店を始めてすぐにTさんという方が来るようになった。
彼は私の淹れるアイス珈琲を気に入ってくれて、夏も冬もアイス珈琲を飲むことが多かった。
一時ローカルな話題になった「究極のアイス珈琲」は、彼が名付けてくれたものだ。
昔から珈琲好きの間ではアイス珈琲を、暑い夏に温かい珈琲の代わりに飲むものと考えている人が多いのが残念だった。
そこで温かい珈琲と同じように一年中飲んでもらえるアイス珈琲を作ろうと考えていた。
そのアイス珈琲を気に入ってくれたことが、とても嬉しかった。
彼は広告代理店勤めを経てご自身の会社を興し、それを後継者に譲ってこの街に戻ってきたというお話だったと思う。
とても才能豊かな方で、数多くのイベントを企画していた。
彼との会話はいつも楽しみだった。
私が長年続けているジャズ鑑賞会のアイディアも、彼との会話の中から生まれ、私が具体化したものだ。
ある日開店準備をしているときに、別のお客様からTさんが亡くなったらしいという電話が入った。
葬儀場に問合せると、それは事実だった。
突然の別れだった。
新しいアイス珈琲を作ることにした。
インドネシアの珈琲豆からコロンビアの珈琲豆を使ったアイス珈琲に代えることにした。
そしてメニューに載せた。
2019.6.19
珈琲パウエル 店主
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