NPO法人POSSE(ポッセ) blog

見よう見まねの派遣労働

 先日、POSSEのシンポジウムに来てくれた30代の派遣社員の方とお話ししました。
 彼が今問題に思っていること、それは「仕事を教えてもらえない」ことだそうです。
スキルアップできないことなのかな、と思ったのですが、どうもそうではないようです。

 彼の職場では、仕事の内容について派遣社員には何も教えられず、「社員のやっているのを見よう見まねでやれ」と言われるそうです。そういわれても、当然できない人がいるのでトラブルが起こります。そうすると今度は責任がすべて派遣社員に負わされる何もやり方を教えられなくて、仕事に失敗したことを理由に解約(解雇)された人がたくさんいるそうです。

 派遣は「使い捨ての労働力」と言われることがあります。分析的に、そのように語ることは簡単ですが、その意味するところの恐ろしさを肌身で感じた気がしました。

 そもそも、いつから派遣労働はこんなに増えたのでしょう。
 戦後、今で言う「労働者派遣契約」なるものは違法となりました。派遣会社は労働者を企業に派遣して、その中間利益を得ますが、これは「中間搾取」と呼ばれ、戦前の忌むべき封建的慣習とされたのです。そしてもちろんこのような雇用のあり方は、労働者の雇用を不安定にします。

 この悪しき契約形式が復活したのは1985年です。財界の強い要請で、専門職に限り、労働者派遣事業を合法化しました。そのときは、「専門職だから」必要なのだ、そしてこれ以上拡大されることはあり得ない、と盛んに強調されたそうです。

 しかし、その後も財界の非常に強い要求があり(と労働法の教科書には書いてあります)、1999年に労働者派遣は専門職に限るどころか、医療や製造業など特定の分野を除く全てに解禁されたのです。そしてさらに、現在では製造業(なぜ製造業に派遣を導入しなければならないのか、合理的な理由はもはや見あたりません)にも解禁されています。

 今では派遣があるから、企業は労働者に仕事の仕方を教える必要もありません。「見よう見まね」で出来ない人は、単に「解約」すればよいのです。このような現実を招いた財界、行政、国会議員は何らかの責任を取るべきでしょう。

コメント一覧

アルダー
仕事への本人の意識は如何に?
何も知らない場所にきて、さぁヤレ。と、言う状態だったのでしょうか?

基本的に、労働は教えてもらうものではなく、個人が吸収していくものだとわたしは思っています。

解らなければ、聞く。

派遣社員であろうがなかろうが、どんな業種であろうと、稼ぐために仕事をする。生活のために仕事をするという考えがあれば、それなりに仕事に対する考えも前向きになり、仕事をこなすための質問なども自然と出てくるはずです。



たぶん、私のかんぐりすぎだろうと思いますが、もう少々詳細を聞きたいところではあります。
へたれ
世の中うまくできているものです。
こうして条件が悪ければ、働いている方だって適当なところで辞めておこうと思うわけです。

しかし辞めたとて、また同じような雇用形態で働かざるを得ない場合が多い。

こうして職を転々としながら人がいつも流れている。



企業はそれを自分の方へ都合の良いだけ流せばいいのですから。
C2
つまり、ちゃんと安定した職場で仕事を教えられないことが、製造現場などでは事故を引き起こしているということですね。

確かに、命にかかわる問題だと思います。実際に、派遣先の無理な要求で仕事をしている派遣労働者が、事故で亡くなったり、過労で亡くなったりすることは多いようです。

事件として報道されているものも増えていますよね。
へたれ
ガテン系としては、
ただでさえ社員は忙しいのに、すぐいなくなってしまう派遣に手間をかけて教えることなんてしないわけですよね。



できるやつが回ってくるまで待った方が都合がよいのでしょう。



ガテン系では特にこうした教育の不行き届きが多くの災害を生んでいることを付け加えておきたいです。



労働力の流動性には、こうして労働者の命が直接的にかけられているのです。
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

※ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「わたしのしごと体験談」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事