はい。こちら農水省製麺局ラーメン課

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珍珍亭

2005-06-18 12:47:22 | ラーメン店調査 (41~45点)
「油そば」というジャンルのラーメンがある。スープを使わずにタレと油だけを用い、それらに麺を絡めて食べるスタイルのラーメンである。今でこそ、特に首都圏ではさほど珍しい食べ物ではなくなったが、かれこれ10年前に初めて私が油そばを食した時の衝撃は未だに忘れられない。太麺にタレと油をこれでもかと言わんばかりに絡め、お好みで卓上に置いてあるタレを継ぎ足したりラー油をぶっかけたりおろしニンニクを絡めたりしてワシワシと麺を食べ進めていくのだ。食べ方としてはインスタント焼きそばのそれに類似するところがある(ちなみに酢を投入すると味がマイルドになる)。

私は忽ちの間にその粗野で男性的なラーメンに魅せられてしまった。特に、私は「ぶぶか@高田馬場」の油そばが好きで頻繁に食べに行っていたのだが、油そばについての関心が高じ色々と情報を探っているうちに、ここ「珍珍亭」が油そばの元祖であることを突き止め、今回こうして訪問したわけである。ちなみに「油そば」を出す店は一般的に吉祥寺以遠の中央線沿線のラーメン屋に多く、多摩地方の「地ラーメン」の一種であるとも言われている。

「珍珍亭」は私の事前の想像よりも遙かに混雑しており、武蔵境から徒歩15分程度の必ずしもアクセス至便とは言えない場所にありながらも、ひっきりなしに客が訪れる人気店だ。席数も25席程度とラーメン屋にしては大規模な設定であるにもかかわらず、私が訪問して20分くらい経つと店先にまで行列ができたほどの賑わいだ。

客構成を見ても、カップルなど物見遊山的な客は殆どおらず大抵は店の近くに校舎がある亜細亜大学の学生や地元に住んでいる人達のようだ。よって、店内のあちらこちらで常連客と店の人との親しげな会話が交わされ和気藹々とした雰囲気だ。

こういう雰囲気、私は必ずしも嫌いではないが一見さんにとってはちょっと辛いものがある。この手の店ではほぼ必ずと言っても良いほど常連だけが知っている「裏メニュー」のようなものがあり、これを知らなければ本当に美味しいメニューにはありつけない場合が多いのだ。

私はそのような裏メニューなど知る由もなかったが、まずはデフォルトからということで油そば大盛に味付け玉子をトッピングオーダーさせていただいた。すると、手違いでネギまでもがトッピングされたものが出てきたのだが、周りの常連客が頼んでいるものを見れば、どうやらこれがこの店の油そばの美味しい食べ方のようだ。皆、ネギ増しをオーダーしていた。

何だか得したような気持ちになってしまった(もちろん、お金を支払う時にその旨は申し上げたのだが、店の人は快く「サービスしておきますよ」と仰ってくれた。こういうところもこの店の人気の秘密のひとつなのだろう)。

出てきた油そばは「元祖」に相応しく、太縮れ麺が丼にどっさりと盛り付けられた迫力満点のビジュアル。それ程多くはならないのだろうと高を括って大盛りをオーダーしたのだが結構麺量が多くて驚いてしまった。特盛りがかなり多く出ていたことには、もっと驚いてしまったが。タレは結構薄めであり、「ぶぶか」をはじめとする追随店のようなデフォルメされたコッテリ感はないが、元祖ならではの威厳がある。

具はメンマとチャーシューが載るが、小さな「なると」が1枚載っているところが老舗を感じさせてくれる。最近では「なると」をラーメンの具として使う店はすっかり少なくなってしまっているからだ。

私は麺の2/3は卓上に置いてあるトッピングを入れずに食べ進め、後半の1/3は少しラー油を振り掛けて食べたが、この店のラー油は辛味を控えてあるのだろうか、それ程味の激変は生じなかった。

評価は麺:10点、スープ:14点、具:3点、バランス:8点、将来性:8点の合計43点といったところか。

落ち着いた味わいの油そばであり後発の各店のようなコッテリ感は必ずしも持ち合わせてはいないが、時折、無性に食べたくてたまらなくなるような魅力を持った一品である。


所在地:武蔵境
実食日:2004年3月

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中華そば専門店 八兵衛

2005-06-18 12:46:09 | ラーメン店調査 (46~50点)
この原稿を書いているのは2004年3月2日なのであるが、この時点で既に「八兵衛」はこの世には存在しない。去年の5月にオープンしたばかりのこの店は、ほんの1年も経たない去る2月29日をもって閉店の憂き目をみることとなってしまったのである。いくつかのラーメン系の雑誌にも取り上げられラーメン・フリークからの評判も決して悪くはなかっただけに、その短命が惜しまれるところである。この場を借りて謹んでご冥福をお祈りしたい。

既になくなってしまった店についてコメントを述べても致し方ないという意見もあることとは思うが、追悼を捧げるとの意味合いも込めてごく簡単にこの店の評価を書いておきたい。メニューは、中華そば、つけ麺、みそらーめん、鳥そば鳥めしなどによって構成されており、鳥そばが看板メニューであった。

この店が終始こだわっていた素材は「鳥」であり、東北産の老鶏を用いたスープは一口目のインパクトこそそれほどないものの、飲み進めていくほどに老鶏の濃厚なコクが五臓六腑にまで染み渡り、しみじみと旨いものであった。とりわけこの店で特筆すべきは食べ始めと食べ終わりにおけるスープの激変ぶりであり、私がオーダーした鳥そばに到っては、食べ始めはどちらかと言えばアッサリしすぎていて物足りないと感じられたスープが、食べ進めていく内に具としてチャーシューの代わりに用いられる鶏肉から染み出したエキスが相乗効果的に味わいを深化させ終盤には得も言われぬ玄妙な風合いを醸し出したものだ。

麺もこのスープと相性がよい中太麺を用いており印象は悪くはなかった。また具の鶏肉も非常に柔らかく美味であった。

評価としては麺:11点、スープ:16点、具:4点、バランス:8点、将来性:7点の合計46点を捧げたい。

もはや将来がなくなった店に対して「将来性の項目」を用いた評価を行うのも考えてみれば奇妙なことなのであるが仮にこの店が存続していた場合、この店は今後、どれだけのオリジナリティあるメニューを開発できたかどうかを想定して得点を付けさせていただいた。


所在地:大久保
実食日:2004年2月

採点方法について
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