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映画・舞台の感想や俳優さん情報等。基本各種メディア込みのレ・ミゼラブル廃。近頃は「ただの日記」多し。

ヒューヒュー!・301 マウス・タウンそしてファウンテン

2006-10-23 09:07:11 | HJ出演作品レビュー

という訳で、昨日、東京国際映画祭(at 六本木ヒルズ)へ行って参りました。
直前になって『ファウンテン』(12:00~)チケットが手にはいったものの、『マウス・タウン』(10:40~)を無駄にするに忍びず(オークション等に出すにも日数がなかったし)、スクリーン7のネズミの方を途中まで観て、スクリーン2に駆け込むという無茶な方法で、ヒュー・ジャックマン二本立てを敢行(?)しました。
以下、若干のネタバレを含む感想。甚だしいネタバレは反転で。

『マウス・タウン ロディとリタの大冒険』
上映前、デイヴィッド・バワーズ、サム・フェル両監督及びプロデューサー(?)ジェフリー・カッツェンバーグの挨拶及びフォトセッションあり。これで、以前このブログで紹介した、カンヌでの彼とヒューの握手画像の謎も解けました。
どんどん巨大になって行った地下ロンドンのセットの話や、豪華声優陣に注目してほしいという話など。

で、ヒューが声をアテたロディは、意外なほど「ヒュー」でした。007ごっこはするし歌うし、生身の彼が演じる役よりヘタレてコミカルなところも面白い。
ちょっと実写でこういう感じの役を見てみたいと思いました。
サー・イアン・マッケランのノリノリの怪演っぷりも、アンディ・サーキスとビル・ナイの「間抜けな手下」コンビも良かったです。
ちゃんと全部観たかったけど、これはまあ拡大公開になるだろうし、その時改めて、ということで、リタの船を奪うあたりまで観て、もう一つのスクリーンへ。

『ファウンテン』
お客さんの中のどれだけの人がヒューのファンなのか、またはweb上で知り合った方たちなのか、と思い、妙にドキドキしてしまいました。
でも、男性一人の方もけっこう多かったです。年齢層は全体に高めだったかも。

さて、他の国の映画祭では、一部でブーイングを浴びせられたとの情報も伝わって来たこの映画、確かに好みははっきり分かれそうな、観る人を選ぶ作品だと思います。
内容はひとことでは説明しにくいし、万人にお奨めできるものでもありません。
ヨガもどき太極拳もどきなど、東洋人から見れば寧ろ噴飯ものです。
この映画で語られる輪廻──と言うより転生の思想も、古代ギリシアはじめ各国の神話にも見られるもので、必ずしも「東洋的」という訳ではありません。
その辺りの描写は「難解」なのではなく、単に安直なのだと言ってしまってもいいでしょう。
クライマックスのとあるトンデモシーンに到っては失笑を抑えられませんでした。


その一方で、映画の中心となる「現代」パートの悲痛な愛と死の物語は胸に迫り、後半は殆ど泣きっぱなしでした。
この映画を観て私が連想した既存作品を幾つか上げると──

・『火の鳥 未来編』(手塚治虫)
・『惑星ソラリス』(レムの原作でもソダーバーグ版でもなく、あくまでもタルコフスキーの『ソラリス』)
・『銀河鉄道の夜』(宮沢賢治)また「永訣の朝」から様々な挽歌に到る、妹トシを悼む彼の詩。

ということでお察し下さい。
ソラリスもまた、設定はSF、手法に於いて実はきっちり「怪奇映画」の文法を踏まえつつ、中心となるのは或る夫婦のラブストーリーでした。
他の二つも、心から愛する人(ヒトじゃない存在もあるけど)を失って、この地上のどこにもない「永遠」を求めてしまう人間の悲嘆を追究した作品たちです。

そう言う訳で、私見を述べるなら、『ファウンテン』はSFでもファンタジーでもなく、そういう世界に救いを見出さずにはいられない「人間」というものを極限まで描いたドラマであると思います。
その観点から見れば(これは鑑賞後ご一緒した某様とも一致した意見ですが)、「スペイン~マヤ編」はイジーの書いた物語(これは判り易い)、「未来編」は彼女を失った後のドクター・クレオの妄想であるとも考えられます。
勿論、彼が例の新薬を自らに投与し、「不死人」となったという可能性も否定できないでしょう。その場合、彼の体の無数のタトゥーは、そのまま彼の「死ねなかった年月」を表し、それもまたつらいことには違いありませんが。
また或る時点の「ループ」ですが、実はあの最後に選択した方こそが「正しい歴史」だったのでしょうか?あり得べからざる「過去」も「未来」も、そこで閉じて、残ったのはただ、現在の彼の生のみ……?


主演のヒュー・ジャックマン、レイチェル・ワイズの演技は、共に素晴らしいものでした。それは、一歩間違えれば(既に半分くらい間違えているかも)それこそ大駄作となりかねない設定や構成のこの作品の根底となる部分をしっかりと支え、観る側に深い感動をもたらしてくれます。
特にヒューの演技は、各国でも映画自体への評価とは別に絶賛されていますが、愛する者の死に直面した人間の苦痛、悲嘆、そして狂気を余す所なく表現していました。そういう演技に於いて陥りがちなわざとらしさや大げさな所もなく、観る側にも痛みの感覚を起こさせるほどのリアリティを以て胸に迫ります。
まさに「演技派」ヒュー・ジャックマンの真骨頂を目の当たりにした思いでした。

『マウス・タウン』2007年春休み、全国ロードショー。IMDbの記載によれば3/17リリースとのこと。
『ファウンテン』は、当初同じく2007年春公開と言われ、一部で来秋公開との噂も上がりましたが、同じくIMDbによれば、来年7/7公開予定になっています。
それぞれサイドバーの "release dates" をご参照下さい。

