仕方がない。 文明の利器が使えない彼女に、手紙を渡す以外の告白の方法はないだろう。それに意外と頑固な百合の性格を考えれば、彼に気持ちを伝えるまで諦めなそうになかった。 ? 「うんっ!」 ? 大きく頷いた彼女は、目を輝かせて嬉しそうに微笑んだ。 百合は二歳年下のわたしの従姉妹だ。小さい頃に両親を亡くした彼女は、田舎の祖父母のもとで暮らしていた。 半年弱前、彼女が短大に入学すると同時に、通学に便利なわたしの実家で一緒に暮らしはじめた。だが、随分と山奥で育ってきた百合は、感覚が都会生活人とはズレている。時間の感覚もゆったりで、携帯はおろかパソコンもろくに使ったことがないようだった。緑豊かな田舎で祖父母と静かに毎日を過ごしていたのだから当たり前なのかもしれない。 そして、なぜかその箱入り娘が、たまたまわたしのバイト先ですれ違った鹿嶋に恋をしたということだった。