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刑法論点

刑法論点

仮定的因果関係論

2006年03月30日 | 総論-構成要件
[定義]
 ある行為から結果が発生した場合において、仮にその行為がなかったとしても別の事情によって同一の結果が生じた場合の因果経過をいう。

[問題提起]
 条件公式(コンデティオ・シネ・クア・ノン公式)=「あれなければ、これなし」によれば、条件関係が否定されるようにも思えることから問題となる。

[学説]
①合法則的条件説:条件関係の公式を放棄して、後攻事実である結果が先行事実である行為から自然法則に従って発生したと見られるとき因果関係があるとする見解。「Aがあったから、Bを問う」。
②論理的関係説:刑法の目的は行為者を刑罰によって結果回避へと義務付けるところにあり、結果回避可能性がないときには、条件関係がないとする考え方。

[批判]
②説への批判。
条件関係というのは、まず行為と結果との間の事実的な結合関係を明らかにするものであ
る。にもかかわらず、結果回避可能性の有無を考慮して、この段階で条件関係を規範的に
限定することには基本的な疑問がある。

[①説の帰結]
択一的因果関係の場合は、「疑わしくは被告人の利益に」という原則の帰結として、いず
れも未遂ということになる。
仮定的因果関係は当然に考慮されない。なぜならば、現実に起きた事象の結合関係を問
うというのが条件関係だから。
 合義務的代替行為の場合、行為から合法則的に結果が生じていることは明らかだから、合法則的条件説からは条件関係は否定することはできない。但し、過失の問題としては、なお罪責を否定する道は残されている。

[参考]
大谷P231  西田P91