年末を迎え、政界の実力者が「大連立」を合言葉に動き出した。渡辺恒雄・読売新聞グループ本社会長は8日、突如自民党本部に乗り込み、谷垣禎一総裁に大連立を打診。森喜朗元首相も官邸で菅直人首相と向き合った。一方、菅首相に国会へ突き出されそうな小沢一郎元民主党代表は同日夜、鳩山由紀夫前首相・邦夫元総務相兄弟や舛添要一元厚労相と会談。「俺を切ったらこいつらと…」と言わんばかりに、菅サイドを牽制した。しかし、一連の動きを統括する総合プロデューサーはおらず、行動はバラバラ。終着駅は見えぬままだ。
「いやあ、きっぱりと断られたよ」
渡辺氏は谷垣氏との約1時間の会談を終えた後、周囲にこう語り、大連立工作を振り返った。わざわざ自民党本部の地下駐車場に乗り付け、特別なエレベーターで党本部4階の総裁室に滑り込む演出に、報道陣は「よほど秘密の話をするのでは」と色めき立った。
渡辺氏といえば、福田政権下の2007年、自民党と小沢氏率いる民主党との大連立を仲介。谷垣氏との会談前日である7日には鳩山前首相とも会談していただけに、永田町は「いよいよ大連立が本格的に動き出したか」と緊迫ムードに包まれた。
複数の関係者によると、渡辺氏は「税と社会保障、憲法問題を一刻も早く進めなければならない」として、大連立を提案。しかし谷垣氏は「民主党が何を目指しているのかまったく分からないし、単なる政権延命策にも見える」として、即座に断ったという。
会談について一部メディアは「渡辺氏は『政府・与党の使者として来た』と発言。谷垣氏に副総理を打診」などと報道したが、菅首相側近は「現時点で首相サイドから渡辺氏に仲介を頼むことは2万%あり得ない」と指摘。菅首相も「一体どうなっているんだ」と困惑していたという。
このため永田町では「渡辺氏の独り相撲だったのでは」「小沢サイドが菅を切った上で、大連立を仕掛けたのでないか」などと、様々な憶測が飛び交った。
この渡辺氏の行動がここまで注目された背景には伏線がある。同日午前、07年の大連立劇でも顔を出した森氏が、官邸で菅首相と向き合っていたからだ。
会談は硫黄島での旧日本軍の遺骨収集をめぐり、森氏が持ちかけたもの。わずか30分で終え、複数の同席者もいたことから、首相周辺は「森氏が『野党の言うこともよく聞かなければならない』といっただけだ」と説明する。しかし、永田町では「わざわざ森氏が官邸に出向いてするような話でなく、極めて不自然だ」(自民党幹部)との見方がもっぱら。
■小沢、俺を切ったらこいつらと…
実際、森氏は会談の数日前、親しい自民党議員にこう漏らしている。
「今回の大連立は(2000年の)『加藤の乱』のメンバーが、10年越しに思いを成就する場なんだよ。『あんたが大将だから』と最後に止めた谷垣も、石原伸晃幹事長も加藤紘一元幹事長と行動をともにしようとした。当時の加藤のカウンターパートナーは菅だ」
それだけに、永田町有力筋は「菅政権が行き詰まるのは確実なだけに、永田町ではいずれ大連立に行かざるを得ないとの空気が広がっている。フィクサー気取りの森氏としては、自分がキーマンであることをアピールするためのパフォーマンスだったのでは」と解説する。
永田町で急激に大連立の機運が盛り上がっているのは、総理の座にしがみつきたい菅首相が小沢氏の政治資金規正法違反事件に絡み、小沢氏を国会で議決してでも政治倫理審査会(政倫審)に引っ張り出そうと動き始めたことも背景にある。
この先には、消費増税など政策ベースの与野党連携、いわゆる菅首相が模索する大連立構想があるからだ。
岡田克也幹事長は、年内に緊急役員会を開き、国会議決の流れを決めたい構えだ。これに対し、小沢系議員は、菅首相をひきずり降ろすための両院議員総会開催を提唱するなど、一触即発の状況となっている。
その小沢氏は8日夜、東京・麹町の寿司屋で鳩山兄弟や舛添氏と会談した。席上、由紀夫・邦夫兄弟は「今の与党中枢は危機感がない」と菅首相を批判。特に由紀夫氏は「協力しようにも(首相は)私たちを切って政権浮揚させようとしているからやりようがない」と露骨な不快感を示したという。
民主党中堅は「俺らを切れば、知名度の高い舛添や邦夫らを巻き込み、いつでも救国内閣を立ち上げられるぞ、という菅執行部に対する脅しだ。舛添氏は、7月の参院選で小沢氏を徹底的に攻撃していただけに、その舛添氏を会談に応じさせた意味はでかい」とみる。
