香りは小さな旅 

つれづれなる呟き

ライフ・オブ・パイ

2013年02月27日 | 観る 聞く 読む 味わう etc.
映画のもつ力、にワクワクさせられる作品に
また出会うことが出来ました。
「ライフ・オブ・パイ」 です。

この映画、私は殆ど内容を知らず、ただ
アン・リー監督(あのブロークバック・マウンテン、
そしてグリーン・ディスティニーも)の作品であること、
虎とインドの青年が漂流?
ふ~ん、面白そうと。
特に、あのポスターの画。虎がボートに乗っている図に
ひきよせられて見に行ったのですが・・・






いえ、これが何とも驚く仕掛けだった。
色んな意味で。



とてもとても幻想的。
でも裏返し、でもあったんですね。

それを実現したスタッフの力。

原作、も読みました。
オリジナリティーに満ち溢れていました。
実際、繰り返し読んでしまう、謎解きの部分が・・・
驚くような生々しい表現も含めて
すべてがパズルを解く様に、最後は
虎・・・に収斂するんですよね。
そこまでの持って行き方が・・・
これを映像化していったアン・リー監督。
取捨選択の力といいましょうか。
彼はグリーン~で、ワイアーアクション撮っていますが、
動く、ものの美しさを捉える人ですね。
movie という事を又思い出させる映画でもありました。



それにしても、あの虎・・・



パイでなくても、又会いたくなります。


團十郎丈 ゆく

2013年02月09日 | 観る 聞く 読む 味わう etc.
前回のブログを書いていた頃、團十郎丈は天国へ召されていたのでした。
なんという急なこと・・・


この数ヶ月、いえ、もう歌舞伎を見始めてから(数年ではありますが)
次々と起きる別れに、これが生の芸を観る強烈な喜びの
反対側にある物、なのだなぁ・・・と気づかされます。
その人の芸を直に舞台で見る幸せ、からある日突然切り離されてしまう、
役者の死というもの。寂しいです。


そう、去年秋に見た 勧進帳 の弁慶。あれが私にとっては
團十郎さんの舞台の最後でした。高麗屋の幸四郎さんとの
競演でした。全く違うものだなぁと面白く見たのでした。
上手いとか巧みとかではない、踊りも滑らかではなく、
ただもう逼迫した状況、をせいいっぱい表し、
そして詰め寄る富樫への、最後は深い感謝。
團十郎さんの人柄が滲み出る、熱い弁慶に感動しました。


同じく、去年正月に見た関扉(せきのと)の
大伴黒主も良かった・・・
大悪人なのですが、敵役だと、一段と映えるんです。あの目が。
余裕でしたね。
対する藤十郎さんですが・・・桜の精が、もう幽玄で。
が、黒主に対するや、桜の枝を振り回して、踊るわ踊るわ・・・
いや、この年齢で(もう八十を過ぎてらっしゃる)なぜああもお元気かと。
芸の力はすごいものよ、と圧倒されました。
いいコンビだった・・・
藤十郎さんにとって、一回り以上も年下の役者さんが
去っていく。残るのも辛いですよね。

テレビ番組では随分おみかけした。
白血病闘病の事は、かなり生々しく
オープンにされていたけれども、記録という
気持ちもあったようで、そういう時はとても冷静。
星を見るのが大好きな少年時代だったという、
そんな團十郎さんの本来が現れていた。
海老蔵さんの事件の時も、どこまでも矢面に立って守っていましたね。
そこだけは譲れない、というとき、ソフトに見えていた
底にある凄く強いものが、垣間見えてきた。
海老蔵丈は、売れるから、とにかく巡業ばかり。
それも独り、座長です。中央で、大先輩とがっぷりとは
いかない状況がずっと続いて、そしてあの事件。
團十郎さんは、自分のお父さんである、元祖海老様を
むすこさんに見ること、あったそうです。
風貌だけでなく、性格もまた・・・苦労多き人でした。

海老蔵さんが復帰してからは、寄り添うように親子で
各地を御礼参り状態。復活の舞台、見ましたけれど
随分気を使っている感じが伝わりました。
親だなぁ~と。

そして今回も、彼がオフの時にお父さんは行ったわけで・・・
忙しかった一生の最後に家族と居られたのは
神様の計らいかもしれません。





海老様と言われた十一代目市川團十郎と奥さんをモデルとした、
宮尾登美子さんの「きのね」は壮絶な内容でした。
團十郎さんの背後に、こんなドラマがあったとしたら
それは忍耐強くもなるし、弱音も吐かないわ、と・・・。
お母さんは、海老様の女中さんだった。女中、という
言葉すら、もう死語に近いけれど、
子どもがいることは隠されていたらしい。
ついに堂々と二人は結婚され、星好きな少年は跡継ぎとして
舞台に出るようになり、陽の目を見たわけです。
が、19歳で父親が亡くなり、師匠も同時に失ってしまい、
その後の苦労は計り知れない。
幾星霜ののち團十郎さんは、彼なりに十二代目をしっかり創りあげた。
おおらかで、骨太な芸風と皆さん言ってます。
わたしはほんの少しだけ。
でも、感じる事はできましたね。
それを継承させるのはこれから、という時にさっと行ってしまった。



