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李維維 小優

【ZOOM】ラジオも「デジタル」変革 ラジコ順調、次世代は“足踏み”

2010-11-30 13:19:55 | 日記
 地上波テレビのデジタル化が注目される中、ラジオの世界でも「デジタル」をキーワードにした変革が進んでいる。一つは従来のアナログ放送をインターネットで流す「radiko.jp」(ラジコ)で、12月から本配信に“昇格”。もう一つは「次世代」に位置づけられるデジタルラジオだが、こちらは平成15年に試験放送が始まったものの、実用化に向けた具体像は依然として見えない状態だ。(草下健夫)

 ■「業界復活へ」

 「13社と電通が大同団結し、ラジオ業界の復活に歯を食いしばって臨む」。12月1日に発足する新会社「radiko」の社長に就く岩下宏・電通ラジオ局次長は、25日に開いた会見で、こう力を込めた。

 高層ビルなどの影響でラジオが聴きにくい「難聴取」に対応するため、3月に東京と大阪で試験配信が始まったラジコ。音質の良さと、パソコンのほかiPhone(アイフォーン)など高機能端末でも聴ける手軽さから知名度を上げ、聴取は週200万~300万回と順調に増加した。

 放送局の担当者は「ラジコは従来のラジオの補完。ラジオを聴いたことすらなく、携帯音楽端末iPod(アイポッド)などのクリアな音しか知らない若い世代に受け入れられやすいのでは」とみる。

 ただ、CMスポンサー事情などから聴取地域は当面、関東と関西の一部地域に限定。来年春には北海道、名古屋、福岡への拡大を目指すなど、エリア展開を図る予定だ。

 ■「周回遅れ」危惧

 一方、デジタルラジオは電波をデジタル化し、高音質化や動画などのマルチメディア展開を可能にする。テレビのアナログ停波で空く周波数帯を使う「携帯端末向けマルチメディア放送」の一部として、VHF1~3Chで予定されている。

 総務省は昨年8月に実用化の基本方針を示したが、参入希望は全国7地方で25社にとどまり、NHKも態度を明確にしていない。この影響か、今年7月に総務省の研究会が新たにまとめた報告書は、既存の放送局がより参入しやすい提言を打ち出し、今後、改めて参入希望調査が行われる見通し。しかし、サービス詳細や開始時期は依然未定だ。

 ニッポン放送の村山創太郎社長は「新しい伝送路ができるのはよいことで、ラジコ、デジタルラジオとも、音声ビジネスにとって飛躍の可能性を秘めている」と期待をかける。一方で、「仕切り直しになる分、多メディア化の中で周回遅れになる」と危機感を抱く関係者もいる。

 藤竹暁・学習院大学名誉教授(メディア社会論)は「難聴取対策のデジタル化は必要」とした上で、「現状では制度面の検討に偏っており、ラジオというメディアが今後どうあるべきかという視点が弱い」と指摘。「動画を流すといったハード論ばかりが先行すると、結局どのメディアも“金太郎あめ”になってしまう」と話している。

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 ■実用化試験、前倒し終了 受信機開発停滞、リスナー増えず

 デジタルラジオは平成15年から、東京と大阪で空いているVHFの7チャンネルを使い、実用化試験放送を行ってきた。当初は来年7月に本放送に移行する予定だったが、めどが立たないまま、大阪では今年6月で放送を既に終了。東京も来年3月末に終了する。

 試験放送は、放送局などで構成するデジタルラジオ推進協会(DRP)が開始。実施局は、従来のラジオとは番組編成を変え、音声に簡易動画をつけるなど工夫してきた。

 ただ、本放送で使う周波数帯が20年まで決まらず、受信機開発は停滞。発売されたものはauの一部の携帯電話などに限られた。実施局もネットで同じ番組を流すなどしたため、試験放送のリスナーは伸び悩んだとみられる。

 将来本放送が実現しても、周波数帯が試験放送と異なるため既存の受信機は使えない。購入したユーザーは振り回された格好だ。