追記 シネマトゥデイによると、『ファウンテン』夜8:20からの上映に際して、ダーレン・アロノフスキー監督の舞台挨拶があったそうです!→ここ
広いスクリーン7での追加上映はこのためだったのか!ぎりぎりまで来日できるかどうか不明で、とりあえずスクリーン2で上映を、ということだったのか、それとも、前売り状況でこの映画の思わぬ人気に驚いた主催者側が、急遽お招きしたのかは判りませんが……

それにしても、あの映画の為のご挨拶の内容がそれか!?そりゃ、下手にネタバレも出来ないとは思いますが。
ヒューは、あちこちのインタビューで「監督の前でレイチェルと濃厚ラブシーンを演ずるのは、非常に気まずかった」ということを盛んに語っていますが、実際に観てみたら、言うほど濃厚でもなかったです。いやらしい感じとかは全くない、何と言うか切実なラブシーンでした。

また、この記事によると、やはり公開は来秋の予定になっていますね。IMDbの記載とどちらが正しいのか、まだ不明ということでしょうか?

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ソラリス (rukkia)
2006-10-23 10:34:18
おお、Qさんも想起しましたか。



そう、ヒューはあれほど痛々しくてもわざとらしくない迫真の演技、ってところがすごいですよね。

これはBFOの時にも思いましたです。



そして「The Prestige」も目出度く初登場1位だそうですし。ふっふっふ。

年明けの赤絨毯シーズンはヒューが見まくれるでしょうかね…。

返信する
新たなステージ (Q)
2006-10-26 16:36:38
rukkia様こんにちは。相変わらずお返事が遅くて申し訳ありません。



rukkia様の所でも触れていらっしゃいましたね。>ソラリス

「死」が介在した極限の夫婦愛という辺りが、あの映画を想起させたのかも知れません。



それにしても、ヒューの演技は本当にすごかったですね。でも、彼の場合、あれだけの演技をしても、彼の実力からすれば、別に「あれが頂点」ではないだろうと思えるんですよ。

プレステージの方も、よく言われるショウマンとしての部分だけでなく、ダークな部分や、その他にもいろいろな面を見せてくれるみたいだし、本当に今年の米映画界は「ヒュー・イヤー」だと思います。
返信する
いまさらですが・・・ (マチコ)
2006-10-29 20:26:32
『ファウンテン』、昼の回のチケットを逃し、オークションもいまいち手が出なかったのですが、追加の夜の回のチケットは取れて行ってきました!



前日に風邪を引いて、更に次の日は普通に仕事だったのでぎりぎりまで迷いつつ行ったのですが、監督とプロデューサーの挨拶に司会として登場した襟川クロさんが「日本での公開は2007年秋」と言った時、思わずのけぞりましたが、「ああ、今日無理して来てよかった~」とも思いました。

公開時期、いろいろ噂があるんですね。いずれにしろ、間違いなくアメリカでのDVDの発売の方が早そうですね~。



話の方は…もともと時間軸がいったりきたりする話は得意じゃないので、「あれ?あれ?」と必死でストーリーを追いかけて混乱にしているうちに「え、これで終わり!?」と終わってしまった感じです。

理屈を追いかけてはいけない種類の話なんだと1週間たった今は思いますが、観ている最中は自分の頭の上に?が常に浮いている感じでした。現代編のトミーとイジーのシーンはどこもすごくよかったのに、未来編(?)の宇宙飛行士(だったんだと終わった後チラシを見て知りました…)トムが出てくるとひいてしまったんですよね~。

監督が表現したかったのはきっと未来編の部分だったんだろうと思いますが、私は現代編の部分だけで映画にしてほしかったなと思います。

それぐらいヒューとレイチェルはよかったですね~。屋根のシーンとお風呂のシーンが特によかったと思います。不安とか苛立ちとか焦りを抱えつつ、やさしくしたい気持ちもあって、葛藤しているトミーの心情をヒューはくるくる表情を変えながら見事に演じていましたよね。

ぎりぎりの精神状態にいる危うさや緊張感も、みているこちらにまで力が入ってしまうぐらい真に迫っていましたし。



レイチェル・ワイズもニコール・キッドマンのような絶世の美女タイプではないのに、演技をしているとものすごくきれいに見える人ですよね。スペイン編の女王姿も美しかったし、イジーも年齢を感じさせない無垢な感じできれいでした。



現代編の部分がよいだけになおさら未来編で私は引いてしまったのですが…。

Qさんがおっしゃられているように輪廻思想の違いのせいなのでしょうか。映画が始まる前に襟川クロさんは「東洋的思想だから日本人には受け入れやすいかもしれない」と言っていましたが、一口に輪廻と言っても日本人の考え方とはだいぶ違うものだったので、逆に受け入れられないんじゃないのだろうかと私は思いました。未来編みたいなのはどこかで見たことあるなあと映画を見ながら思ったのですが、映画を見た翌日「ああ、『火の鳥』だ」と思い当たりました。でも、あそこまでの深さはなかったなあとも思ってしまったのですが。

映画を見ながら「これは、DVDで監督のコメンタリーを聞きながら見たい」と思いました。そうでもしないと、たぶん何度見ても私には監督の意図したところがわからないだろうと思います。



1週間たっても感想がうまくまとまらないぐらい未だにもやもやしてますが、実は監督の目的はこれだったんでしょうか?(笑)

いろいろ考えさせられてしまうという部分では成功しているのかもしれません。

なんだか否定的なことばかり書いてしまいましたが、現代編は本当によかったと思います。

これまでにないヒューの暗い部分の演技もたくさん見れましたし。ストーリーを知ってから見る2回目の方が楽しめる(ヒューの鑑賞という意味で)かもしれませんね。

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