いわき七浜を
北上していく
すぐ先に一Fがある
六号線の両わきには
帰還困難区域の看板が立っている
道路わきの家々には
泥棒除けに
木造の簡易な柵がある
一Fは
森の奥に隠れているから
六号線からは見えない
立ち入り禁止区域だった
六号線の十四キロメートルは
自家用車だけが通行できる
その六号線には人が立っている
監視役なのだろう
マスクをしているが
高線量区間の十四キロメートル
大丈夫なのか
と 窓を開けて
声をかけそうになった
線量計が狂ったように
騒ぎ立てる区間だ
そこを抜けると
浪江町へと入っていく
津波で荒々しく裸にされた請戸地区
そこから一Fが見える
私たちは
誰もいない
JR浪江駅前で詩の朗読をした
家々は崩れたままだ
雨がときおり斜めに横切っていく
除染をしているから
マスクはしなくても大丈夫だよ
と 浪江の詩人は言った
朗読の後 町役場に寄った
そこを拠点として
帰還できる場所は小さい
町並みは
地震の跡をそのまま残している
崩れかけたまま
風や雨水を飲んで家が朽ちていく
信号機の点滅は
希望の点滅にはほど遠い
すれ違う車は一台もない
これが現実なのだ
どんな言葉を置いても
*一Fとは東京電力福島原子力発電所のこと