ふと思い至って、文章の練習を始めました。
診断メーカーで出たお題をもとに140字以内で文章を書き、ツイッターに投稿するという企画です。
誰に強制されたわけでもない、自分との闘いが始まる!
【ただの暇つぶし】
月曜日の教室。パセリとドリガルが話をしていた。
「昨日、本読んでたら一日が終わってたよ。パセリはどう?」
「あたしは考え事をば。アイデアに形を吹き込み、修正し、また . . . 本文を読む
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家までの道程を可能な限り全力で走り続け、アパートにたどり着く頃には息も絶え絶えだった。
アパートの前には見覚えのある車が停まっている。「ヨシくん」が来ているのか。不本意ながら大人の男がいることに少しだけ安心するいくらなんでも女子中学生の縁羽に遅れをとることはないだろう。
階段を登り、二階へ。近隣の住人は昼間はい . . . 本文を読む
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我に返り衆目に晒されていると気付いた折花は足早に教室を後にした。
昇降口で靴を履きかえる。多くの生徒の上履きが納められていて、下校したことを示している。その中には縁羽のものもあった。
思い出すのは先ほどの縁羽の様子。
「突然どうしたのかしら、あの子。構ってあげられなかったから拗ねた…&hellip . . . 本文を読む
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前→4-2
5 折花と縁羽
「あんた! なんか! 生まれてこなければよかったのよ!」
殴打。暴力。虐待。
九十九笠美にとって娘とは、ただのサンドバッグだった。
理由は何でもよかった。折花がいつもの時間に起きなかった。折花がいつもの時間に帰ってこなかった。折花が作った料理がまずかった。うまかった。テストで . . . 本文を読む
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夜船が席をずれたので、縁羽は我殿院の対面、夜船の隣に腰を下ろした。この時間、中学生は下校にはまだ早い。縁羽はブレザーを着ていた。
「何か注文するか? ここは俺が奢ってやろう」
「いらない」
「ならばスパゲティはどうだ? ああ、スパゲティはいい。ミートソースの絡んだ長い麺は人生の縮図そのものじゃないか。長いものには . . . 本文を読む
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4 縁羽と我殿院
「一週間経ちましたけど何か変化はありましたか?」
「いや、何も」
我殿院は目の前に並べられた料理を口に運ぶのに集中してにべのない返事を返し、白河夜船はため息をついた。
平日の昼下がり、ファミレス。昼時を過ぎた店内は客が二、三人ほど。窓際の席に我殿院と夜船は向かい合って座ってい . . . 本文を読む
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「ごめんなさい、縁羽。今日私は用事があるのから先に帰るわね」
告げると縁羽はぶうぶう文句を垂れていたが、今度埋め合わせをすると約束することで引き下がった。
折花は学校が終わるとすぐに飛び出し、ある場所を目指した。
『もしも俺の話に興味が出たらこの場所へ来い』
いつの間にかメモがポケットに入っていた。記載されて . . . 本文を読む
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前→2-3
3 我殿院
朝は貴重な安らぎの時間だ。
いそいそとブレザーに着替えて登校の準備を済まし、折花はひとりアパートの外にいた。
「にゃー」
折花が声をかけると、猫が生け垣の間を縫って出てきた。白い毛に黒ぶち模様のオス猫だ。もう子猫という大きさではなく、かといって老描でもない。首輪はないがどこかの家で飼われてい . . . 本文を読む
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校門が閉まる前に学校を出て、二人は何事もなかったかのように談笑して帰路に着いた。
「また明日ね、折花ちゃん!」
「ええ。明日は宿題を忘れないようにね」
ぶんぶんと手を振り、あっという間に走っていった。その声が届いたのかどうかわからない。おそらく明日も宿題をやってこないだろう。
「全く、しょうが . . . 本文を読む
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放課後。折花は下校せずに図書館に留まっていた。今日の授業で課された宿題を片付けるためだ。図書室では静かに、という条文も外から聞こえる喧騒までは取り締まれない。野球部のノック音。剣道部の掛け声。吹奏楽部の演奏。他にも様々な理由から校内に残っている生徒が何らかの雑音を発している。
適度な賑わいは折花にとって心地よいもので . . . 本文を読む
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2 折花
「九十九さん? いつもなんか暗いよね」
「あんまり友達いないんじゃない? ずっとひとりだよ」
「小学校が一緒だったけど、あの子と仲いいのって雲煙さんくらいじゃない?」
「ちょっと前に腕を骨折したんだって? クラス違うから聞いただけだけど、左腕に包帯巻いてたんだよね。今はもう治ったのか包帯してないっぽいけど」
「体育の時に着替えるから . . . 本文を読む
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1 到着
昼下がりのスーパーマーケットに場違いな黒い男が入店した。黒い帽子に黒いサングラス、黒いコート、足元は黒の革靴。全身を黒でコーディネートした、歩く影のような男はカゴを持つ。その姿を目撃した客は奇異の目を向けるが、男は全く気にした様子もなく鮮魚コーナーを目指した。刺身のパックを手にとっては戻し、手にとっては戻してしばらく見比べていると、単調な電子音が鳴 . . . 本文を読む
0 幻の痛み
痛い。腕が痛い。
ごめんなさい。
もう刺さないで。血が出てます。
もう斬りつけないで。骨まで痛いです。
痛い。
苦しい。
痛い。
苦しい。
いつまでも。いつまでも。
治らないのです。
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夢から覚醒した俺はまず安堵した。先ほどの悪夢は夢と片づけるにはあまりにもリアルな「体験」で、滝のような汗が恐怖の度合いを物語っていた。動悸が収まらず、朝の日差しが必要以上にちかちかとまぶしく感じる。ここは現実の世界、禍々しき神が眠る狂気じみた空間ではなく俺が生活する日常の舞台だと認識しても恐怖が薄まることはない。 時計を確認すると大学に向かう時間にはまだ早く、寝直そう . . . 本文を読む
これは夢だとわかっていても戦慄せざるを得ない。 いびつに隆起した黒色の大地。どの時代の様式にも当てはまらない、曲線と狂った直線で緑がかった建築物の数々。空を仰げば遠く高くにある、水面のように揺らめいた太陽。ここは地上よりもなお深い場所だ。が人の姿はない。平衡感覚は当てにならず、遠近感は違和感を伴う。あらゆる感覚が機能を失っている中、ただひとつだけ正常に、あるいは必要以上に働くものがある。 恐怖心 . . . 本文を読む