この本も、中古書店の100円コーナーで買って少し前に読んだ。私はオタクという概念が登場して以来、はたして自分がオタクであるのか、ないのか判然としないまま日々を過ごしてきた。岡田斗司夫氏はこの本で、ご丁寧にオタクを第一世代から第三世代に分けて、その特性(長くなるので詳細は書かない)を解説したうえで、オタク文化とは「大人になっても子供時代の趣味をやめない」ということだと書いている。これに当てはめると私はオタクではない。岡田氏がいうのだからまず間違いないだろう。よって、私はまだ死んではいなかったのだ。
で、岡田氏は「わたし」中心主義の第三世代オタクの登場により、かつて存在したオタク共同体の構成者たちによる共通認識が、「わたし」という壁により分断されてしまったとことを悲劇として熱く語る。これこそが「オタクの死」であり、それは今の日本社会の風潮にも通底する重大な問題であることをほのめかす。あくまでもほのめかすだけで、具体的には、何がどこで、どうつながっているのかは一向に明かされないのだが。
本書によって、オタクではないことがはっきりした私にとって、「オタクの死」などに何の感慨もわかなかったし、ましてそこに日本社会を前提にした危機意識などあるはずもない。むしろ、オタクの一大事を日本社会の大事に結びつけて語る(語りたがる)岡田氏の入れ込みようが「オタク」中心主義をも超えて、私には「わたし」中心主義にみえた。