あるコリア系日本人の徒然草

反日・嫌韓が言われて久しいですが、朝鮮民族として、また日本人として、ありのままの感情を吐露していこうと思います。

The Political Compassの考察 (テストのバイアス)

2005年02月24日 | アンケート等
皆さんのコメントを見ていると、思ったよりも左寄りに点数(経済的社会的ともにマイナス点)がでていて、驚かれた方が多いように見受けられました。一方僕自身に関しては、Economic Left/Right: -2.50, Social Libertarian/Authoritarian: -2.46と予想と点数がほぼ一致していました(「自分の政治的傾向の数値化の結果」参照)。妻に関しても、ほぼ一致しています。それでは、このテストの特徴を考慮しながら、結果についての考察を述べたいと思います。(The Political Compassにおいて掲載されていたグラフを、上にまとめて引用しておきました。字が小さくて見づらいようでしたら、オリジナルの方をご覧ください。)

まず、このテストにおいての右派・左派というのは、あくまで市場経済について左右を述べているのであって、イデオロギーの左右ではありません。すなわち、横軸において右に行けば行くほど「自由主義経済万歳」に近づき、左に行けば行くほど「マルクス社会主義経済万歳」に近づきます。真ん中あたりは、社会民主主義でしょう。

自由主義経済万歳の典型例が、サッチャー元英首相やブッシュ米大統領です。分かりやすく言うと、福祉や医療など社会保障すら市場原理に任せ、政府の役割を出来る限り少なくしよう(小さな政府)というやつです。保護貿易も純粋な市場原理から外れるため、嫌がります。利点としては、すべての分野において競争原理が最大限に働くため、国家の高い経済成長が望めます。欠点は、福祉切り捨てなど、強者と弱者の差が広がり、貧富の差が増大します。ポイントで言えば、5点以上は明らかにこのカテゴリーに属すると思います。社会主義経済万歳については、あまり説明の必要はないと思います。

さて社会民主主義ですが、これには様々な程度があると思います。ヨーロッパの左派政権が目指すのも、この社会民主主義だと思われます。伝統的に彼らは福祉重視で「大きな政府」を作りますが、近年経済の競争力低下などから、かつてに比べずいぶん自由主義経済側にシフトしています。その結果ヨーロッパの左派政権は、大体真ん中から少し右に寄ったところに位置すると思います。また金融の自由化・郵便の自由化がなされていることも、大きいかもしれません。この典型例が、ドイツのシューレーダー首相、イギリスのブレア首相などです。ブレア首相はシューレーダー首相よりも右にシフトしていますが、これは英労働党がもはや英保守党とあまり変わらなくなってきているためでしょう。同様のことは米民主党にも当てはまります。ポイントで言えば、0~3点がこのカテゴリーでしょう。3~5点は、自由主義経済万歳とヨーロッパ型社会民主主義の境界だと思われます。

一方日本の場合ですが、近年小泉政権になってからは、かなり自由主義経済が根付くようになってきています。しかしそれでも伝統的な保護政策や、少なからぬ業界に見られる護送船団方式など、自由主義経済と相容れない一面を持っているように思われます。また、比較的社会保障が手厚いことや累進課税制度など、社会民主主義の要素を持ち合わせおり、結果としてヨーロッパの左派よりもさらに左に位置するように思われます。ポイントで言えば、-3~0点がこのカテゴリーでしょう。これよりも左は、もっと労働組合よりの政権かもしれません(韓国のノ・ムヒョン大統領など)。現小泉政権は、理想としては3点ぐらいになりたいのかもしれませんが、現実は(自民党の反対・国民の反対などにより)0点付近ではないでしょうか。こう考えると、僕も含め皆さんのEconomic Left/Rightがほぼこのカテゴリー内に収まっているのは、自然なことだと思います。

次に、縦軸の権威主義・リベラル度を見ていきたいと思います。この軸が、いわゆるイデオロギーの左右に近いのかもしれません。つまり権威主義度が高くなってポイントが上がれば上がるほど、まあ「右翼」ということになるんでしょう。ところが、確かに自分で右よりだと思われている方でも、このポイントがそれほど高く出ておらず、むしろリベラルに分類されているようです。これにはいろいろな理由が考えられますので、それを順に説明していきたいと思います。