が、海老蔵さん、一月の浅草新春歌舞伎での勧進帳で、
自分が演じる弁慶のことを、
又父にしっかり聞いた、書いてありました。
役、が親子を、師匠と弟子を繋ぐ。
伝わっていく、こうやって。
大波小波、これから何度も、何度もあるでしょうが
どうか、次代の團十郎襲名まで、
海老蔵さん、つつがなく精進して下さい。
そして、多くの人が成田屋を、応援しますように。
願うのみ・・・



↓ 團十郎さん、去年12月11日最後のインタビュー。南座の公演で
18日に休みをる、その一週間前。シェールガス、の名が出ているのが
團十郎さんらしい。最後まで、星が好きだったのだな、と。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130204-00000525-san-soci

3月24日 団十郎さんからの伝言 というインタビュー記事 付け加えました。



http://www.jiji.com/jc/v4?id=2013ichikawa_danjuro0001



おおきに

2013年02月03日 | 観る 聞く 読む 味わう etc.
先日、
部屋に置く土人形を注文。
送料と代金、ネットで送金したら
翌日には到着。すごいなぁ・・・この国。
嬉しかったのは・・・注文がすんだら
「おおきに」と電話の向こうで。
そうか・・・
ふっと幸せな気分になりました。


が、そこから連想が次々と・・・苦笑


大阪へ行ったとき、飛び交う言葉は柔らかくて感動。
そして、どこへ行っても、食べ物が美味しい。
口に入れる物への熱意が、彼の地は違う。

去年はこの大阪で、文楽への批判が突然おこりました。

まぁ、的はずれでいちいち書くと、あきれてしまう。
結局、逆説的に観客が増えたり、残念なことに
研修生の募集がゼロだったり。


一応東京の我が街、
図書館で去年、昔からある歌舞伎の雑誌が閲覧できなくなってしまった。
家の近くの量販店で注文しようにも、扱ってさえいない、と言う。
今度はどこへ行くんや、ニッポンと怒り。

大げさかもしれませんが・・・
じわじわと伝統のもの、が隅に追いやられていく。
効率悪い、採算合わない。
そんな感じ。
何度もあったこと、でしょう。

大阪へ行ったときは、
まわりはぎらぎらの食の天下。
が、文楽劇場、人間国宝級の方が出られても、
なかなか満席にはならないと聞いた時はクラクラッ
大阪よ・・・なんともったいない。

文楽のあの熱い浄瑠璃も、重い人形を操る人形遣いの方々も
汗みずくなんですね。
そうやって深く、豊かな世界を伝えてくれているわけです。
あぁそれなのに、研修生が集まらないなんて(昨夏での話ですが
今はどうでしょうか・・・祈)。
そんな現象を起こしてしまった大阪の市長さん、
ほんのわずかな観賞体験で、補助金カット!なんて
言い出したようです。
舞台裏の労苦に思いを馳せてみてはもらえなかったか。
芸、は長い長い鍛錬の時間と、目には見えない繊細な感性を練り上げていく世界。
人が来ていないじゃないか、分かりにくいじゃないか、
であっさり括られ、バッサリと切るものでしょうか。
なんとも残念な「事件」、でした。

この「大阪の変」のあと、若い文楽の技芸員さんたちが
集客活動で街へ出たらしい。
芸への絶え間ない努力も大切ですが、肝心の文楽を
知ってもらうための販促、という意味では
前進だったのかもしれません。
本来は行政の一部である広報や、教育の場でこそ
意識的にとりあげてもらいたいものですが、
騒ぎで観客が一時は増えたのがせめてもの効果。
でも続かないと、です。

そう、文化は人が行かなくては。見なくては。



NYで活動する現代美術作家の杉山博司さん。
一昨年の夏に、「曽根崎心中」を演出しました。
映像で観ただけですが、ゾクゾクしました。
今、根津美術館で展示されている、国宝「那智瀧図」
に若い頃強く感動し、アーティストになる決心をしたという
杉山さん。信仰の対象になりうるような、そういう作品へ一歩でも
近づきたいと、強い個性を求められるアメリカで
日本人としての感性を大切に、精進してきた。

その彼が、今回の熊野詣でで、

古代人が持っていた感性を自分の中にもあるんだということを
発見する旅が必要と言っていました。

NYに住む彼は9.11をもろに体験したでしょう。そして3.11です。
混迷の時代に、揺れ動く自分たちを支えるものを
求める旅。

これは、伝統芸術の舞台を観る体験に通じると思うのです。




昔の人たちも大変やったなぁ、と思いを馳せる。
その形を受け継ぐ人々を実際に応援する。

そのことをあきらめない。シンプルですが
そこへ行きついてしまいます。










伏見人形