~平和の名を持つ男~

RANDAM


prologue


「天国でもあり、地獄でもある。それが、俺たちの『天国の外側(アウターヘブン)』だ」

そう壇上に立つ隻眼の男が言った。

ホールに集められたマザーベース300人の仲間たちは希望に満ちた瞳で彼の話を聞いている。

しかし、その中の1人、国境なき軍隊(Militaires Sans Frontières :MSF)の副司令官にして、BIGBOSSの右腕でもある
カズヒラ・ミラーだけは違った。
サングラスを透してわずかに見ることのできるその瞳には、これから襲い来るであろう世界への恐怖、不安が火種のように燻っていた…。