(1) テストのすべての設問が、アメリカ人を基準にして作られていること。

特に5ページ目(宗教観)と6ページ目(セックス観)の答えにおいて、日本の権威主義の方でもリベラルに振れた可能性があります。日本における権威主義・リベラルの尺度に、こういった観点はあまりありません。仮にここで典型的なアメリカ人と日本人の答えを、僕のそれぞれの友達の経験から勝手に想像して書いてみます。

<典型的アメリカ人>
52)Disagree, 53)Agree, 54)Agree, 55)Disagree, 56)Agree, 57)Disagree, 58)Disagree, 59)Disagree, 60)Disagree, 61)Disagree, 62)Agree
<典型的日本人>
52)Disagree, 53)Disagree, 54)Disagree, 55)Disagree, 56)Disagree, 57)Disagree, 58)Agree, 59)Agree, 60)Agree, 61)Disagree, 62)Disagree
<僕:pontaka>
52)Strongly Disagree, 53)Disagree, 54)Disagree, 55)Disagree, 56)Disagree, 57)Disagree, 58)Disagree, 59)Agree, 60)Disagree, 61)Disagree, 62)Agree

51)までの答えが僕の答えと同じならば、<典型的アメリカ人>の場合、Economic Left/Right: -1.50, Social Libertarian/Authoritarian: -1.69 となります。一方<典型的日本人>の場合、Economic Left/Right: -2.50, Social Libertarian/Authoritarian: -3.18 となります。つまり、この宗教観とセックス観だけで、典型的アメリカ人は典型的日本人より、経済ポイントが1.0高く、社会ポイントが1.5高いわけです。ちなみに僕の場合、宗教観に関しては、宗教そのものをまやかしと考えているので、ここではポイントを落とし、セックス観に関しては、結婚後の不倫を一切認めず条例か何かで禁止すべきだ(離婚は問題ないし、結婚前のセックスも何ら問題ない)と考えているため、そこでは少しポイントを稼いだようです。

(2) 移民がらみの設問がない。

ヨーロッパなどの極右(ファシズム)政党の大きな特徴として、移民排斥が挙げられます。ところが、このテストにおいて移民がらみの設問は、37)の「第一世代の移民は新しい国に完全には溶け込めない」一つしかなく、それもかなり中途半端な設問になっています。これは、アメリカが建国以来(ネイティブアメリカン以外はすべて)移民の国であり、また国籍付与も生地主義を取っているため、移民排斥に関する設問を思いつかなかったのかも知れません。僕は次のような設問が必要だったと思います。

「移民の子孫に対しては、文化摩擦や治安維持の観点から、その永住国の国籍を無条件に与えるべきではない。」
「難民受け入れは治安が悪くなるため、できる限り拒否した方がよい。」

この2つの設問に「強く同意」すれば、かなりポイントが上がったかもしれません。逆にアメリカ人ではこの質問により、リベラル度がぐっと上がる(言い換えるとポイントがかなり下がる)でしょう。

(3) 「強く(Strongly)」を含む回答を、とっさに避けた。

一般的に日本人は、僕の海外生活の経験上、ほぼすべての外国人に比べ物事をはっきり主張しないです。唯一の例外が台湾人だったような気がしますが、韓国人・中国人・アメリカ人・ドイツ人・イギリス人すべて、日本人と比較すると強く主張します。こういった性質から、テストの回答において「強く(Strongly)」を避けた可能性があります。実際「強く(Strongly)」を選択すると、ポイントがぐっと変わります。

また、ネット上などで右翼・左翼と認定される方は、ただ単に「売り言葉に買い言葉」みたいな感情的な(よく言えば純粋な、悪く言えば幼稚な)発言が多いだけだと思われます。まさにこの「強く(Strongly)」同意もしくは反対しているのでしょう。ところが冷静にテストを受けるとそうでもなく、ポイントに影響したのかもしれません。

