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各種のお知らせと季節のたより

桜蔭会 京都支部
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廬山寺のキキョウ

2024-07-13 00:29:40 | 季節の便り

京都御苑の東側、寺町通に面した廬山寺(ろざんじ)です。
この場所に、紫式部の父藤原為時の家がありました。
紫式部はその家で育ち、やがて夫や娘との日々を送り、源氏物語を執筆したと伝えられています。

門を入ると、百人一首に採用された紫式部と娘の大弐三位(だいにのさんみ)の歌を刻んだ碑がありました。
日比野光鳳氏の気品のある揮毫です。

めぐりあひて見しやそれともわかぬ間に雲がくれにし夜半の月影(紫式部)
有馬山ゐなの笹原風吹けばいでそよ人を忘れやはする(大弐三位)


(入口に飾られた紫式部像)

 

本堂は、江戸時代に光格天皇が仙洞御所(せんとうごしょ。天皇が譲位した後に住んだ御殿)を移築したものです。

本堂の南側に、白砂を敷き詰めた中に苔で州浜を作った「源氏の庭」があります。
6月から9月までキキョウが咲き続けるそうですが、今まさに見頃です。

雨水をたっぷり受けて育つ苔の緑の島に、キキョウの花が咲き乱れています。
雨の日、曇りの日の方が生き生きと見える花です。
今日訪れていたのは、ほぼ女性ばかり。皆さん静かにゆったりと眺めておられました。

廬山寺は、ユーモラスな赤鬼、青鬼らが登場する節分会(鬼おどり)でも知られています。
その日は人々が賑やかに集まり、今日とは全然違った雰囲気のお寺になります。

〔投稿:SI〕


雨上がりの三千院

2024-06-19 00:03:50 | 季節の便り


(青紅葉の木漏れ日を受けた苔。背景は宸殿)

けっこうな雨が降り止んだ午後、鯖街道を通る用事のついでに、大原の三千院に立ち寄ることを思いつきました。

今日のお目当ての第一は、水分をたっぷり含んだ苔です。
緑のグラデーションを堪能し、清澄な空気を吸って、とてもリフレッシュできました。


(往生極楽院と一面の苔)


(何種類もの苔がパッチワークになっている)

 

ちょうど、「あじさいまつり」の最中でした(~7/7)。

あじさい苑には、ブルー系の品種ばかりが集められているようです。
素朴なヤマアジサイとともにこのお寺の雰囲気にしっくりと合っていて、とてもよかったです。
見頃はまだこれから、という感じでした。

 


(爽やかな青紅葉と、門跡寺院らしい軒丸瓦)

 

〔投稿:SI〕


妙心寺東林院の沙羅双樹の花

2024-06-12 16:40:51 | 季節の便り

 

妙心寺の塔頭で通常非公開の「東林院」では、沙羅双樹(さらそうじゅ、ナツツバキ)が咲く時期に、「沙羅の花を愛でる会」が開かれます(今年は6月10日から23日まで)。

平家物語の冒頭の「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。」でその名を知った、心惹かれる花。

立ち寄ったのは、30度を超えた晴天のお昼時。
メインツリーの正直な第一印象は、「あれ、どこに咲いているの?」という感じの存在感の薄い花です。
白い花がたくさん咲いて、緑の苔の上にもふっくりとこぼれ散っている情景を想像していたのですが…。

 

そこへ、お坊さんの解説が始まりました。
ナツツバキは、梅雨の気候が大好きで、どんより曇ったり、雨が降ったり、ムシムシしたりすると、生き生きした花を咲かせ、地面に落ちた花も長持ちするのだそうです。
本来は、谷あいの水分の豊富な半日蔭に自生する木。
花は開いて1日で落ちてしまいます。
戦国武将の山名豊国がここに東林院を創った際にナツツバキを植えたのが始まりで、以後代替わりしたり株を増やしたりして、今では十数本になりました。
したがってここにあるのは大きな派手な花を咲かせる園芸品種ではなく、日本の原種です。

仏教の経典では、釈迦が亡くなる時に「沙羅」の木に囲まれていたという説話がありますが、どの木を「沙羅」と呼ぶのかは、国によってまちまちなのだとか。
「沙羅」にふさわしい花木として一日花の素朴なナツツバキを選んだところに、日本人独特の感性が表れているのだそうです。
ナツツバキが漂わせる無常観、つまり生と死は隣り合わせであることを心に留めて、一日一日を大事に生きよう、ということでお話は締めくくられました。

