詩の自画像

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風呂敷

2016-12-26 06:17:51 | 

風呂敷

 

 

昔は

一枚の風呂敷に家の中にある全財産が入った

 

今は風呂敷の大きさは同じでも家の中にある

財産が違う

 

テレビや冷蔵庫や電子レンジや車などは

贅沢品ではなく日用品なのだ

どんなに小さくしても風呂敷には入らない

 

戦時中は

一枚の風呂敷に入れられるだけ入れて

背中によいしょと背負って空襲から逃れた

 

この風呂敷は爆弾の火よけにもなったと言う

そんな戦時中の事をお袋に聞いたことがある

 

今は戦時中ではないがきな臭い

大きな風呂敷をもう一枚追加しようとしたが

売っている店がなくて探すのに苦労した

 

この平和な時代に何を言っているのだろう

そんな陰の笑い声が聴こえてきそうだ

 

それでも用心は欠かせないからと頭巾も縫った

食料品も買い溜めしておかなければならない

 

今の戦争は経験したことは無いが

空からミサイルが飛んできて目標に狂いなく落ちる

姿の見えない戦争だと言われている

 

それぞれの国のそれぞれの重要な施設に

ミサイルが飛んでいくようにプログラムされている

 

風呂敷一つを背中に背負って逃げる時間などない

どの方向から飛んでくるのか

考えても分からないのだから

 

もう昔の時代のような風呂敷は必要ないだろう

我が家の財産を全部包み込んで背負っても

ミサイルは違う方向に飛んでいく

 

日本には原子力発電所が数多くある

その一つにでもミサイルが落ちたとしたら

風呂敷を背負って逃げるどころではない

 

もうあの時の風呂敷は捨てようかと思っている

今もこの先も平和であれば

風呂敷は思い出を捨てられる


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