以上のような理由から、(社会的に)右だと思っていた方の(権威主義の)ポイントがあまり伸びなかったのでしょう。つまり、数人の方がおっしゃっているような「日本で右でも外国では左」というのは、当たらないと思います。もちろん全般的に、アメリカは日本よりも経済的に(顕著に)右であり、社会的に(やや)権威主義であることは、間違いないとは思いますが。あと、世界の著名な政治家に権威主義の高い人が多い理由は、権力欲が強くなければ政治家にならないこと、一神教の宗教を信じていること、などが挙げられると思います。

こういったことを踏まえて、逆に最も嫌な(嫌悪感を感じる)答えを並べてみるのは、大変興味深いと思います。なぜなら、現在の日本においては、右翼・左翼というより、反左翼・反右翼の人が多いと思うからです。僕の場合はEconomic Left/Right: 1.38, Social Libertarian/Authoritarian: 6.26(ヒトラー型)となり、強すぎる権威主義に嫌悪感を抱くようです(「自分の政治的傾向の数値化の結果」参照)。確かにその通りです。一方経済的左右に関しては、自分のスタンスは若干左ではあるが、強すぎる左右ともに同等に嫌悪感を抱くせいか、ほぼ相殺されているようです。筋金入りの反左翼の方の場合は、僕とは逆にむしろ強すぎるリベラル主義に嫌悪感を抱くのかもしれません。是非お試しあれ。

さらに発展させて、保守系メディアの産経新聞と革新系メディアの朝日新聞に対しても、僕の勝手な推測に基づいてテストを行った結果、比較的納得できる数値が得られました(「朝日新聞と産経新聞の比較」参照)。
朝日:Economic Left/Right: -3.38, Social Libertarian/Authoritarian: -5.03
産経:Economic Left/Right: 3.00, Social Libertarian/Authoritarian: 2.05
答えるに当たっては立場をはっきりさせるため、「強く(Strongly)」を含む回答が若干増えたかもしれません。上で挙げた3つの問題点のうち(1)(2)を考慮に入れると、Social Libertarian/Authoritarianのポイントは、もう少し上がると思います。ただマスコミの基本スタンスは権力の監視であるはずなので、保守系の産経新聞でもこんなものかなと思います。

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5 コメント

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負けました (草加耕助(旗旗))
2005-02-28 14:04:37
見事に考察された記事のトラックバックをありがとうございます。うーん、完全に負けました(笑

これを先に読んでいたら、今回のエントリーはアップできなかったかもです。後から読んで良かったのかな?
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恐縮です (pontaka)
2005-02-28 21:58:02
>草加耕助さん

お褒めに預かって恐縮です。僕も最近草加さんのblogにであってたまに見ています。インターネットではあまり革新派の方は元気がないようなので、草加さんのblog応援しております。僕は、感情的でない健全な保守派・革新派の議論を、楽しみにしているものです。
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すいません(大汗) (草加耕助(旗旗))
2005-02-28 21:59:28
こちらのミスでせっかくいただいたトラバを消してしまいました。お手数ですが、もう一度送信いただけますでしょうか?
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自由主義経済 (ESD)
2005-03-02 16:03:45
はじめまして。



こういう注釈はいずれつけようと思っていましたが、素晴らしい考察です。

このテストの右・左の軸については「自由主義市場をどれだけ肯定するか」という測り方がされているように感じました。しかし、新古典派経済学という(少なくとも見た目は)スマートな理論を全く知らない人にとっては、それが最適だという主張はにわかに信じがたい物だと思います。そして大学の一般教養レベルで経済学を学んでいない人は少なくないでしょう。今回のテストで殆どのきなみLeftに偏った背景には、そのような背景もあるのではないかと感じています。



あのテストを日本人向けに、出題部分に工夫してみると面白いかも知れないと思っています。まあ、重み付けの度合いが歪んでしまうので正確な調査とはならないでしょうが。
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ESDさんへ (pontaka)
2005-03-02 21:56:52
>ESDさん

ようこそ。僕も経済学は、大学の一般教養でしか習ったことが無いです。確かにこれら設問を日本人向けにしてみるのもいいですが、かなり偏ったものになりそうですね。ちょっと難しいような気がします。あと、ESDさんのブログ覗きました。主に環境問題についてですね。環境問題に肩入れすると、今回のテストでは左にぶれちゃうんですけどね。まあ、ブッシュ大統領の意識は、点数にとても反映されてますね。

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