 

(お堂を囲む沙羅の木々)

 

太陽に雲がかかって強い日差しがさえぎられると、ナツツバキの花は存在感を放ってきました。
普通の花と逆。
人の生き方にも通じるような気がして、ふいに感動を覚えました。
甘い蜜があるそうで、メジロやクロアゲハ、クマバチなどが飛んできています。

 

拝観するには、精進料理か、お抹茶とお菓子かを頂くことになっています。

 

境内には、やはり原種っぽいクチナシ(オオスカシバがホバリング中)や、かわいらしい銀盃草(シバキキョウ)が花を咲かせていました。

 

お坊さんによりますと、沙羅双樹の花の見ごろはまだこれからだそうです。
行かれる方は、梅雨らしいお天気の時をお勧めします。
外国人観光客をたぶん一人も見なかったことも、最近の京都の寺院では珍しいことでした。
やはり、この花を愛でたいのは日本人の感性なのか・・・

 

〔投稿:SI〕


泉州水ナスと賀茂ナス

2024-06-06 12:44:38 | 季節の便り

初夏の野菜が出始めました。
泉州(和泉〔いずみ〕)は大阪府の南の方。関西空港がある所です。
ここの名産の水ナスのぬか漬けを、6月になると親戚が送ってくれます。

説明書通りに手で割いていきますと、その名の通り水分が飛び散るほど、みずみずしいナスです。
薄い皮の下の実が浅く漬かったところが、デリケートなおいしさ。

 

京都の賀茂ナスも、出荷が始まり、店先に並び始めました。

水ナスより一回り大きく、実がしっかりとしています。
京料理には欠かせません。
田楽などにするのが楽しみです。

 

〔投稿:SI〕

 


蓮華寺に行こうか

2024-05-30 01:54:56 | 季節の便り

2024年のJR東海の「そうだ京都、行こう。」で、蓮華寺が取り上げられたのには驚きました。
叡山電車の「三宅八幡」駅と終点「八瀬比叡山口」駅の間にある、見逃してしまいそうな小さなお寺(天台宗)です。
隠し部屋が見つけられてしまった…という感があります(笑)
京都に大雨が降った翌日、好天に誘われて、蓮華寺の苔が見てみたくなりました。

 

古ぼけた(失礼!)山門を入ると、江戸時代の小さな公家屋敷みたいな建物(書院)の入口に導かれます。
右手に壁がはがれかけた土蔵があり、江戸時代はここが寺子屋の教場だったとか。

入ったところは庫裏(くり)で、左側の奥には昔のかまど。

 

右手の玄関を上がって奥に進むと、東と南の面が庭に向かって開け放たれています。

座敷に座って、柱で額縁のように区切られた景色をぼんやり眺める。
派手なものは何もないのだけれど、本当にゆったりした時間。

 

書院の東側には、高野川の支流から引かれた水が豊かに満たす小さめの池。
石川丈山の作庭といわれています。
池の右に見える建物は、黄檗(おうばく)宗様式(中国風)の小さな仏殿です。

 

書院の南側は、木漏れ日の苔の庭。
雨の後なので、モミジの新緑と青苔が生き生きとしています。

 

境内の一角では、大正末から昭和初期に河原町通りに市電を敷設した工事で発掘された石仏を集めて供養しています。

 

この寺は、応仁の乱で焼失した寺院を、江戸時代の初めにある加賀藩士が、祖父が所有していた土地を提供して再建したのが始まりだそうです。
比叡山延暦寺の僧侶が開山に招かれ、詩仙堂に隠棲していた元武士の石川丈山や、黄檗宗を中国から伝えるために来日し宇治の萬福寺を建てた隠元隆琦(いんげんりゅうき)らの文化人が協力したのだそうです。

宗派や出身、母国の違いを超えた文化人たちの協力で建てられた痕跡を伝え、京都が近代都市に生まれ変わる時に置き去りになった遺物を大事に預かっているこのお寺。
すべてがこじんまりとしたこのお寺には、和みの空気が流れています。
どちらかといえば修復の必要があるように見えるひそやかなお寺に、思いがけなく光が当りました。

〔投稿:SI〕