浅き夢見し

ひとつ外したボタンの
薄いブラウスを
透かして聴こえてくる
たおやかな鼓動
グラスの氷が
カタンと揺れ
君待つ夏の午後
読みかけの本のページは
すすまない

(C)Kanon

哀ゆらり

気配を消したはずの
胸のうち
剥き出され
ゆらり
現(うつつ)に寄りかかる
辿り着けない夢の扉
ノックまではまだ遠く

(C)Kanon

かたちのない約束

アドレスの無い恋はいつか何かがざわついてくる
愛をしまう場所なんてどこにもありはしないのに

確かな約束を人は求めたがるけど
変わりゆくものを手繰り寄せても詮無いこと

そこにあなたがいるから愛さずにはいられない
ただ それだけなの

(c)Kanon

お月さまと音符とわたし

散らばった音符が
置き去りの心に
音を並べる
やるせなくて
こらえていたら
尖った月が
ジッと見ていた

(c)Kanon

伝えたいこと

説明してると少し違う
嘘ではないけど微妙に
そんなふうに感じてしまうことない？
無意識に修飾語に隠してしまう
伝えたいことは簡単なのに
だから気取った言葉はもういらない
ただ一言のありがとう　

(c) 2013 Kanon

メビウスの輪

360° 無重力
洋々とした宇宙
無限の解放感
悠久の時間軸
喜び 悲しみ
ちっぽけな存在
その理由(わけ)
その愛おしさ

眠れない夜と
メビウスの輪と
私と

(c)Kanon

take note

幸福をカタチ造りながら
自ら壊してしまいたくなる
そんな不安や得体のしれない焦燥感
素直に優しくあることの難しさ
愛に保険などないことはわかっているのに

(c)Kanon

幻のアダージョ

　　　　　　キャンドルの朧な灯りに揺れる
　　　　　　繋ぐことのない思い出たち
　　　　　　音なき色なき熱なき
　　　　　　ただ甘酸っぱいもの
　　　　　　優しい時間の中へ去っていった
　　　　　　眼差し一つ置いた追憶の夜

(c)Kanon

母という女性

「クッキーはハート味」


母がキッチンでクッキーを作っている

粉を量り　バターをほぐし　

卵を入れる　こねる

楽しそう

わたしは 本を読みながら

上目使いに時々眺めている

やさしい母の動作

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(c) 2014 Kanon

　　

夢のあとさき

想い出は…　そう

甘美な恋の名残りのように

神聖な愛の境界線のように

いいえ いつかの古傷のように

そっと確かめてみたくなる

あなたとのあとさき

終わりを見ながら夢を見た

あの雨もあの夜も嘘じゃない

(c) 2014 Kanon