南十字星からアジアQZSS(日)/IGSO(中・印)を眺める

グローカルイースト視点
アジアQZS/IGSO軌道モニタ
高橋冨士信 fj鷹@gmail.com

QZSS(みちびき)受信対応スマホを増大させ、木造窓際GNSS/QZSS測定網を拡大させるか

2017年11月04日 | QZSS受信スマホ
いかにQZSS(みちびき衛星)受信対応スマホを増大させ窓際GNSS/QZSS測定拡大させるのかの経緯と現時点の方策を記録します。こうした歌舞伎同様の大見栄は日本を元気にするにはもっと必要でしょう。

1.背景と目的
2010年打上げのQZS-1号から7年を経て2017年度はQZSSの宇宙セグメントが4機へ増強されてきた。この7年間は同時にGNSS受信・活用できるスマートフォン(以下スマホと略)の普及が著しい期間であった。GPS, Glonass, Galileo, BDSSを受信・活用できるスマホ用アプリも広範に普及した。QZSSの受信可能主要スマホ状況と対応する主要GNSSアプリの状況を記録し、窓際GNSSスマホ定点観測結果の中間的を記録してきました。QZSS4機が実稼働に入ってゆこうとする2017年11月時点での大見栄を張った展望例を記録します。


2.QZSS計画とGPS/GNSS受信スマホの登場
 QZSSの計画段階の21世紀初頭では大衆向けの世界規模で使用できるGPS受信機はGarmin系の独立型とNMEAロガーが一般的であり、GPS搭載i-mode携帯電話機は先端的ではあったが、日本国内での利用に限定されていた。
 2005年Google Earthが公開され、同時にそれをWEBベースに射影するGoogle MapのAPIが公開された。PCベースでのグローバルなMap利用が世界規模で一気に普及するなかで、2008年には米国でAndroid OSを搭載した最初のT-Mobile G1が発売された。またアップルは2007年にGPS機能を内蔵しないままiPhone初代機を発売した。
 2010年の打上げを目指したQZS-1号機の開発はスマホの登場と発展を見ながらも当初はGPSの補完型衛星として、専門技術者による専門分野での測位・測地利用のための受信機を利用ターゲットとしていた。利用ターゲットに大衆的受信利用まで含ませる想定は困難なまま、2010年にQZS-1号は打上げられ、後続機計画の具体化を待つ状況となった。
 翌年2011年3月の東日本大震災後にGPS内蔵スマホの普及の爆発的拡大が始まった。当初はGPS受信のみであったが、GlonassのCDMA化が完了すると2012年頃にはAndroidスマホのGlonass受信も一般化した。また中国は北斗衛星計画を3年計画で一気に実現し2014年頃からAndroidスマホはBDSS受信機能内蔵も一般化した。GPS/GNSSという表現も一般的になった。

 QZSSの後続機計画はGNSS受信機能内蔵スマホの爆発的普及を見ながらであったが、やはり主たる利用ターゲットは専門技術者による専門分野での測位・測地利用の補完用受信機とせざるを得なかった。スマホなどによる大衆的受信利用の想定は大いに期待されたが、スマホメーカやSoCメーカへの積極的な働きかけは十分にはされなかった。
 2017年にQZSS後続機が打ち上がる計画が公式になるとともにスマホによるQZS-1受信状況への関心が特にネット上で高まり、スマホ機種別のSNSである価格ドットコムなどでは、みちびき受信がスレッドとして登場したが、結果的にはみちびき対応スマホ機種探しはネガティブな結果に終わることが多かった。

3.QZSS受信スマホ確認モニタリング・定点調査
 筆者はAndroidスマホのナビ機能が南太平洋の島嶼域やフィンランド北極圏においても高性能に機能することを確認できた2014年頃から、QZSS受信対応スマホを見つけ出す作業が重要と判断し、木造家屋における受信確認モニタリング観測を開始した。
 筆者が当時保有していた2011~2013年型AndroidスマホではGPS受信のみであったが、2014年以降発売のスマホではロシアGlonassついで中国BDSS衛星群もスマホ受信できることをモニタリングで実際に確認して、スマホのマルチGNSS受信化が大きく進展しているファクトデータを関係するいくつかの学会発表を通じて周知に努めた。
 特にわが国の準天頂衛星QZS-1を受信できるLTE対応スマホが入手できないことを価格ドットコムメンバーなどSNSパワーユーザの支援を得ながら明らかにした。
 わが国の企業がスマホ生産を縮小・撤退する状況下で、第4次産業革命の中核を担うべきスマホ連携必須分野での大衆的なQZSS活用方策こそがわが国のGNSSナビ産業の活性化ならびにIoTの基盤的技術として重要ではとの提案を行ってきた。
 特にカーナビ分野ではスマホ内蔵センサーをフルに活用したカーナビなど高機能スマホアプリ技術をわが国は有しており、大衆的ナビ応用のパラダイム・シフトにQZSSを参加させるべきとの周知に努めてきました。

