黒の国のエディア ❷

黒と白の色しかない魔法の国「クロ」。

その片隅にあるカサバ村で、無口な10歳の魔女エディア・クロックは姉のシヴィーと共に暮らしていた。

両親を8年前の「第六次魔族大戦」で失い、以来、シヴィーがエディアの母親代わりとなっていた。

シヴィーは17歳で、村の男たちのマドンナと称される存在。

おっとりとした性格で、いつも笑顔を絶やさない。

美しく、心優しい彼女は、村の人々からも愛されている。

ある日、エディアはカサバ村の市場に出かけるシヴィーに付き添っていた。

市場には様々な商品が並んでいるが、そのすべてが黒と白の世界に染まっていた。

エディアは無表情で周囲を見渡しながら、姉の後ろをついていった。

市場の中央にある大きな木の下で、村の老人グレゴールがいつものように座っていた。

彼はエディアを見ると、にこやかに手招きした。

「エディア、こちらにおいで。今日は特別な魔法を教えてあげよう」

エディアは無言でグレゴールの前に座り、その目をじっと見つめた。

グレゴールは優しく笑い、エディアに語りかけた。

「この魔法は、夜明けを迎えるためのものだよ。暗闇の中に光をもたらし、新しい一日を始めることができるんだ。」

エディアは静かに頷き、グレゴールの言葉を心に刻みつけた。

その夜、エディアはベッドで目を閉じながら、グレゴールの教えを反芻していた。

翌朝、エディアは早起きしてカサバ村の広場に向かった。

村はまだ暗闇に包まれていたが、エディアの心は決意に満ちていた。

彼女は両手を広げて魔法の杖を掲げ、呪文を唱え始めた。

「ルクス」

その瞬間、エディアの周りに光の粒が舞い上がり、夜空を照らし始めた。

村の人々は驚き、次々と家から出てきた。光の粒が空高く舞い上がると、やがて黒と白の世界が少しずつ色づき始めた。

グレゴールがエディアの隣に立ち、静かに言った。

「エディア、この魔法は君の心の光を世界に広げる力があるんだ。君の心の中の優しさと愛が、夜明けをもたらすんだよ。」

エディアは無言でグレゴールを見つめ、その言葉の意味を噛み締めた。

光が広がる中、シヴィーも広場に現れ、エディアを見つめて微笑んだ。

「エディア、あなたがこの村に光をもたらしてくれたのね」

エディアは少し微笑み、姉の手を握った。

その瞬間、村全体が暖かい光に包まれ、エディアの心もまた温かくなった。

この夜明けは、エディアとカサバ村にとって新たな始まりを象徴していた。無口なエディアの心の中には、姉や村の人々への深い愛情が溢れており、それが光となって村を照らしたのだ。

エディアとシヴィーはこれからも互いを支え合いながら、村の人々とともに新しい日々を迎えていくだろう。

夜明けの光が、彼らの未来を優しく照らし続けるのだった。