ただ、自民党内では「小沢氏はもとより、一連の外交失態や、『影の宰相』こと仙谷由人官房長官を抱える菅首相が代わらない限り、民主党と組むことはあり得ない」(党重鎮)という声がもっぱら。複雑に絡み合った方程式を解くキーマンは不在で、大連立に向けた政界図は闇のままだ。
「いやあ、きっぱりと断られたよ」
渡辺氏は谷垣氏との約1時間の会談を終えた後、周囲にこう語り、大連立工作を振り返った。わざわざ自民党本部の地下駐車場に乗り付け、特別なエレベーターで党本部4階の総裁室に滑り込む演出に、報道陣は「よほど秘密の話をするのでは」と色めき立った。
渡辺氏といえば、福田政権下の2007年、自民党と小沢氏率いる民主党との大連立を仲介。谷垣氏との会談前日である7日には鳩山前首相とも会談していただけに、永田町は「いよいよ大連立が本格的に動き出したか」と緊迫ムードに包まれた。
複数の関係者によると、渡辺氏は「税と社会保障、憲法問題を一刻も早く進めなければならない」として、大連立を提案。しかし谷垣氏は「民主党が何を目指しているのかまったく分からないし、単なる政権延命策にも見える」として、即座に断ったという。
会談について一部メディアは「渡辺氏は『政府・与党の使者として来た』と発言。谷垣氏に副総理を打診」などと報道したが、菅首相側近は「現時点で首相サイドから渡辺氏に仲介を頼むことは2万%あり得ない」と指摘。菅首相も「一体どうなっているんだ」と困惑していたという。
このため永田町では「渡辺氏の独り相撲だったのでは」「小沢サイドが菅を切った上で、大連立を仕掛けたのでないか」などと、様々な憶測が飛び交った。
この渡辺氏の行動がここまで注目された背景には伏線がある。同日午前、07年の大連立劇でも顔を出した森氏が、官邸で菅首相と向き合っていたからだ。
会談は硫黄島での旧日本軍の遺骨収集をめぐり、森氏が持ちかけたもの。わずか30分で終え、複数の同席者もいたことから、首相周辺は「森氏が『野党の言うこともよく聞かなければならない』といっただけだ」と説明する。しかし、永田町では「わざわざ森氏が官邸に出向いてするような話でなく、極めて不自然だ」(自民党幹部)との見方がもっぱら。
■小沢、俺を切ったらこいつらと…
実際、森氏は会談の数日前、親しい自民党議員にこう漏らしている。
「今回の大連立は(2000年の)『加藤の乱』のメンバーが、10年越しに思いを成就する場なんだよ。『あんたが大将だから』と最後に止めた谷垣も、石原伸晃幹事長も加藤紘一元幹事長と行動をともにしようとした。当時の加藤のカウンターパートナーは菅だ」
それだけに、永田町有力筋は「菅政権が行き詰まるのは確実なだけに、永田町ではいずれ大連立に行かざるを得ないとの空気が広がっている。フィクサー気取りの森氏としては、自分がキーマンであることをアピールするためのパフォーマンスだったのでは」と解説する。
永田町で急激に大連立の機運が盛り上がっているのは、総理の座にしがみつきたい菅首相が小沢氏の政治資金規正法違反事件に絡み、小沢氏を国会で議決してでも政治倫理審査会(政倫審)に引っ張り出そうと動き始めたことも背景にある。
この先には、消費増税など政策ベースの与野党連携、いわゆる菅首相が模索する大連立構想があるからだ。
岡田克也幹事長は、年内に緊急役員会を開き、国会議決の流れを決めたい構えだ。これに対し、小沢系議員は、菅首相をひきずり降ろすための両院議員総会開催を提唱するなど、一触即発の状況となっている。
その小沢氏は8日夜、東京・麹町の寿司屋で鳩山兄弟や舛添氏と会談した。席上、由紀夫・邦夫兄弟は「今の与党中枢は危機感がない」と菅首相を批判。特に由紀夫氏は「協力しようにも(首相は)私たちを切って政権浮揚させようとしているからやりようがない」と露骨な不快感を示したという。
民主党中堅は「俺らを切れば、知名度の高い舛添や邦夫らを巻き込み、いつでも救国内閣を立ち上げられるぞ、という菅執行部に対する脅しだ。舛添氏は、7月の参院選で小沢氏を徹底的に攻撃していただけに、その舛添氏を会談に応じさせた意味はでかい」とみる。
ただ、自民党内では「小沢氏はもとより、一連の外交失態や、『影の宰相』こと仙谷由人官房長官を抱える菅首相が代わらない限り、民主党と組むことはあり得ない」(党重鎮)という声がもっぱら。複雑に絡み合った方程式を解くキーマンは不在で、大連立に向けた政界図は闇のままだ。