詩の自画像

昨日を書き、今日を書く。明日も書くことだろう。

おじいさん(推敲中)

2017-11-21 18:19:02 | 

おじいさん

 

 

冬の中にいるのに

冬のように寒いねと言っている

夏の時もそうだった

夏のように暑いねと言っていた

 

笑いながらだから

言っていることは分かっている

昔からジョーク好きなおじいさんだと

隣近所では評判だった

 

原発災害で古里を離れて

仮設住宅に仮住まいをしながら

ときどき町に許可申請をして

帰還困難区域にある家を見に行っていた

 

おじいさんになると

不思議人と呼ばれるようになるが

しっかりとした

考える芯を持っているから

もう帰れないと決断した

 

それでも 心配だから

と 家を見に行く

 

何も持ちだせないまま

今までの生活が乱雑のまま

放置されている

おじいさんにはこれが堪える

 

おじいさんの家の前には

バリケードがあって警備員が立っている

僅か数十メートルの距離なのに

許可書がないと入れない

 

家の柱に手を置くと

声がこもって言葉にならない

この無情な線引きは

これからも動くことは無いのだ

 

この家の前に立つと

おじいさんは何回も頷く

何に頷いているのかは分からない

ただ黙って頷き続けている

 

冬の中にいるのに

冬のように寒いねと言っている

夏の時もそうだった

夏のように暑いねと言っていた

 

その おじいさんから

これが我が家だ

大の字になって眠れる

大の字は大きいと書くのだぞと

そんな ジョークを

早く聴きたいものだ


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