4.スマホGNSS定点観測の開始と継続
 2015年5月にASUS社のZenfone2インテルSoC版がLTEスマホとして初めてQZS-1の受信ができているというファクトデータ、引き続いて2016年2月には同社機のZenfone Zoomにおいて同様にQZS-1受信可能のファクトデータを得て、内閣府QZSS広報担当などに周知を行った。
 複数台のZenfone2による実測確認モニタリングでは、当初防水カバーしたスマホの屋外長期雨ざらし測定失敗などの試行錯誤を繰り返した。その結果、長期連続測定にはGNSSからの電波減衰が比較的少ない木造家屋の二階ないしはグルニエ窓際にスマホを設置することが有効であると判断し、2015年5月よりASUS Zenfone2機を用いた木造自宅での定点観測・連続モニタリング測定に入った。SNレベルは屋外より約10dBダウンするが、A-GNSSネットワーク補強機能活用により木造窓側にて80%以上の衛星が受信可能であることを関係学会において報告した。
 2015年6月以降からは木造屋内の南北窓際における複数スマホによる連続定点測定をネットワーク接続でモニタできる体制に入った。
 QZSS/GNSSモニタリングビッグデータ取得は、当時のQZS一機の孤軍奮闘状態から後続QZS機打上げ・稼働開始を確認できるまで行って、数少ないスマホQZSS測定データの資料として残し、速報情報をブログで公開する形態にて現在進行・実施中である。

5.欧州のGalileo対応スマホ開発経験の重要性
 前世紀から構想されて、実現が遅れに遅れてきたGalileo衛星系においても当然ながら数年ほど前まではスマホGalileo受信は主要ターゲットではなかった。
 しかしスマホGNSSナビの大衆的普及やIoT技術におけるGNSSスマホの役割が、欧州のインダストリー4.0計画の基盤技術になるとの情勢判断がGalileo受信スマホ開発の立ち遅れ解消に弾みを付けた。欧州BQ社のGalileo受信可能SoC技術がSnapdragonなど主要Socメーカに技術移転されて、2016年以降販売のスマホのGalileo受信対応は一気にポジティブに転換してきている。
 この欧州のGalileo対応スマホ開発の経験を学び、QZSSスペック全体をしっかり把握している国内スマホメーカがSoCチップセットの基本形を作り、スマホQZSS測定のファクトデータの実績を固めつつ、SoC大手企業に一気に技術移転できる仕組みを早急にわが国も考案する必要があると考えられる。
 こうした点からも、本ブログモニタリングにおいて本年7月からの苛酷な夏季シーズンを乗り切って安定なQZSS受信を実証し、Andoroid7に到達してRaw data出力までを実現してきたわが国のCovia社のスマホFleaz Que(CP-L45s)の以下の24時間測定の実績などは素晴らしいものです。またQue機のコストパフォーマンスは非常に心強いものであります。(現在Que機は入手困難となっていますが、より進化したQZSS対応の後継機?登場をお待ちするものです。)


6.まとめ
 GNSS/QZSS技術は測位・測地技術により防災など国民の安全・国土の保全にとって重要であるだけではなく、今後のスマートデバイス全般への内蔵が拡大することにより大衆的な様々なIoT応用において必須技術となる。今後一層の空洞化が進展する製造業の生産現場IoT化などの第4次産業革命(インダストリー4.0)の基盤技術としての中核的な役割が期待されている。
 専門技術者による専門分野での応用を広範に拡大する中で、大衆による大衆のためのスマートアプリ開発への積極的なQZSS衛星活用などを、マッシブな応用分野に展開してゆくことが求められます。このためには技術的SNSとして長い経験と豊富な実績を持つ価格ドットコムなどのわが国独自に発展してきた秋葉原的なSNSの仕組みの活用とSNS参加メンバーの広範な協力を得ることが重要と考えます。

 特に木造家屋での窓際スマホGNSS24時間連続測定の拡大は、日本家屋の特徴を大いに活かしたものであり、国際的にも前例が無いボトムアップからのIoT向けの面的・立体的かつ超濃密な基準点ネットワークの構築に繋がる可能性を持つものです。わが国の第1次産業から第3次までの基幹産業と国内消費経済、特に農林水産業と製造業部門の底力を大衆的に支えてゆく形態の日本型インダストリー4.0オープン基盤に転化しうるものではと考えています。
 本モニタリングにおいて性能の安定性を確認してきたCovia社が販売してきたFleaz Que機を当面の主力機として、最近のスナドラ835機でのQZSS対応を巻き込みながら、国内外の情勢に貢献できるスマホQZSS/GNSS連続モニタリング成果の公開を継続してゆきたいと思っています。

 また賛同して頂ける方々による各自のモニタリングデータの公開の拡大を図ってゆきたいと考えています。ご賛同頂ける方々のバザール方式による自己責任・自主的なご参加を期待しています。
(なお、この大見栄ブログ記事は、いつ消えるかわかりませんので、ひとつよろしくお願いします。)
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